楽天市場の商品画像登録ガイドライン問題を解決!
当コラムでは、これまで「売れる商品画像」とその作成業務における効率化の重要性についてお話してまいりました。
▽連載一覧
第一回:「売れる商品画像」は思い込み?
第二回:1秒の効率化で大きく業務改善!
第三回:ECが構築すべき商品撮影環境とは?
第四回:超効率的な画像処理を実現するには?
第五回:商品撮影はスマホでOK!?その理由とは…
第六回:一眼レフは難しくない!業務改善も実現!?
第七回:1クリックで済む効率的な加工写真の作り方
第八回:ネットショップ店長がシステム屋になったワケ
第九回:ECに最適化された商品画像管理とは?
第十回:写真にこだわるECに潜む事業リスクとは?
第十一回:商品の色が写真と違う!を防ぐには?
第十二回:ついに最終回!世界で通用する商品画像とは?
今回は、実際に「売れる商品画像」を作成するために、必要な環境設定について、紹介していきたいと思います。
各モールで商品画像のガイドラインの順守が厳格に
私は現在、ZenFotomaticサポートとして日々さまざまなジャンルのネットショップさんの商品画像と接し、ツールの使い方や導入支援、お役立ち情報のコラム執筆、商品撮影や画像加工方法のご相談をお受けしています。前職では自身がネットショップの商品撮影・画像加工チームの責任者としてクオリティーと業務効率の向上に努めてきました。支援者側の目線と業務担当者の両視点から、実際の業務に活きる情報をお伝えしたいと思います!
その前に、本記事を執筆中に重要なニュースが飛び込んで参りました。楽天市場がこれまで「推奨」とされていた商品画像の規定を「減点対象」、つまり必須要件とする事を発表しましたね。
【2018年7月】楽天市場が商品画像登録ガイドライン遵守を義務化。出店者はどうなる?
上記の記事は正にこの問題を早期解決に導く内容になっていますので、是非参考にしてみてください!また、なぜ「白背景のシンプルな画像」が推奨されるのかについては、第一回:「売れる商品画像」は思い込み?で詳しく解説しています。こちらも合わせて確認下さい!
ノウハウは人に貯めない
過去二回の当コラムでも話してきましたが、大切な事ですので再度確認しておきましょう。
私はプライベートでは人物の撮影やアート作品の創作も行っているので、PhotoshopやLightroomなどのクリエーター向けツールを使いこなす自信があります。実際に作業にあたっていた時はそのノウハウを駆使し、素早く画像の加工を行う事ができていました。
しかし、日々の長時間作業で腱鞘炎になったり、集中力が持続せず生産性が落ちる事も多々ありました。加えて、数年かけて教育したメンバーが休んだり、退職したりして、生産性やクオリティーが大きく落ち、それを取り戻すのにまた一から教育が必要という問題もありました。
これらの課題を解消するためには、とにかく「仕組化」することと、その仕組みに必要な正しい機材やツールを最初から揃えることが必須です。業務が計算できる状態を作ることで、人員の増減にかかわらず一定のクオリティーと生産性を伴った業務フローに落とし込むことができるのです。
まず、揃えるべき機材
まずは商品撮影において最初から備えておくべき機材を紹介します!
カメラ
ネットショップの商品撮影においては、目的(少品種や撮影頻度、環境など)に沿って最適なもの(必要な機能があり無駄のないもの)を選択する事が重要です。
・一眼レフ
・ミラーレス一眼
・コンパクトデジタルカメラ
・スマートフォン・タブレット
下図はそれぞれのおおまかな特徴となります。
では、それぞれのカメラは実際にはどんな商品やシチュエーションの場合に適しているのでしょうか?カメラの種類ごとに見ていきましょう。
一眼レフ・ミラーレス一眼
・日々多数の撮影がある場合
・高級商材など写真のクオリティーが必要な場合
・衣料の生地感やジュエリーの質感の表現が必要な場合
・パソコンと接続して使用する場合(テザー撮影)
・ストロボライトを使用する場合
画質を最重視する場合は一眼レフ・ミラーレス一眼が最適です。
「扱い辛そう」と思いがちですが、最初にしっかり設定しておけば、撮影の都度で設定変更する必要もほとんどなく、様々な環境に順応させる事が利点です。
機種は有名メーカーであればエントリーモデルで十分です。1600~2400万画素くらいの機種が丁度良いでしょう。ボディーかレンズに手振れ補正機能を有しているものを選びましょう。
レンズはキットレンズの標準ズームで十分です。ジュエリーや腕時計の場合はマクロレンズも必要になります。
コンパクトデジカメ
・撮影頻度が毎日ではない場合
・写真のクオリティーもそこそこ、効率の方がより重要な場合
・標準域も接写も発生する場合
「そこそこの画質」「レンズ交換不要でサクサク撮影できる」「コンパクトで重量負担が少ない」など効率を重視する場合に向いています。一方で、耐久性や環境への最適化、画質は一眼レフ・ミラーレス一眼に劣ります。
選び方としては、マクロ撮影機能を有しており、最短撮影距離が短い物、ズーム倍率が小さい機種を選びましょう。マクロモードへの切り替え設定が容易かどうか(ボタン一つで切り替え、又は自動切り替えなど)も重要です。1万円代の安価なモデルは画質的にお勧めしません。
スマートフォン・タブレット
・撮影頻度が多くない場合
・クオリティーよりも、とにかく簡単さと効率が重要な場合
・接写・マクロ撮影をしない場合
昨今スマートフォンのカメラ機能の精度は飛躍的に向上しています。とはいえ、細かな模様や形状、ジュエリー・腕時計などではモアレや湾曲、色収差などの問題が発生する事も多いです。商品のディティール表現が重要な場合は不向きです。また耐久性やバッテリーの保ちの点で、大量の商品撮影にも不向きと言えます。
一方、シンプルな商品の場合ライティングなど撮影環境をしっかりと整備して撮影すれば、スマホでもある程度クオリティーの高い写真の撮影は可能です。
ネットショップの商品撮影用に最適なカメラについては、コチラでもっと詳しく取り上げていますのでぜひご覧ください。
カメラの次はライトです!
ライトと背景
カメラよりも重要なのがライト(=照明)と背景といった撮影環境となります。プロレベルの物を揃える必要はありませんが、ライトはある程度投資が必要な物だと認識してください。撮影用ではない、卓上ライトや光量の弱い蛍光灯などではほとんど効果がありません。
背景の環境
商品画像を作成する際によく用いるのは白背景紙です。「撮影 背景紙 白」などで検索してみてください。多くがロール紙になっているので、それを吊るす専用スタンドも存在します。ですが、実は物干し竿と床から天井までの突っ張り棒の組み合わせでも十分機能するのでお勧めです。
最もお勧めの写真背景は、乳白色のアクリル板を用いて背景からもライトを照射する方法です。被写体の輪郭がはっきりして影も殆ど発生しないので、誰でも立体感のある綺麗な写真を簡単に撮影できます。
ホームセンターで販売されている乳白色のアクリル板は、殆どがツヤ・光沢感のある素材です。ツヤのある物は光の写り込みなど問題が発生するので、必ずツヤ消し・マットな質感のものを選びましょう。
商品が比較的小さな物であれば、撮影台として1万円を切る物(下図参考)もネットで販売されています。そちらの購入をお勧めします。
▽参考動画
洋服などはマネキン・トルソーに着せたりハンガー撮影がメインとなるかと思います。その際、弊社では下図のようにアクリル板のサイズに合わせて汎用品のパイプを組み上げ、背面からLEDライトを照らし、光が前面に行き渡るよう設置して撮影しています。
商品は半透明の釣り糸にハンガーを引っ掛けています。マネキンやモデル撮影の場合もこれを背に撮影すれば、簡単にクオリティーの高い写真を撮影できます。平置きの場合はこの台を横にするだけです。
このように、背景から照射する撮影方法を「透過光撮影」などと言います。スピード・効率・クオリティー・属人性軽減のバランスこそが最も重要なEC商品撮影においては、まさに最適な撮影環境です。画像加工にも相性が良いので、高いクオリティーと効率を担保できます。
一方、絶対にお勧めしないのは「色付きの背景紙を使う」ことです。たとえば「白い商品はコントラストをつけるために黒い背景にしよう」「腕時計は高級感が出るので濃いグラデーションの背景にしよう」というのはは、プロカメラマンによるイメージカットの撮影なら有り得ますが、我々ネットショップの商品撮影ではやめましょう。ショップ全体の統一感を崩す事はCVR(コンバージョンレート・転換率)低下の原因となり得ます。ましてや、切り抜きの為のグリーンバックなど以ての外です。高度なライティング技術が無いと商品に色移りが発生し返品クレームの元となりますので今すぐやめましょう。
綺麗な白背景にするコツはコチラでも紹介していますので、合わせて参考にしてみてください。
前面ライト
商品の背面から照射する透過光撮影をお勧めしましたが、これだけでは逆光状態となり被写体が暗くなりますので、前面からの照射も必要です。
ライティングの基本は、撮影環境の光の種類を統一することです。天井の蛍光灯の色が劣化などによりバラバラだったり、日光が入る環境だと、実物と写真で色が大きく異なってくる場合があります。天井の蛍光灯は消すか出来るだけ色を統一し、撮影場所が窓付近の場合は遮光カーテンで太陽光を防ぎましょう。
ライトは理想を言えばストロボがベストですが、扱いが難しいので、プロではないネットショップ事業者が撮影する事を考えると、定常光ライトがお勧めです。
具体的には、出来るだけ光量のあるLEDライトを2灯用いて左右から照射します。ライトにはそれぞれ色温度というものがありますので、この色温度を背景・前面共に合わせましょう。
前面からのライトが強すぎると透過光撮影の意味が無くなります。撮影時点では「少し被写体が暗いかな?」くらいでも後工程で背景を切り抜くと丁度良かったりしますので、ここでも全行程の効率を考えて撮影環境を構築することが重要です。
それでは、まとめです!
まとめ
・透過光撮影が最もおすすめ
・出来るだけ大光量のLEDライトを2灯用いて左右から照射
・出来るだけ背景用のライトと同様の色温度のライトを選ぶ
・太陽光は避ける
・前面からのライトは強すぎてもダメ
次回は…
今回は「売れる商品画像」の作成を効率的な業務フローに落とし込む上で、まず手をつけるべき撮影環境の構築についてご紹介しました。
属人化しない為に、先ず必要な機材・ツールを導入し作業を定常化する事。
カメラは用途に応じて必要なものを選ぶ事。どれが良い悪いはない。
最も重要なのは撮影環境の構築。特にライトへは十分な投資を。
正しい撮影環境が構築できたら、次は画像加工です。
商品撮影と画像加工は常に一つのセットとして考えると効率が上がります。だからこそ、今回ご紹介した撮影の環境設定が前行程としてとても重要になるのです。
次回は、商品画像加工の効率的業務フローの構築について、実例も交えてご紹介します。
キーポイントは「ながら作業」。これが大きな大きな効率化をもたらします。是非、お楽しみに!
筆者:藤井 杏樹 | グラムス株式会社 ZenFotomaticサポート、フォトグラファー
シューズメーカーや高級ブランド品を販売する企業で商品撮影・画像加工・商品登録業務に従事し、2017年グラムスに参画。カスタマーサポートを中心にオンラインで商品撮影コンサルティングやコンテンツライティングを担当。フォトグラファーとしてポートレートを中心に活躍中。
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第一回:「売れる商品画像」は思い込み?
第二回:1秒の効率化で大きく業務改善!
第三回:ECが構築すべき商品撮影環境とは?
第四回:超効率的な画像処理を実現するには?
第五回:商品撮影はスマホでOK!?その理由とは…
第六回:一眼レフは難しくない!業務改善も実現!?
第七回:1クリックで済む効率的な加工写真の作り方
第八回:ネットショップ店長がシステム屋になったワケ
第九回:ECに最適化された商品画像管理とは?
第十回:写真にこだわるECに潜む事業リスクとは?
第十一回:商品の色が写真と違う!を防ぐには?
第十二回:ついに最終回!世界で通用する商品画像とは?