2018.06.27 コラム
1秒の効率化で大きく業務改善!…売れる商品画像講座(2)
「通販通信」読者のみなさん、こんにちは。商品画像作成ツール「ZenFotomatic(ゼンフォトマティック)」を提供するグラムス(株)の三浦です!
商品画像について考える全12回の当コラム。前回は「売れる商品画像」とは?についてお話ししました。
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今回は、「売れる商品画像」を作成する為の効率的な業務フローの重要性について考えてみたいと思います。
その前に・・・
本稿執筆中の2018年6月18日朝、当社のオフィスがある大阪では震度6弱の地震が発生しました。交通機関は麻痺し、多くの被害が出ました。
3.11の時もそうでしたが、今回も各メンバーが直ぐに自宅勤務に切り替えて、受注処理、顧客対応、商品登録、商品画像編集、システム開発など通常業務のほとんどを問題なく行う事ができたのは、まさに普段から業務の効率化・自動化・半自動化に徹底的に取り組んでいるからこそでした。
地震など自然災害の多い日本に住む我々にとって、こうした取り組みは今後ますます重要な事ではないでしょうか?
なぜ商品画像の作成業務から効率化すべきなのか?
・画像編集は時間がかかり手間の嵐!
さて、前回のおさらいとなりますが、「売れる商品画像 = シンプルな白背景画像」という事でした。ただ、そのための商品画像の編集作業は非常に面倒です。時間もかかり、スキルの求められる作業であり、商品登録業務の中において最もコストの発生する作業の一つです。
写真1枚に対して、ざっと並べるだけでも以下のような細かい作業が必要です。
・被写体背景の切り抜き、白抜き
・それぞれのECサイトの規定に合わせた写真のリサイズ
・リサイズされた画像、決まった余白値に合わせ、被写体の大きさや向きを修正
・色彩補正、明暗補正
さらに画像ファイルのリネーム作業や、ショップによってはロゴの貼り付けなどもありますね。文字にしても面倒さが伝わるかと思います。実際に作業すると、それぞれの作業にかなりの時間を要します。
・現場総出で画像編集に数日費やすことも
ブランド商材を中心にファッション・文具・その他小物を販売していた弊社のショップでは、現場は以下のような状態でした。
・昼間:入荷した商品の撮影(大体1日150型、1商品5〜10枚撮影)
・夜間:社員総出で1枚1枚難しい画像編集ソフトと格闘しながら加工作業
・数日後:やっと作業完了。商品登録を行う。
[1]の商品撮影については勿論外注も考えましたが、「前準備や撮影指示などのコミュニケーションにコストがかかる」「商品撮影から商品登録するスピーディーな流れが組めない」「外注で得られる成果物に対しコストが見合わない」といった理由から、自前で業務フローを構築して取り組みました。
特に型番商材やリユース(中古)商材などは完璧な写真よりも商品説明として十分なクオリティーの写真を誰でも素早く撮影できる業務フローが非常に重要となります。(商品撮影についてはは次回以降詳しくお伝えします!)
しかし、最も辛いのはその後です。
・画像編集やめたら売上が42%減に
写真の加工作業は撮影以上に時間がかかります。アルバイトも募集しましたが、画像編集ソフトが使えることが条件になると当然時給は跳ね上がりますし、そういう人材はそもそも何千枚もの商品画像のキリヌキ作業といった単純作業をするために技術を習得した訳ではありませんから、なかなか条件があいません。
結局、経験の無い社員にも作業を教えて文字どおり社員総出で作業し、私は皆が帰った後も深夜に寝落ちするまで残りの作業をするといったことが常態化していました。
(ちなみに、友人のネットショップではこの商品画像加工の作業担当者が続けて2人辞めたそうです。1人目は鬱病になり退職。2人目は3日目からフェードアウトとの事。。。)
私達もこの終わりの見えない地獄の様な日々が商品入荷の度に続き、いい加減に心が折れて遂には画像の加工を止めた時期がありました。
すると、案の定2カ月後には見事に自社サイト、各モール総じてアクセス数が約35%減少、売上が42%減少しました。それだけでは済まず、商品画像の背景色が「RGB255.255.255(いわゆる″ピュアホワイト″)」が規定となっているAmazonでは、規定違反として商品自体が取り下げられ、そもそも販売自体ができなくなってしまいました。
さらにさらに商品の登録後、実際に売れるまでの消化速度が約1.5倍鈍化。在庫がセール期間まで幅を利かせるようになり、どんどん利益率を圧迫していきました。
特に、白背景商品画像が当たり前の海外売上の落ち込みはさらに酷いもので、国内市場がシュリンクし続けるなか、越境ECに活路を見出そうとしていた我々には大ダメージでした。
もうおわかりですよね?ネットショップにとって「画像加工しない」は有り得ないのです。
起死回生の自動化で、全てが変わった
・システムやツールの有効活用でコストを90%削減
自社のツールに関する事例で恐縮ですが、このような負のサイクルを打破するために、当初自社の業務改善ツールとして開発したのが「ZenFotomatic(ゼンフォトマティック)」です。
実際にこれによって商品画像加工業務が自動化され、以下のような効果がすぐに現れました。
・数日かかっていた大量の商品登録が翌日には完了。売上機会損失が軽減された
・実質的な人件費及びその他のコストが90%以上削減された
・高負荷で将来性の無い仕事から社員が解放され、離職率の低下と採用コストが削減された
・非稼働時間(業務終了後や昼食、休憩時間など)に自動処理させる事で、人的リソースはより生産性の高い業務に集中できるようになった
ちなみに、当時の人件費は時給換算で約1000~2000円でした。一時間に加工できるのは平均して一人あたり5~6枚程度。商品画像の編集作業にかかるコストは、人件費だけでも月100万円弱かかっていました。ツールによってこれがほぼ無くなり、その分をマーケティングやさらなる仕入に回し、売上も大きく向上しました。
個人的には、まともな時間に家に帰って子供をお風呂に入れてやれるようになった事が最も大きな成果でした。
・売上695%成長を果たしたファッションECも
他社の事例もご紹介しましょう。
最も効果が大きかったあるファッションECでは商品画像加工作業を自動化する事で以下のような結果となりました。
元々の商品取扱量と売上が大きいのでその分効果も非常に大きいのですが、効果の割合はビジネスのサイズにさほど影響されません。
一見信じ難い効果に思われるかもしれませんが、元々は人力で作業されていたのですから、それが丸っと自動化されれば、こうなりますよね。
注目していただきたいポイントはコスト削減効果だけではありません。
この会社は、作業の自動化によって下がったコストをさらなる仕入れ増加とそのための施策に再投資しました。それによって増えた売上に伴う業務に対し既存の人的リソースを再配置して業務キャパシティーを上げる事で、会社として大きく成長させた点です。
そしてこのようにお手本のような成功を実現させた最も大きな理由2点あります。
1点目は経営者自ら業務改善の優先順位を高く設定し、現状に満足することなく常にPDCAを回していること。
人間の成長を最も鈍化させるポイントの1つが、「慣れ」です。特に業務オペレーションのPDCAを回すという事は、慣れによる思考停止を許さないという大変困難な改革です。だからこそ、トップのリーダーシップが問われるのです。
2点目は、経営者が常に新しい技術の導入に積極的で、情報収集とトライアルを行っている事です。
新しい技術、特に自動処理などと言うと、何もしなくても導入すれば即完全な効果があると勘違いする人もいます。しかし、道具(ツール)はその仕様に基づいて正しく使わないと効果は出ません。
それに、ほとんどの新規技術は世に出た時点ではまだまだ発展途上です。小さなウィークポイントにいちいち目くじらを立てて、自らがそれをどう補うかを考えずに、誰かの努力で改善され、サービスとして一般化するのを待っていてはいけません。先んじてその技術と共に自らのオペレーションを進化させた人に圧倒的に差をつけられ、それはさらに引き離されてしまいます。
さて、それではこうした成功例に対して反対に残念な例をあげてみましょう。
失敗こそ成功への道。重要なのは以下の残念な例を見て、その失敗を自分がしない事、繰り返さない事です。
効率化・自動化に対する残念な思考あるある
・「俺・私がやったほうが速い!」
現場からこうした声があがってくる事は多々あります。ただ、食事もとらずトイレも行かず休憩も睡眠も無く、何があっても休む事無くずっとトップスピードで集中を切らさず何千枚も何万枚も作業はできませんよね。
でも、コンピューターや機械にはそれができるんです。更に、技術の進歩は時に人間の成長速度を凌駕します。
現場目線と経営視点、混同すると残念な結果となります。
・超属人的
「ウチ、○○が上手な子がいるのよ。だからサイトも綺麗でしょう?」
2ヶ月後、そのショップを覗くとクオリティーがガタ落ちしていました。
売上もそれに比例して苦しい状況に。話を聞くと、「○○が上手な」人が不幸にも1ヶ月前に事故に遭われたとの事。
人間には予測できない事が起こりますし、起こしもします。
同様のスキルの人を増やしても、コミュニケーションやマネージメントなど人間特有の問題も発生し得ます。
もし「○○が上手な」人のノウハウの一部分でも、機材やシステムに落とし込む事ができていれば、会社のダメージは軽減できていたかもしれません。。
・自分や社員にやらせるとタダだと思っている
「あ、お金かかるの? ほな自分でやるからえぇわ」
この考え方こそが一番高コストであり、自身の能力が事業の限界値となります。
この思考だとずっと忙しくしている割にどんどん儲からなくなる傾向があります。これを昔から「○○暇なし」と言います。
・サービスのウィークポイントを見つける事に無意味に執念を燃やす
「ここのその部分の中のこれについてのそれがさぁ、少しまだ甘いよね」
その時点ではシステムよりも熟練した人間の作業の方が細部の精度が高いという事は往々にしてあります。それが商品やビジネスの付加価値ならその「こだわり」こそが価値となりますが、実はお客様には無価値だったという場合は、コストでしかありません。
感情的になったり既得権を守りたい気持ちが邪魔をしがちな根の深い問題ですが、この見極めはビジネスの成長や存続の重要なポイントです。
・理解できない、理解しようとしない
「パソコンとか苦手やねん。ようわからんからもうえぇわ」
サービスやツールは、その提供者側が少しでもわかりやすく、使いやすくする努力を怠るべきではありません。
ただそれらもあくまで道具。道具は使いこなさなければその効果も発揮する事ができません。正しく使うために、大なり小なりその道具の使い方を学び、時にその道具の仕様に自らを合わせる事ができて初めて効果が発揮できるのです。
・WEBデザイナーに切り抜き・白抜き作業をさせる
実はEC業界では、商品画像の切り抜きや白抜き作業などの「THE作業」がWEBデザイナーのタスクになっている事が多いのですが、はっきり申し上げます。
今すぐ、そのWEBデザイナーさんを作業から解放してあげましょう。
クリエーターは時にその閃きで、ひたむきな作業の繰り返しだけでは到底得られる事の無いレベルの成果を上げる事ができるのです。
世界の流れと逆行し、日本ではクリエーターの地位が低いままですが、彼らとどう向き合い、その価値を最大化させるかは、これからのビジネスの鍵になるでしょう。
効率化・自動化と切り離せない、技術とどう付き合っていくか
何も、効率化のためには絶対に最新技術を導入しなければいけない訳ではありません。
いつも使う物や机の配置を作業に最適化させるだけでも長いスパンで見れば効果がありますので、すぐにやってみましょう。
例えば、5分かかる作業が4分59秒に短縮されたとしましょう。そうです。たった1秒です。
時給¥1,000、1日8時間×月20日出勤とすれば年間で1人あたり¥6,400の削減となります。
100人分だったら?、1分の削減だったら?
歩いて何かを取りに行く作業から数歩分物を近づけるだけでお金が儲かるんです。常にこうした意識を持って業務を俯瞰視する事、現状を疑う事はとても重要です。
ただ、コスト面で考えると、やはり最も効率化の影響が大きいのは、それまでの属人的作業を機械化、システム化して人件費を削減する事です。
昨今「AI、人工知能に仕事が奪われる」といったフレーズを良く耳にするようになりましたね。コンピューターにできる事を人がやり続けると当然そうなります。
ではコンピューターにできない事は何でしょうか。
その一つがクリエイティビティーを伴う創造です。
そしてそれはクリエーターだけでなく全ての人間が持ち得るものです。「事業は人なり」と言いますよね。
近い将来コンピューターにもできる作業を、いつまでも人間にさせていて良いのでしょうか?
AIやIoTなどは、それを語る人の立場によって意見に違いはありますが、我々EC事業者の実務目線で言えば、その”殆ど”がまだまだ成長段階です。(その成長速度は人間と比較にならないくらい高速ですが。。)
ただ新技術が他の誰かによって成熟されるのを待っていては、それを使うどころか使われる側になってしまいます。
だからこそ今、まだまだ未熟な技術を未熟である事を前提にして逸早く取り入れ、使用者としての我々のリテラシーと経験を養い、同時に少しずつ効率化されてできた時間を、人々のクリエイティビティーを養う時間に当ててはいかがでしょうか?
次回は・・・
さて、ここまで「売れる商品画像」とは?に続きそれを効率的業務に落とし込む上での考え方についておはなししてきました。
次回からはいよいよ実践編です。
効率的な商品撮影業務フローや、それを実現する環境設定、ツールの選び方まで、実際にEC業界で商品撮影を行ってきたカメラマンにバトンタッチしてそのノウハウを伝授します。
ご期待ください!
著者:三浦 大助 | グラムス株式会社 代表取締役 CEO
アパレル商社で社内システム開発・保守に従事し同社でEC事業を立上げ。2010年グラムス(株)を設立しネットショップ9店舗を立ち上げ運営。各種業務システムを自社開発した中から画像処理機能をZenFotomatic(ゼンフォトマティック)としてローンチ、世界100カ国以上のネットショップに提供中。他、EC系イベントで業務フローやシステム化などのセミナー登壇、講師活動を行う。
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