2020.02.25 コラム
毎日が“day 1”ーEC売上アップのために何から改善に取り組んだらよいか?
残念ながら、EC売上アップにはホームランはありません。1つの施策で劇的にアップするのではなく、複数の仕掛けがジワジワ効いてくることが多いです(モールECの場合はホームランがあることもあります)。
成長にむけたフェーズに合わせて、売上アップの方程式を組む
私がこれまでの経験で学んだ、売上アップの方程式は販売手法(サービス設計、訴求、販促活動など)×在庫・MD×集客の掛け算です。
店舗メインの企業であったり、すでにEC専業でやっている企業の改善/改革において、最初に着手した方が良いのは、販売手法と在庫・MDの改善です。この2つの組み合わせにより、「売れるお店」の環境やリピートサイクルが出来上がるからです。その後に、さらに集客を増やす施策を打つ方が効率的です。世間一般では、「売上を増やす=集客を増やす」と考えられがちだが、例えば在庫が100個しかないお店に、買う気がある10,000人を連れてきても、最大100個しか売れないというのは、カンタンに想像ができると思います。
※全くのゼロからブランドをスタートする場合は、予め集客元を想定・確保しておくことが重要です。
※着手可能な集客改善は、並行して行う方がよいです。
また、EC成長のために改善/改革をしていくためには、3つのフェーズがあります。フェーズの解説は今回は控えます(過去の記事も探します)が、上記の第1~第2フェーズにおいては、販売手法(サービス設計、訴求、販促活動など)と在庫・MDの見直しは重要です。
今回は、販売手法(サービス設計、訴求のやり方、販促活動など)と在庫・MDに絞ってお伝えします。
販売手法:考える上で、どの購買体験を基準にする?
販売手法は「用意された商品を売るためのあらゆる手法」というような意味合いで、販促施策、決済手段、UI、サイトやページのデザイン、配送までのスピードなどを含んでいます。実際に考えていく上では、「店舗の購買体験を前提として、店舗がある場合はその購買体験にまずは近づけていく」ということを根底にします。仮に、実店舗を持たない企業の場合は、「店舗の購買体験を前提として」自社商品をどう販売するかを考えてください。
国内物販のEC化率は6.2%(2018年度)という状況下で、ほとんどの商品ジャンルはオフライン(特に実店舗)での購買体験がベースとなっているはずです。個別の商品としては世になくても、同じジャンルの商品体験が前提にあるからこそ、ECで買う躊躇が軽減されると捉えています。
だから、購買体験や購買心理は、実店舗での現象をベースとする方が考えやすいでしょう。また、チャネルとごとの差があることに対して違和感を抱く生活者が増えていきる観点からも、実店舗メインでECをやる場合は、実店舗でできることを、なるべくECの中に揃えていく必要があります。いまだに「実店舗との差別化するには?」という相談もありますが、実店舗より不便なECサイトがあったら誰を使わないですよね。
販売手法:ユーザー目線、ユーザーになりきることからスタート
その上で、販売手法としてどんなことに取り組むべきでしょうか。
先にモールECの話をすると、プラットフォームの制約上、できる範囲が「商品の伝え方」「配送の荷姿・同梱物」あたりに限られます。
一方、自社ECサイトは販売手法を研ぎ澄ましていく必要があります(それをやらないならモールでもよいので)。なので、自社ECを中心に事例を交えてお話しします。
■事例1:メリットは見える位置に置く
販売手法を考える上では、「お客様にとってのメリットはわかりやすく伝えられているだろうか?」というユーザー目線でサイトを見なおしてください。
というのも、私がメガネスーパーに入社して最初に着手したのはここでした(売上の90%はコンタクトレンズ、メーカー在庫を都度発注が可能)。
例えば、5千円以上で送料無料や、主要な商品の即日発送、7日間以内の返品・交換対応などは、メリットのある情報だが、フッターにテキストで記載してあるだけでした。特に目立たせていない理由はなく、「これは知られていないんじゃないか?」と考え、知ってもらうためにヘッダーに設置しました。他にも、セールっぽいことをやっているのに、OFF率は強調されていなかったので、OFF率の視認性を高めるために数字を大きくし、色合いも暖色をメインとしたバナーに切り替えました。
これらの改善で、入社前の月商600万円が翌月には月商800万円になりました(並行してメルマガの中身の改善もしました)。
■事例2:店舗での「いつものやつ、よろしく!」をECで実現する
他にも、店舗の場合は顧客情報の照会ができれば、「前回と同じやつで」と言うだけでコンタクトレンズ購入が可能です。それが自社ECの場合は、前回と同じ商品・度数・箱数であったとしたも、トップページを含めて最低7ページ経てようやく注文完了です。「同じものを買うのにこのステップ数は面倒だろうな〜」と考え、2017年にトップページを含めて3ページ(入力はログインのみ)経て注文完了できるようにしました。
現在でもリピーターの多くはこの注文方法をご利用いただいています。
上記はあくまでも一例です。企業やブランドの戦略上「伝えたいこと」もありますが、小売・ECをやる上では、一度ユーザーになりきる・憑依させた上で、「どうやったら買ってもらいやすくなるか?」を考えて実施する方が売上もついて来やすいです。“ユーザー理解”ができていない場合はその前にアンケートを取るのもよいでしょう。
在庫・MD:成長への最短距離は、まず「売れるモノ」を集めること
在庫・MDは見落とされがちな要素ですが、最も売上のインパクトが大きい部分です。単純に「ECに相性がよい商品を横(品番数)と縦(在庫量)に揃える」ということ。
特に、店舗メインの企業で総じて言えることは、MDも在庫も店舗メインになっているということです。店舗と売れ筋がかぶることは多いですが、ECにおいて相性がよい・悪い商品があるということも把握する必要があります。いずれにしろ、最初のハードルは、どんな交渉をしてでも「売れる商品」を集めることです。
あとは業種によって、特徴は異なってきますが、中小規模の自社ECにおいては、少数の品番で量が売れた方が圧倒的に効率は良いです(所謂、ロングテールはプラットフォーマーや大規模の話)。特に、チームリソースが限られる場合こそ、「売っていく商品」を決めて、そこに商品撮影、ページ作成のリソースを投下することをお勧めします。
■事例1:EC独自で、ECと相性の良い商品を仕入れる
メガネスーパーでは、実店舗よりもカラーコンタクトレンズ(カラコン)の種類を多くしました。
20~30代の女性に話を聞くと、カラコンは比較的ECで買う習慣が根付いるものの、「ココでどうしても買いたい」というわけではなさそうということがわかりました。
メガネスーパーの雰囲気としても、コンタクトレンズの取り扱いすら知られていないのに、カラコンならなおさら売っていると想定されないでしょうが、既存ユーザーからでも売っていることが認知できれば、売上はついてくるだろうと考えました。また、陳列棚の制限がある店舗とは違って、ECなら幅広く展開が可能です。
結果的に、取り扱い品番は数倍になり、ECのカラコン売上は10倍以上、かつ新規ユーザーの入口にもなっています。
■事例2:少しずつでも発注権限をもらう
店舗と売れ筋がかぶりやすく、鮮度がモノを言うアパレルの場合は「在庫切れ」が課題課題となります。
実店舗メインの企業でそこに対処するには、どこかのタイミングでEC部門で商品発注した方がよいです。店舗と在庫共有するのはベターですが、ECで売れるモノの特徴があったり、ECの方が瞬発的かつ量的に売れる可能性があります。
均等に在庫を用意するのではなく、ECと相性が悪い商品は10枚、ECと相性がよい商品は1,000枚というようなバランスをとる方が、EC売上に直結するMDの考え方だと捉えています。
※これはEC専業であっても同様
また、実際に社内交渉する場合は、「全商品を対象に・・・」と言おうものなら基本拒絶されます。そのため例えば、ブランドとして多めに発注するランクの商品だけに絞る。そうすれば、型数自体は少なめになるので、お互いに管理しやすくなります。さらに、「EC部門で発注すると仕入れ予算が増えてしまう」を言われる可能性もあるので、予め少なくする商品群や発注ランクも決めておくと、交渉が進みやすくなることがあります。
在庫は売上アップの材料である一方、会社のリスクでもあるので、最終的にチャネル横断でリスクヘッジをしておく必要があることを忘れてはいけません。
販売手法×在庫・MD×集客:ユーザーが能動的or商品の鮮度が命であれば販売日に着目せよ
商品の鮮度が命となるアパレル業界やユーザーが能動的なブランド、なおかつ店舗展開している場合は、店舗の販売日と同じタイミングでECで販売開始する(商品アップする)ことが、販売手法、在庫・MD、集客すべてに影響してきます。これによって下記のような効果が出てきます。
〇販売手法:店舗と同じタイミングで販促施策を実行できる(チャネルごとの販売を同期できる)、お客様をお待たせしない
〇在庫・MD:店舗と同じ足並みで商品販売分析が可能なる、追加発注のタイミングを合わせられる
〇集客:店舗と商品販売のお知らせ(メルマガ、LINE、SNS)にECのリンクを掲載できる
前職ではこれをやったことが、自社EC売上の倍増に貢献したとみています。
しかし、アパレル業界のトップを走っている企業でも、ECの商品販売日は、実店舗と比べると早くて2~3日遅れており、遅ければ2週間ほど遅れる場合もあります。それは、ほとんどの企業は商品の到着が店舗とECが同じタイミングあり、ECは到着後にささげ業務に入るからです。販売日を同じにするには、生産部門から確実に納前(納品前にチェックする商品)を各1手配してもらう、またはサンプルを手配してもらうなどの、各部門の巻き込みが必要です。
一方、ユーザー側から見ると、期待値の高い商品ほど入荷日にチェックしたくなるものです。前職の場合は、さらに踏み込んで、店舗の販売日よりもECで早く商品を公開し、入荷連絡まで取っていました(当時、予約は上限数もあったので)。この場合は店舗営業の巻き込みが必要でした、販売前に有効なデータ取得ができ、なおかつお客様にもメリットにもなる一石二鳥の施策になっていました。
最後に
店舗起点の話をしてきた一方で、ECだからこその強みになることも存在します。例えば、場所や時間を選ばないことや、決済方法の幅広さなどです。夜中にECで注文して、コンビニで受取りができる。Amazon Payやコンビニ後払いが選択できる。ユーザーの生活や選択肢が多様化している中で、プラスαの利便性を追加していくことも必要です。特に、ログインや決済のスムーズさ、商品によっては配送までの早さは求められてきています。
いずれにしろ、販売手法と在庫の改善には終わりがありません。コツコツと日々やる必要がありますが、これまでの経験上、集客よりも売上インパクトは大きいです(ゼロから立ち上げなら集客は先に用意する)。地道ですが、必ず成果につながるので、各社で取り組んでもらいたいと考えています。
また、安定軌道に乗ったり、市場環境が変わった時に、この2つに立ち返っていく必要性も出てくるので、フェーズ関係なく「店としての根幹」は随時見直していきましょう。
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■著者プロフィール:川添隆
ECエバンジェリスト
ECエバンジェリスト
1982年生まれ、佐賀県唐津市出身。販売、営業アシスタントとして総合アパレルのサンエー・インターナショナルに従事後、ネットビジネスを志しサイバーエージェントグループのクラウンジュエル(現ZOZOUSED)へ。ささげ業務から企画、PR、営業まで携わる。2010年にガールズ系アパレルブランドを展開するクレッジに転じ、EC事業の責任者として自社ECサイトを内製化し、EC事業を2年で2倍に拡大。また、LINE@の成功事例をつくった。2013年7月よりメガネスーパーに入社。EC事業、オムニチャネル推進、デジタルに関わる全てを統括し、6年強でEC事業の年間売上は6倍に、自社ECの月間受注を13倍に拡大させる。O2O・オムニチャネル推進を図り、他社のコンサルティングにも従事。2017年よりビジョナリーホールディングスを兼務。2018年より執行役員。
・サイト「川添 隆と皆で模索する、小売ビジネス・働き方ノート/エバン合同会社」:https://evanh.jp/
・Twitterアカウント:https://twitter.com/tkzoe
・YouTube川添隆Eコマース学: http://bit.ly/2ustK1C
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