(株)ディノス・セシールがダイバーシティ(=多様化)推進に注力し、徐々に成果を出しつつある。2013年のディノスとセシールの合併以降、いわゆる「働き方改革」の取り組みを推進し始め、18年7月に「ダイバーシティ推進室」を設立。厚生労働省の「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の優秀賞を受賞したほか、東京都の「家庭と仕事の両立支援推進企業」の認定を受けた。
人事・総務本部ダイバーシティ推進室の佐藤亜紀室長と今野牧子エキスパート
改革のきっかけは”ディノスとセシールの合併”
同社が「働き方改革」の取り組みに大きく舵をきった大きなきっかけは、13年にディノスとセシールが合併したことにある。「企業風土や文化が全く違う2社が1つになる、働き方や意識の違いを擦り合わせていく必要があった」(人事・総務本部ダイバーシティ推進室、今野牧子エキスパート)と当時を振り返る。15年には2社の人事制度を統合。タイミングを同じくして、ディノス出身者とセシール出身者の人材交流や若手研修を行うなど相互理解を深めていった。
15年以降、働き方改革を推進する制度をいくつも制定していった。ただ、改革だけに特化して取り組む部門があったわけではなく、人事部門の1つの取り組みと言う位置付けだった。そのため「社員にとって目に見えてわかりやすい形はなく、浸透のスピードにも課題があった」と言う。
また同社では今後、介護しながら働く社員や育児などによる制約がある社員がかなりの割合になる可能性があり、60歳以上の社員が増大することを考えると、「ダイバーシティ・ワークライフマネジメントの文化と土壌づくり」が急務となっていた。
さらに社会環境が目まぐるしいスピードで変化する中、「お客様がワクワクするような新しい価値を提供するためには、会社として『多様な価値観』を力にすることが必要」との認識もあった。
そこで、同社は18年7月に人事・総務本部内に「ダイバーシティ推進室」を創設。「『働く』を『HAPPY』に!」というテーマを掲げ、ダイバーシティ宣言の元で、働き方改革を推し進めている。
ダイバーシティ推進室では、制度の整備はもちろん、社内向けのパンフレット配布・メルマガ配信を通じた社内広報にも注力している。社内でも新設部門であり少数のメンバー構成であるが「部署立ち上げにより、以前より機動力が高まり、スピードがかなり早まった」(佐藤亜紀室長)と立ち上げ1年の経過を振り返る。
テレワーク・時差勤務推奨も
具体的なダイバーシティ推進の施策は、下記の通り。
・フレックス/裁量労働制/テレワーク/時差勤務による柔軟な働き方整備
勤務形態の柔軟化にも取り組んでおり、フレックス・裁量労働制の導入やテレワーク(在宅勤務)、時差勤務の推奨を行っている。テレワークは今年の4月から制度化し、現在約10%の社員が利用中だ。また、東京都では、2020年の東京オリンピック開催期間中の交通混雑緩和に向け、交通需要マネジメント、テレワーク、時差ビズなどの取組を「スムーズビズ」と総称しており、ディノス・セシールでもこの理念に共鳴している。
・残業抑制のため22時完全消灯を実施
21時半に退勤を促すための合図として音楽を流し、22時に社屋内は完全消灯する。深夜帯に及ぶ勤務を抑制している。
・ライン管理職全員の「イクボス宣言」
NPO法人ファザーリング・ジャパンが運営する「イクボス企業同盟」に加入しており、管理職全員のイクボス研修・イクボス宣言を行っている。上司の意識改革とコミュニケーション活性化により、育児や介護などが発生しても活躍できる、チーム力の高い職場づくりに取り組んでいる。
■NPO法人ファザーリング・ジャパン「イクボス企業同盟」
・働き方の取り組みを表彰
社内各部署が業務にまつわるムダの削減や働き方の見直し等の様々な取り組みを提案。社内表彰も組み合わせることにより、全社的な「働き方」の意識を高めている。
・働き方に関するセミナー・eラーニングを実施
女性の活躍や、健康経営、LGBT理解など様々なテーマについてのセミナーやeラーニング(ウェブ上での学習方法のこと)を用意している。
・障がい者雇用
約25人の身体・知的・精神・発達といった障がいを持った社員・スタッフが、適性に応じて、MD・管理・ロジスティクスといった各部門で活躍している。18年度には初めて「障がい者アスリート」の採用を行い、パラバドミントン競技の選手も入社した。
・社員の家族をオフィスに招待する「ファミリーデー」の開催
社員の子どもたちなど家族をオフィスに招き、オフィス内を見学できるほか、お父さん・お母さんが働いている姿も間近で見ることができるイベントを開催。19年の「ファミリーデー」では約90人の家族が参加した。
19年8月に開催されたファミリーデーの様子
所定外労働時間を平均5時間削減など成果も
さまざまな施策はすでに成果を生んでいる。
ディノス・セシールの月間の所定外労働時間の平均値は、2年で5時間削減され、18年度では14時間57分になった(ディノス・セシールの所定労働時間は7時間)。有給休暇の平均取得日数は12.6日、障がい者雇用率は2.7%を達成、女性の育休取得率・復職率は共に100%を実現。外部機関による従業員満足度調査では75.3%というハイスコアになった。厚労省の「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の優秀賞を受賞。都の「家庭と仕事の両立支援推進企業」の認定も受けた。
厚生労働省の表彰式の様子
前列左から2人目がディノス・セシール人事担当役員の吉田美佐雄取締役
次のチャレンジは”テレワーク拡大”や”女性役員・管理職比率の改善”
ダイバーシティ推進室では今後の課題についても真摯に取り組んでいる。
例えばその1つには「テレワークの拡大」があるという。同社の中でテレワークを当たり前の働き方にしていくための取り組みを加速している。厚生労働省「テレワーク宣言応援事業」の2019年度テレワーク宣言企業の7社にも選出された。
■厚生労働省委託事業 テレワーク宣言企業
また、今後は人事評価制度の見直しやキャリア意識の醸成にも力を入れていきたいと考えているようだ。特にシニア社員のその先のキャリアを見据えた意識改革のため、キャリアデザイン研修も実施予定だ。
そして、長期的に取り組む大きなテーマとして女性役員・管理職の比率の改善も挙げている。「当社の女性社員比率は42%と比較的高い方だが、役員や管理職でいくと割合はまだまだ少ない」と佐藤室長。「女性がより活躍する職場にするべく仕掛けをしていく」(同)と先を見据えている。
これまでの取り組みやこれからの方針からも、ディノス・セシールがいかに働く社員に対し、誠実かつ真摯に向き合っているかが見て取れる。同社のダイバーシティ推進が今後どんな展開を見せ、成果を出していくか、注目したい。
(了)
(古川 寛之)
■ディノス・セシール
■ディノス・セシール採用ページ
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