10月には消費税が8%から10%に増税されたが、通販業界では多くの企業が駆け込み需要の影響を受け、好調な業績が目立っている。各種調査結果などを見ても、家電、家具、化粧品が伸びているようだ。このような状況のなか、家電ECの「ECカレント」などを運営する(株)ストリームは、増税前からの準備が奏功し、9月の大型家電の売上を大幅に拡大させた。同社の取締役営業本部長の右田哲也氏と、営業本部 商品販売部 店舗運営グループ 副部長の甲斐篤史氏に、増税前の駆け込み需要を取り込み、売上拡大に成功した取り組みについて聞いた。
(左)営業本部 商品販売部 店舗運営グループ 副部長 甲斐篤史氏、(右)取締役営業本部長の右田哲也氏
9月末の増税前最後の4日間に注文殺到
――消費税増税前の駆け込み需要の影響について、お聞かせください。
右田:夏商戦のはじまった8月あたりから増税前の駆け込み需要の兆候が見てとれました。8月末から9月上旬にかけて美容関連商品の販売が伸び、家電製品は9月20日以降の3連休で伸び始め、9月末の増税前最後の4日間からは、注文が殺到しました。
9月は通常、家電製品が伸びる時期ではありません。例年では年間を通じて売上が比較的低めの月なので、駆け込み需要の影響を大きく受けました。10月に消費税が増税されるため、今年は9月の売上計画を前年より多めにしていましたが、計画以上の数値を記録しました。
――どんな商品が売上を伸ばしたのでしょうか?
右田:冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの大型の家電や、PC、プリンター、ハードディスクなど、PC周辺の機器が伸びました。自社サイトのほか、外部モールではセールが好調で、特に増税前に開催された楽天市場の「楽天スーパーセール」の影響が大きかったです。
大型商品のチャット対応で売上拡大に成功
――駆け込み需要を見込んで、どのような対策を実施していたのでしょうか?
右田:前回の増税時には、駆け込み需要の特需は、ECより家電量販店の実店舗の方が恩恵を受けていました。弊社では今回、家電量販店の伸び率と比較してもそん色がない数値に売上が伸びています。駆け込み需要による売れ行きは、冷蔵庫、洗濯機など、大型家電が伸びる傾向にあります。しかし、ECは設置・配送の面などで、大型家電は得意ではありません。
このことから、弊社では以前から対策を取っていました。大型の商品をECでも購入してもらうために、昨年の秋から「ECカレント」オリジナルサイトでチャット対応を始めました。大型商品に関しては、設置の質問が多く出る傾向があります。内容は、在庫と納期確認、配送と設置に関するもの、設置料金、設置の日程、などです。
これらの質問は、大型商品を購入するにあたり、お客様が最も不安になる要素で、実店舗で店員の対応は、安心感を与えていると思います。これらの質問に対し、チャットで丁寧に回答する仕組みを整えました。
この仕組みは、昨年秋にWEB接客ツール「KARTE(カルテ)」(提供:株式会社プレイド)を導入して実現したものです。導入してから大型家電の売上が少しずつ伸び、増税前の駆け込み需要で9月は前年同期比で5倍以上になりました。
チャット対応で売上・利益が拡大、サイト改善成果の可視化も
――WEB接客では、他にどのような効果があったのでしょうか?
甲斐:チャットでの取り組みによって、全体の売上単価がアップし、売上と利益の向上に貢献してくれました。大型商品は単価も高く、利益率も高いので。
導入にあたって、サイト別、商品ごとに細かい価格設定をしました。また、販売サイトごとにそれぞれの施策を組み立て、トライ&エラーを繰り返しながら、各施策を実施しました。
通常はサイト改善施策の効果はなかなか見えづらいのですが、KARTEを利用した施策だと、プラスアルファの成果がよくわかりました。商材の特性に応じたチャット対応を実施。在庫や納期などの質問にはチャットで対応し、場合によっては電話対応も実施しました。在庫切れだった場合は、その商品に近い別の商品を提案するなど、実店舗のような接客をECで実践しました。
――KARTE導入の経緯についてお聞かせください。
甲斐:リアル店舗とWEBの両方で相互するオムニチャネルの取り組みが業界で進み、ECでも店舗のような接客を実現するプロジェクトが立ち上がり、チャットでWEB接客できるKARTEを導入しました。
昨年の秋から導入し、最初はチャットなしでスタートしましたが、問い合わせが増えてきたため、チャットを開始。最初は2人で対応していましたが、現在は人数を増やして対応しています。対応する人員が少ないとレスポンスは遅れてしまうので、人数を増やし、問い合わせが来る時間帯にしぼって対応しています。
夜間のチャット対応開始も
――チャット対応の今後についてお聞かせください。
右田:目指しているのは、ECで店舗と同じようなコミュニケーションを実現することです。現在はチャット対応を10時から17時まで実施していますが、将来的にはシフト勤務で夜間も対応したいと考えています。
また、現在はAIでの自動対応は実施していませんが、簡単な質問内容はAIチャットで対応し、その他の質問はオペレーターが対応できるようにすれば、人員も効率化できると思います。お客様との対話ができるECサイトの運営を目指していきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
■「ECカレント」
(山本剛資)
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