2017.10.10 通販系書籍
顧客が熱狂するネット靴店ザッポス伝説—アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか—
「ザッポス・ドットコム」という会社を知っているだろうか。2009年11月に、12億ドルの評価額でアマゾン・ドットコムに買収された靴のECといえばピンとくるかもしれない。ラスベガスに拠点を構えるこのEC会社の買収劇は、日本でも大きな話題となったので、記憶に残っている人も多いはずだ。
今でこそ独特なカルチャーと成功のイメージが強いザッポスだが、その道は決して順風満帆ではなく、倒産の危機に直面したこともあった。しかし、ザッポスはあらゆる困難を乗り越え、もっとも理想とする形でエグジットを実現したのである。本書の著者、ザッポス・ドットコムのCEO トニー・シェイの言葉を借りるなら、それは「アマゾンとの結婚」だ。ザッポスをよく理解しているアマゾンの傘下に入り手を組むことで、「ザッポスブランドを加速させる」だけでなく、「ユニークな企業文化を残す」ことができた。
ザッポスの成功を語る上で、この「ユニークな企業文化」は外せない。トニーは企業文化を設定することの意義を、本書のなかで次のように語っている。
「ザッポスでは、企業文化がきちんと設定できていれば、素晴らしいカスタマー・サービスも、長期にわたる素晴らしいブランド構築も、情熱的な社員や顧客といったそのほか大部分のことも、自然に始まると考えています。私たちは、会社の文化と会社のブランドは本質的に一枚のコインの表と裏だと信じているのです。ブランドは初めは文化に後れをとるかもしれませんが、いつかは追いつきます。企業文化こそがブランドなのです。」
つまり、目の前の売上にとらわれた小手先のテクニックではなく、ザッポスというブランド=企業文化を、時間をかけて確立することで、顧客との強い関係性を築くことができる。それが結果として直近の売上にも、生涯に渡るザッポスのファン作りにもつながっていくのだ。
ザッポスはこの企業文化を「10のコア・バリュー」と表現し、本書でも繰り返し説明している。これこそが、ザッポスがここまで急成長を遂げた他ならぬ理由だからである。常にこの「10のコア・バリュー」に沿ってあらゆる判断をし、その軸がぶれないからこそザッポスは顧客に愛され、良い方向に成長を続けられるのだ。
タイトルにもなっているとおり、本書はまさにザッポスが築き上げてきた「伝説」そのものである。そして、その伝説を作った張本人が、まっすぐな言葉で、かつ冷静にザッポスという会社を分析している。
企業文化は一日で完成するものではない。ザッポスは長い年月をかけ、社員一丸となってこの文化を作り上げてきた。それが結果として、今につながっているのである。
本書のなかでトニーも指摘しているとおり、企業によって体質が異なるため、ザッポスの「10のコア・バリュー」をそのまま真似たからとすぐに成功につながるわけではない。本書はあくまで、各企業がもっとも素晴らしい文化を作っていけるようにヒントを与えるにすぎない。
現在通販事業に携わっている人も、これから参入しようと考えている人も、まずは一度この本を手にとって、じっくりと内容を味わってほしい。本書が発信するあらゆるメッセージが、自社のサービスをさらに向上させるためのきっかけになるはずだ。
【著者プロフィール】――――――――――――――――――――――――――――――――――
トニー・シェイ
台湾からの移民の両親を持ちアメリカで生まれ育つ。幼い頃から何度もビジネスを立ち上げる。ハーバード大学でコンピュータ・サイエンスを学び、オラクルに入社。オラクル在職時に共同創業したインターネット広告ネットワーク会社のリンクスチェンジを、1999年にマイクロソフトに2億6500万ドルで売却(当時24歳)。同年、ザッポス創業に投資家として関わり、やがてCEO(最高経営責任者)としてほぼゼロから売上高10億ドルを超える企業にまで成長させた。米『ブランドウィーク』誌「マーケッター・オブ・ザ・イヤー2010」。
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