ヤフー(株)と(株)ZOZOの資本業務提携に関する会見が12日に行われ、ZOZOの社長を退任した創業者の前澤友作氏は、退任の理由として、会社の経営体制の抜本的改革が必用だったことや、月への渡航など自身の夢に向かって新たなスタートを切るためだと語った。
左からヤフー(株) 川邊健太郎代表取締役社長、(株)ZOZOの澤田宏太郎代表取締役社長、
(株)ZOZO ファウンダー前澤友作
ZOZOの新社長には、取締役で「ZOZOTOWN」の事業責任者だった澤田宏太郎氏が就任した。
前澤氏「新しい人生を過ごしたい」
前澤氏は「(自身の経営は)会社のチーム力や総合力を生かし切れていなかった。ワンマン経営で、現場の権限や裁量を与えられていなかったかもしれない。経営体制として抜本的な改革が必要な時期だった」と話しつつ、個人的な話として「2023年に月に渡航することになっているが、それより前に宇宙に行く予定がある。語学の勉強やトレーニングなど、準備が必用」と話し、月への渡航が退任の大きな理由になっているとした。また、「どこかの時点でまたゼロから事業を作って成長させたい」と語り、新たな事業についても意欲を示した。
日ごろから「社員は家族」と公言していた前澤氏は、社員に向けて語る際には涙ぐむ場面もあった。
また、会見にはソフトバンクグループの孫正義会長も登場。孫会長は前澤氏から「月に行きたい。ZOZOを引退し、新しい人生を過ごしたい」と相談を受け、ヤフーの川邊社長を紹介したという今回の資本業務提携の秘話を明かした。
前澤氏「ヤフーとの提携でZOZOの未来は大きく開かれる」
前澤氏はこれまでのZOZOの成長を振り返り「21年間、好きな仕事をひたむきにやって、突っ走ってきた。社会に出て就職をした経験もない、社長になったこともない、M&Aの勉強をしたわけでもない。好きなことを突き詰めてやっていたら、気づいたら社長となり、気づいたら上場していた。この21年間、いろいろあったが、本当に夢のような時間を過ごさせてもらった。ここへきて、ZOZOにも課題があった。これから成長していく上で、ファッション好きな皆さまだけでなく、あらゆる皆さまに届けるサービスにしていかなくてはならない局面に来た。ヤフーとの提携によって、ZOZOの未来は大きく開かれる」と語った。
澤田新社長は「信条としてはリアリスト、ニュートラル、安定感をモットーにしている。前澤とは真逆じゃないかと言われると、真逆。前澤は既成概念をぶっこわすカリスマ経営者で、前澤のおかげでZOZOがある。これはまぎれもない事実だが、会社は大きくなり、これから先は安定的な成長が求められ、ヤフーさんとの提携が必用だと判断した。ZOZOがつまらない会社になると思う人もいるかもしれないが、心配はない。つまらない大人にはならない。やんちゃな大人であり続ける。突拍子もないアイディアを持ち、挑戦することにうずうずしている社員もいる。果敢に事業を推進したい」と話し、安定だけではなく、新たなことに挑戦する前澤イズムを継承していくことを明言した。
ZOZOが「改革から安定のステージへ」
前澤氏は「ZOZOTOWN」を急成長させるとともに、これまでになかったサービスを次々と打ち出してきた。宅配クライシスが社会問題となった際、「送料自由化」を掲げ、購入者が0円から3000円までの送料を自分で選べる取り組みを実施し、送料を「一律200円」にする改革につなげた。いまではZOZOを例に、送料無料を取りやめ、200円前後の送料を設定する通販会社も増えている。
また、自分の体型を計測して自分の合ったサイズの洋服を提案する採寸スーツ「ZOZOSUIT」(ゾゾスーツ)も話題となった。現在はZOZOSUITなしでも集積したデータから、ユーザーに合ったサイズの洋服を提案できるようになった。
そのほか、PB「ZOZO」、支払いを2カ月後まで伸ばせる後払いサービス「ツケ払い」、靴の計測マット「ゾゾマット」、アルバイトへのボーナス支給など、さまざまな新たなサービスを打ち出し、成長してきた。この過程では、有料会員制サービス「ZOZOARIGATO」など、終了したサービスもあった。近年では、前澤氏の個人資産による「100万円プレゼント」のお年玉企画や月への渡航など、ツイッターで発表される前澤氏のコメントなどが社会的な注目を集めていた。
良くも悪くも社会的な注目度が高かった前澤氏が社長を退任する。「ZOZO=前澤友作」というイメージが定着していたZOZO社だが、前澤氏の突発的なアイディアを具現化してきたのが現在の新経営陣だ。ヤフーとの資本業務提携で、両社の弱点を補強することで、ZOZOは新たなステージに突入する。今後の舵取りは、ZOZOの成長を裏で支えてきた新経営陣に託された。
(山本 剛資)
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