消費者庁は22日、男性向けの着圧衣類を販売するEC事業者9社に対し、景品表示法に基づく措置命令を出した。各社は「24時間着るだけで加圧トレーニング 最短・最速で肉体改造」などと着用するだけで「痩身」「筋肉増強」を得られるかのように表示していたが、根拠はなかった。景品表示法で「著しい筋肉増強効果」をうたう表示についての措置命令は、今回が初となる。
消費者庁が用意した資料(机の上に並べられているのは各社の違反表示内容)
9社が自社ECや楽天での表示に違反認定
今回、措置命令の対象となったのは下記9社が販売するTシャツ、スパッツ、腹巻、レギンスの計15商品。
・(株)イッティ
・加藤貿易(株)
・(株)GLANd(グラン)
・(株)ココカラケア
・(株)SEEC
・(株)スリーピース
・(株)トリプルエス
・(株)BeANCA(ビアンカ)
・VIDAN(株)
各社は、ポリウレタン繊維を使用した伸縮性が高い衣類について「加圧によって痩身効果・筋肉増強効果」が得られるかのように表示していた。それぞれ個別の商品の販売価格は2980円~3980円程度。
違反認定を受けた9社は,16年11月から18年12月までの期間内に自社ECサイトや楽天市場における広告表示で着圧衣類を装着するだけで、短期間で容易に「痩身効果」「筋肉増強効果」が得られるかのように表示していた。消費者庁は表示会社に、不実証広告規制に基づき表示の根拠を占める資料の提出を求めたところ、「9社中7社からは資料が出されたが表示の根拠を裏付けるものとは認められなかった」(表示対策課 岡田博己 上席景品・表示調査官)と言う。関係者筋によると、9社合計の販売枚数は70万枚以上。一番売れていた会社で60万枚ほど販売しており、20億円以上の売り上げがあった事業者もいた模様。
会見で説明する岡田調査官
イッティは自社ECサイト上で自主返金の取り組みを実施しているが「あくまで自主返金」(岡田調査官)だとし、「現時点では課徴金額の減額措置の適用を受けられる、消費者庁の認定による返金計画ではない」(同)そうだ。
Amazonなどでも販売、消費者庁「OK表示だったというわけではない」
違反認定された表示媒体は自社ECサイトと楽天市場のショップのみだが、「表示会社の中には、AmazonやYahoo!ショッピングに出店している会社もあった。今回は、楽天以外のモールでの表示は違反認定に至っていないが、AmazonやYahoo!ショッピングでなされていた表示が必ずしも問題なかったということではない。自社ECサイトと楽天市場での表示が特に過激な表現が用いられていた」(岡田調査官)としている。
一斉措置命令になった経緯については、痩身や筋肉増強効果を標榜する着圧衣類は16年ごろから販売者が増え、17年ごろから過激な表示をする会社が目立ってきたため」(岡田調査官)と話しており、行き過ぎた表示をけん制する狙いがあったようだ。ちなみに「商品供給元のメーカーが同一であるということではない」(同)としている。
なお、消費者庁では着圧依頼による健康被害については「国民生活センターによせられた相談などを参照しているが、現時点では把握していない」(岡田調査官)とした。同種の着圧衣類についての、全国の消費生活センターによせられた相談は十数件にとどまり、その内容は「痩せなかった」「効果がなかった」といったものがほとんどだったという。
措置命令権限を持つ都道府県の執行が目立つようになっている中、「筋肉増強効果」で初めて執行例が出た。新たな「前例」が出来たことにより、都道府県の執行運用の仕方にも影響を与える可能性があると言えるかもしれない。
(古川寛之)
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