三井住友カード(株)はこのほど、(株)顧客時間と共同で「新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす消費行動の変化」をまとめ、公表した。60~70代の高年齢層のEC利用へのデジタルシフトの兆候など、「巣ごもり」による消費行動の変化が垣間見える。
3月にECモール・通販が拡大
同社が保有する1月~4月15日までのキャッシュレスデータを集計。事業者向けに提示する内容は、「コロナ禍」の感染期(2月28日以降)と併せて、収束後に発生する顧客行動を捉えるヒントになるとしている。
1~3月を19年の同時期を比較すると、1月は利用人数が114%、利用件数120%、利用金額が111%。コロナ禍の影響が徐々に出始めた2月は、利用人数・件数が前年比でまだ増加しているが、自粛ムードが顕在化した3月はすべてが減少した。
業種別の動向でも、3月はほとんどの業種で減少。その中で、件数も金額もプラスとなった業種は、「ホームセンター」「スーパー」「ペット関連」「EC モール・通販」「通信サービス」「美容品」。在宅時間の増加に伴う消費の傾向がうかがえる結果となった。
「巣ごもり商品」行動が顕著に
さらに、コロナ関連ワードの検索数とキャッシュレス決済件数を日別で比較すると、外出自粛やトイレットペーパーの不足など、目に見える生活への影響が増えてきた3月3週目以降の関連ワー ド検索数が増加していた。この期間は「買い溜め」や在宅勤務急増による「生活変化」関連と思われる消費も増加。一方で、4月以降は検索件数の高止まりと反比例するような決済件数の減少傾向が顕著になっていた。
3月の業種別決済件数・金額の伸び率では、「ホームセンター」「スーパー」など、生活必需品を取り扱う業種が伸長。「EC モール・通販」「ペッ ト関連」「通信サービス」の伸びは、小中高校などの休校や出社・外出自粛要請などに伴う「巣ごもり消費」の行動がうかがえる。
決済件数の増加にかかわらず、決済総額が減少した5業種(「ディスカウントショップ」「家電量販店」「ドラッグストア」「家具・インテリア」「健康食品」)は、テレワークの準備など、突発的な需要で都度、来店して購入する消費行動が想像される。一方で「レジャー施設」「旅行代理店」「美術館・博物館」「映画・劇場」「交通関連」などの落ち込みは、営業自粛や、「三密」回避の行動変容を如実に現しているといえる。
高齢者層で「EC モール・通販」のシェアが拡大
決済金額を世代別で見ると、3月は全世代で減少。注目点は、高年齢層の「EC モール・通販」のシェア増加だ。増加幅が「スーパー」を上回っていることからも、高年齢層が自らの身を守るために、外出を必要としないEC・通販を活用している消費行動の変化が推測できる。
決済金額が伸びた業種での、20~30代の「スポーツブランド」の伸長からは、テレワーク推奨によるアパレルに対する消費行動の変化を捉えることができた。働き方の変化が、ファッション性優先のアパレル選びではなく、「体に負担をかけない」「長時間座っていても楽」などの機能性重視で選ぶような、アパレルの選択基準にも影響を及ぼしていた。
緊急事態宣言後はテレワーク関連消費・玩具などが伸長
4月7日の緊急事態宣言以降の週別業種別傾向では、さらなる在宅勤務増に伴うテレワーク関連消費といえる「通信サービス」「家電量販店」「EC モール・通販」の伸長だけでなく、「玩具・娯楽品」の伸びが著しく、買物の質も変化していることが分かる。
世代別の決済金額伸長業種ランキングでも、玩具・娯楽品が全体および20~40 代での伸長率1位に。ゲーム機やダウンロード購入、スマホゲームの課金なども含むため、 これまでの必需品中心の消費行動から、外出自粛の長期化も視野に入れた消費行動変化の現れといえる。これを裏付けるように、ゲーム・EC関連のワードは、4月に入り検索数が伸長。特にNintendo Switch関連は、本体などの在庫不足の背景もあり、大きく増加していた。
同社は、コロナ禍の影響は従来とは異なる顧客の消費行動の変化を知ることができるとした上、特に高年齢層のECサイト活用というデジタルシフト傾向も見逃せない行動の一つとした。この傾向を一過性の変化としてではなく、世代を問わないデジタルシフトの加速だと理解すると、ECサイトには高年齢層にも使いやすい操作性や画面構成・表現の考慮が、これまで以上に必要とされるとした。
また、「巣ごもり消費」が必需品から娯楽品へと買い物対象が移り変わっている状況なども含め、刻々と変わる社会情勢と決済データを時系列で追うことは、「コロナ感染期」「収束後」の消費行動を考える上で、大事な示唆の発見につながるとしている。
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