「化粧品から解放してあげたい」という想いのもと、化粧品を使わなくても良いナチュラルな素肌づくりをサポートしている化粧品メーカーがある。植物の自然な力を活かした化粧品ブランドを展開する(株)鈴木ハーブ研究所だ。化粧品はリピート商材であり、化粧品メーカーは、いかにして自社製品を長く使ってもらうかを考えるのが通常で、「化粧品を使用しなくてもいい健康な肌を目指す」というコンセプトは、業界でも異例。なぜこのような化粧品が売れていて、会社は成長を続けているのか、同社と商品開発をサポートした(株)サティス製薬を取材し、同社の取り組みや開発の経緯に迫った。
化粧品に頼らないスキンケアを提唱
同社は『パイナップル豆乳ローション』などのムダ毛ケアシリーズで有名だが、社名には「研究所」という名が付いているように、実は肌質を科学的に分析している会社で、ハーブの力と科学の力を掛け合わせ、化粧品メーカーでありながら、スキンケアにたよらない人が本来持っている肌の力を呼び覚ますスキンケアを提唱している。
同社の鈴木さちよ社長は、「私たちは、お客様をきれいにしたい、という想いと同じくらいに、悩みから解放させてあげたい、という想いを持っています。肌の悩みは、素肌の自活力があれば、回復できるものが多いです。化粧品に頼らずに、化粧品から解放される肌になれば、自然に肌もきれいになります」と、同社のスキンケアに対する考え方を語った。
皮脂の量がハリやうるおいに影響
同社の理論では、クリームなどを塗った肌は、潤いの膜で覆われた状態になり、この状態だと肌が「潤っている」と錯覚して、皮脂を出さなくなるという。皮脂には紫外線や乾燥から肌を守る役割があり、化粧品を使い過ぎて肌が皮脂を出せなくなると、肌の新陳代謝も遅くなり、肌の老化につながってしまう。
皮脂が適度に保たれている肌は、皮脂による天然のバリア機能が維持され、紫外線のダメージなどから肌を守るだけでなく、肌の新陳代謝を促し、肌にハリやうるおいを与える。こうした理論は研究結果でも裏付けられている。同社は皮脂量と肌のハリとの関係に関する研究成果を論文まとめ、第42回日本香粧品学会(2017年7月)で発表している。
こうした独自の理論に行き着いたのは、会社設立のきっかけとなる1本の化粧品が始まりだった。
娘のために作った1本の化粧水が創業のきっかけに
鈴木社長は「15年前、次女が生後5カ月でアトピーを発症してしまいました。アトピーがなかなか改善せず、試行錯誤で肌にいいものを取り入れているうちに、地元の納豆の成分が保湿にいいことがわかり、実際にその成分を肌に使ってみると、娘の肌がきれいになっていきました。このことから、この成分を使った化粧水を作ることを決意し、会社を設立しました」と、創業のいきさつを話した。製造するのは自分の子どもが使う化粧水であるため、効果がないと意味がなく、トライアンドエラーを繰り返し、効果にこだわった化粧品を世に出した。
会社設立のきっかけとなった初代の化粧水は、肌がきれいになった次女の評判から、近所の人たちから「譲ってほしい」と声をかけられ、自然とクチコミが広がっていったという。商品化した後は、ユーザーと直接コンタクトでき、スキンケアのアドバイスなどができることから、最初からネット通販で展開。現在も販売チャネルの9割が通販となっている。
商品の使用感ではなく、効果を重視
一般的に、化粧品の利用者は、使用感を大事にしている人多いが、同社では使用感の優先順位は低く、重視するのは効果が第一。この姿勢は創業以来変わっていない。同社は化粧品の品質に独自基準を設けており、厳しい社内モニターでこの基準を満たさないと、商品を発売することはないという。
同社は現在、エイジングケア、保湿ケア、毛穴・うぶ毛用スキンケア、敏感肌ケアなど、肌タイプや使用目的に合わせたブランドがあり、それぞれのブランドごとにメイク落とし、洗顔、スキンケアなどの商品をラインナップしている。こうした同社のスキンケアブランドのなかでも、会社の理念を具現化した化粧品ブランドが、2015年10月に誕生した高機能美容ライン『undecor(アンデコール)』だ。
サティス製薬との出会いで『アンデコール』誕生
『アンデコール』の商品開発には、同社の転機となる(株)サティス製薬との出会いがあった。同社はスキンケアラインナップに、新たにエイジングケアの化粧品を加えることになり、14年4月から商品開発を開始した。事前のリサーチで、市場に出ている年齢肌をケアする化粧品は、いくつかのアイテムを重ねて使用する商品が多かった。「アイテム数を増やした場合、素肌の力が逆に弱まってしまう可能性がある。弱ってしまった年齢肌を元気にすれば、アイテム数を減らせる」という考え方のもと、使用感でごまかすのではなく、肌の力を助け、肌本来の力を目覚めさせる化粧品を目指した。
新商品の開発にあたり、6社の化粧品受託製造会社にサンプルの製造を依頼した。このうち、唯一納得できるサンプルを製造したのが、サティス製薬だった。そこから同社とサティス製薬で、二人三脚の開発が始まった。
同社では、新商品を開発する際、社員が自らモニターとなり、効果やつけ心地などを厳しくチェックするのだが、試作品の製造を繰り返し、「ほぼ100%の社員が『これなら自信を持って売り出せる』という商品に仕上がりました」(鈴木社長)と言う。商品に対していつも厳しいことしか言わない開発担当者が「発売はいつになるのですか?」と催促してくるほどだった。
受託製造を超えたパートナー関係に
サティス製薬で同社を担当するテクニカルマネージャーの国分由梨氏は「鈴木ハーブ研究所様が理想とされている肌は、化粧品を使わなくてもいいという肌。『1人でも多くの人を綺麗にしたい』という弊社の想いともマッチしていましたし、難しいテーマでしたが、ぜひ一緒に仕事をしたいと思いました」と語った。ナチュラルかつ高機能な化粧品づくりに定評があるサティス製薬でも、同社との商品開発は、刺激的な仕事だったようだ。
商品開発では、サティス製薬のノウハウに助けられることも多かったという。鈴木社長は「サティス製薬さんは、ものをつくるだけでなく、どういうコンセプトで会社が成り立っているのかを聞いた上で、商品を提案してくれます。同時にマーケティングのフォローまでしていただける。独自の化粧品原料開発の実績もあることから、さまざまなデータを持っているので、信頼度も違います。多くの受託OEM会社は、『こういう商品を作りたい』と言うと、要望に近い商品を作ってくれますが、作りっぱなし。サティス製薬さんの場合は、マーケティングを含めた売り方も提案してくれて、お客様にそのまま説明できる段階まで商品を引き上げてくれます」と話した。
サティス製薬の協力で、約300人の肌状態の調査を実施。その結果は、昨年7月に開催された第42回日本香粧品学会で、皮脂量と肌のハリとの関係に関する論文として発表された。同社とサティス製薬は現在、モニター試験や学術面のフォロー、薬務チェックを含めたマーケティングのアドバイスなどを含め、受託製造を超えた信頼関係を構築している。
コンセプトを具現化した『ハーブ園』も
同社のコンセプトを具現化したのが、本社の敷地内にある循環型のハーブ園。ここでは家の台所などから流れた水が、園内を流れ、植物に水を届けながら池に貯まり、蒸散されて循環している。園には乾燥したハーブ、湿ったハーブなど約500種類の植物があり、このハーブ園を管理することが、鈴木社長のライフワークにもなっている。ハーブ園は、イベントなどで不定期に一般開放され、地元の憩いの場となっている。
新たな取り組みとして、同社では「HAPPY美肌プロジェクト」を開始。肌に悩みを持つモニターに対し、肌診断の結果をもとにカウンセリングを行い、1年間かけてマンツーマンで細かなケアをしている。
クールジャパン商品に認定、海外展開も視野に
また、国内だけでなく、海外への展開も見据えている。『アンデコール』は18年3月に、地方のクールジャパン商品を海外に紹介する関東経済産業局の海外出品プロジェクトの対象商品に選定された。
現在、パリの常設展示スペースに『アンデコール』が出品されており、フランスでもユーザーから好評を得ているという。
化粧品に対する想いを共有する同社とサティス製薬が組むことで、既存の化粧品とはまったく異なるアプローチの化粧品が誕生した。予算をかけて実施したプロモーションで新規ユーザーを獲得しても、そのユーザーはやがて自社商品を使用しなくなる。ストック型であるリピート通販のメリットを放棄した、無謀とも言えるビジネスモデルだが、『アンデコール』を使用したユーザーは、たとえ自分が利用しなくなっても、友人や子どもに紹介するなど、商品はクチコミで循環しているという。同社のハーブ園のように。これまでのスキンケア方法に一石を投じた同社。自然な肌の力を体感した『アンデコール』ユーザーのクチコミは、徐々に広がりを見せている。
(山本 剛資)
■(株)鈴木ハーブ研究所
■高機能美容ライン『アンデコール』
■(株)サティス製薬
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