日本最大のIT企業が誕生することになった--。Zホールディングス(株)とLINE(株)の2社は18日、それぞれが対等となる形での経営統合に関する基本合意書を締結し、来年の10月を目標に経営統合すると発表した。両社の統合で、時価総額3兆円となる国内最大のITグループが誕生する。
(左)Zホールディングス(株) 川邊健太郎社長、(右)LINE(株)出澤剛社長
AI技術をベースにGAFA・BATに対抗
両社は経営統合の後、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」になることを目指す。世界のIT市場は、アメリカのGAFA(ガーファ:グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)や、中国のBAT(バット:バイドゥ・アリババ・テンセント)といった巨大IT企業が席巻し、一人勝ち状態となっている。
統合に至ったきっかけは2つの危機感だった。 1つ目はグローバルテックジャイアントの存在。このままだと、これらの企業との差は広がり続け、「ネット起業だけでなく、あらゆる産業が、国力、文化の多様性まで、大きな影響を及ぼしてしまう」〈出澤社長)という危機感を持っていた。このことから、両社がAI技術を軸に対抗し、GAFA・BATに続く第3局になることを目指すという。まずはLINEのシェアが高いタイや台湾などで、両社のサービスをスタートし、その後に東アジアからグローバルに展開する見通し。
また、もう1つの危機感は、ヤフー側が抱いているもので、「日本はテクノロジーで解決できる課題がありながら、まだまだ解決できていない」(川邊社長)というもの。ヤフーだけでは解決するには時間がかかることも、LINEと手を組めば、スピードを加速して社会過大が解決できるという。
経営体制は、Zホールディングスの親会社であるソフトバンクと、LINEの親会社のネイバーがそれぞれ50%出資するジョイントベンチャー(JV)を設立。そのJVと一般株主が新生Zホールディングの株主となる。株式比率はJVが65%、一般株主が35%となる予定。ヤフーとLINEは、それぞれ新生Zホールディングの完全子会社となる。
ユーザー層や各種サービスを相互補完
両社のサービスの利用者数は、ZHDが6743万人で、LINEが8200万人。これら顧客基盤を活用し、さまざまなシナジー効果が見込まれる。大きく分けて、マーケティング、集客、Fintech、新事業やシステム開発の4つの領域で期待できる。
ZHDの川邊社長は「顧客層はLINEがスマホ中心の若い世代が多く、ヤフーはPCがメインだった時代からの利用者であるシニア層が多い。ヤフーにはメッセンジャーサービスがなく、LINEはコマースサービスがあまりない。顧客層もサービスも、それぞれ補完し合う関係となる」と語り、お互いの顧客やサービスを補完し、シナジー効果が生まれやすい関係であるとした。
両社のクライアント数は、ZHDが300万社で、LINEが約350万社。これらの企業が両社のビッグデータを活用し、より効率的なマーケティング施策を実施できる環境を提供する。集客では、ZHDが持つECサービス(Yahoo!ショッピング、PayPayモール、PayPayフリマ、ヤフオク!、ZOZOTOWN、LOHACO、ヤフートラベル、一休.comなど)と連携し、LINE公式アカウントの活用で相互集客が可能となる。
経営統合で両社人員は約2万人となり、AIを基盤にさまざまな分野での開発の加速が期待できる。ZHDの川邊社長は「両社を合わせると、エンジニア、デザイナー、データサイエンティストが数千人の規模になる。人材のシナジーに期待したい。投資は1000億円以上の規模で大胆に実施する」と話し、人材や開発のほか、AIを軸に多額の投資を計画していることを明かした。
ソフトバンクユーザーの10%ポイント還元をLINEユーザーに適用?
具体的な新サービスについては、統合後に検討するとして、明言を避けた。その中で、川邊社長が一例として挙げたのは、「防災減災支援サービス」。現在のヤフーの防災速報アプリとLINEの防災アカウントを連携するなど、両社のサービスを活用してより便利で効果的な防災・減災サービスを開発する方針であることを示した。また、親会社グループのメリットとして、ソフトバンクユーザーの10%ポイント還元が、LINEユーザーにも適用される可能性もあることを明言した。
(山本 剛資)
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