成功は5〜10年後のビジョンありき
ーーまず初めにサブスク/D2Cの現況について、どう捉えているかお聞きしたいです。
SUPER STUDIO真野勉氏(以下、真野):サブスク/D2Cビジネスを始めた、もしくは始めたいけど「マーケティング戦略の策定に課題を抱えている」という企業が多いと感じています。
特に「商品の品質に自信はあるが、どのようにプロモーションし、販売していけばいいのかがわからない」という声が多いですね。その中でも、「広告の出稿は行っているが、実際のPDCAの回し方や適切な予算配分がわからない」「アフィリエイト広告において、メディアや仲介事業者に言われた通りの報酬をただ支払っているだけになってしまっている」といったケースがあります。
まず広告を出す際に、どんなユーザーにアプローチをしたいのかターゲットによって手法を変えなければなりません。検索エンジン経由で集客するためのコンテンツを作り込んだり、商材によってもターゲットがニッチな場合は、顕在層へのピンポイントなアプローチをしながら、規模の拡大を見込むために潜在層へのアプローチも仕込まなければならなかったり、予算の使い方含めて適切な広告運用を回す必要があります。
その上でブリーチさんの存在は大きく、いつもご相談させてもらっています。
ブリーチ大平啓介氏(以下、大平):おっしゃる通りで、商品の魅力を活かしたマーケティング戦略をうまく描けていない企業さんが多い気がしますね。
真野:そうなんです。どれだけ魅力的な商品だったとしても、短期はもちろん中長期も見据えたブランド設計を行い、それをしっかりプロモーションしていけるような全体戦略を実現していかなければ、なかなか事業が拡大しないことが多いですよね。
また、D2Cの特徴でもあるデジタルマーケティングはスピード感を持って顧客にリーチできます。FacebookやInstagramを始めとしたSNS広告は、年齢や性別などを特定してターゲティングでき、ニーズのあるターゲット層へスピーディーに無駄なく情報をリーチし購入率を上げられるのが特徴です。
事業の拡大がうまくいってもサプライチェーンの各オペレーションが作り込めておらず、拡大した際にあらゆるコントロールが効かなくなってしまうこともよくあります。ECに参入したばかりのメーカーは売上が拡大していくと、まさにこの状況に陥り、多くの時間を在庫管理や広告分析などのオペレーションをコントロールすることに使ってしまいます。
大平:広告視点でありがちな話では、獲得が伸びている時にシステムがトラフィックを受け止めきれないという問題もありますよね。
真野:おっしゃる通りです。メーカーが広告を打つ際、その情報をシステム側が知らなければ急なトラフィックに耐えられずシステムダウンをしてしまう可能性があります。弊社はメーカーと情報連携をしてサーバーの補強など事前に対策を打ちますし、24時間365日の監視体制を敷いているので、情報連携できていなくても最速で対応できます。
“攻め”の施策を実行していくことも重要ですが、先を見据えて“守り”の施策を徹底することも非常に重要です。在庫の予測管理や物流の拡張管理、システムでいえばインフラの拡張性とサーバー補強などの対応のスピード感が必要ですね。
大平:商品供給やシステムが止まると、一度広告を止めざるを得なくなってしまいます。そうすると、獲得効率のよかった広告枠を手放すことになってしまうケースも多々あります。EC Forceを導入している弊社のクライアントから話を聞いていると、SUPER STUDIOさんではシステムはもちろん、D2C支援事業では製造の部分もうまくコントロールされているなと感じます。
真野:ショップさまからそのように言ってもらえるのはありがたいです。EC Forceの機能面では常にメーカーからの要望をキャッチアップし、さらに弊社のD2Cコンサルティング部隊から得たフィードバックにより「売れる」機能を毎月20〜30箇所アップデートしています。サポート面ではメーカー1社につき平均6名のCSメンバーがメールや電話、チャットなどで対応できる体制づくりをしています。また、メーカーの「成長を止めない」という観点からも強固なシステムの提供を心がけています。
D2C支援の際は商品在庫のコントロールについても重きをおいています。商品在庫をコントロールする上で、まずは信頼できるOEM企業を選定することが重要になりますが、業界の仕組み上、どうしても製造工場の生産ラインを抑えられるかが焦点となってしまいます。スタートアップ企業のようにロット数の少ない商品ほど納品スケジュールを柔軟にコントロールすることは困難です。
そのため、弊社ではデータに基づいたナレッジからマーケティング戦略の実現確度を見切り、新規顧客の獲得数の推移を見積もることで、リスクとリターンのバランスが取れた在庫コントロールを実施しています。
ーーそのほかはいかがでしょうか。
大平:サブスク/D2Cモデルはとにかくマーケティングが重要です。一口にマーケティングと言っても広すぎるように思いますが、我々の取り組むマーケティングの定義としては「潜在層に働きかけること」としています。マーケティングはそのパワーだけで、売り上げ1億円から100億円まで一気に伸ばす力を持っています。日本国内でサブスク/D2Cがもっと広がり、現代の消費者が求めている「良い商品」を広げる力を持った良質なマーケターが増えれば経済全体が良くなっていくと思っています。
「潜在層に働きかけること」は「良い商品」があったとして、まだその存在を知らない人にどうやって認知してもらうか。我々は具体的にはディスプレイ広告の領域からの集客を得意としており、集客したユーザーに商品などのストーリーコンテンツを見てもらい購買意欲を喚起、商品の魅力が掲載されたブランドさんのLPへ遷移してもらうというものです。ストーリーをみて理解の深まったユーザーをCVへとつなげていくのでCVR・LTVの高いユーザー獲得をしていきます。
エモくロジックを伝えることがカギ
ーー集客したユーザーをいかにCVさせるかも重要ですが、そのあたりはいかがでしょうか。
大平: クライアントからEC ForceはCVRが上がりやすいとよく聞きますね。
真野:ありがとうございます!嬉しい限りです。とにかくエンドユーザーにとっての「ストレスフリー」を心がけています。スマートフォンで簡単に入力できるようにフォームを最適化することはもちろん、「SMART DIALOG(スマートダイアログ)」というチャット型で入力をアシストするサービスも提供しています。現在日本のスマートフォンの普及率は6割を超えていて、10代後半〜50代は8割を超えています。普段からエンドユーザーが使っているLINEのような対話形式で名前や住所などの基本情報を簡単に入力できることが、CVR向上に繋がります。「SMART DIALOG」はまだリリースから間もないですが、導入後CVRが約200%にまで改善したショップさまもいます。
ほかにもワンクリックで決済が完了する仕組みや、購入完了画面で追加セットの販売などをオファーすることで、最初の購入に至るまでのCVR低下を誘発せず顧客単価の向上を見込めるサンクスオファー機能なども用意しています。またそれは、お試し商品を購入したお客様に定期購入コースを紹介するなど、LTVを伸ばしリピーターへと引き上げる施策にもなります。
大平:SUPER STUDIOさんは自らWebマーケティング運用をされていて、マーケティング視点で機能開発しているというのが非常に大きな強みだと感じています。情報のキャッチアップも、市場のニーズをプロダクトに落とし込むスピードも速いなと思います。
真野:もともと自分たちがメーカー側だったこともあり、現在もコンサルティング部門がメーカーに近い立場で業務をしているので、システムを導入するメーカー目線で開発に取り組めています。
マーケティング視点でいえば、先ほどお話ししたCVRを高められる「SMART DIALOG」など、CVR向上が検証済みの機能を着々とリリースしています。また、広告管理のしやすさも強みですね。広告グループ・URL毎に管理できるだけでなく、出稿媒体やプロモーションライン別に、どの媒体・どのURLが費用対効果が良いのかを常に確認できます。
また、弊社はクライアントのユーザー層に近しい年齢の若いメンバーや女性社員も多いので潜在ニーズを理解している人が多いです。ですから、エンドユーザー側の目線も常に持てているのも大きな武器だと思っています。
大平:サブスク/D2Cは、ロジックをエモーショナルに伝えていくことで「共感」を喚起していくことが成功の大きな秘訣だと思っています。少し複雑な言い回しになってしまっていますが、商品やサービスが提供できる合理的なメリットを、エンドユーザーの感情に呼びかけて「共感」してもらいCVにつなげていくということです。その実現に欠かせないのはやはり「ユーザー目線」です。その点、SUPER STUDIOさんは事業主側・エンドユーザー側の目を持てているのが強いと思います。
期待値を上げ過ぎるとLTVは下がる
ーーサブスク/D2Cを取り巻く環境変化やその対応についてはいかがですか?
真野:1つに景品表示法や薬機法(旧薬事法)など広告規制の強化があげられるかなと思います。
大平:弊社でも各法令の遵守を徹底しています。仮に、薬機法に抵触してしまうような表現をしてユーザーを獲得しても、期待値を上げ過ぎてしまいます。
商品に過剰な期待をしているユーザーは、実際に商品を使ってみるとギャップを感じて解約してしまいます。期待に沿ったものでなければ当たり前ですよね。弊社はシェア型のビジネスモデルのため、LTVの高いユーザーを獲得できなければ意味がありません。
真野:違法な広告表現は使わないというのは当然ですが、社内教育などを通じて「リスクマネジメント」を徹底していくことも重要です。弊社では社内で広告表現をチェックする仕組みも作っているので、法令遵守しながら商品の魅力を引き出しています。広告による表現を「期待値」としたとき、ユーザーが実際に得る体験は「実値」となります。期待値を実値が下回ればLTVは下がり、期待値を実値が上回ればLTVは上がる。メーカーのPLにおいて、期待値と実値のバランスは非常に重要な指標として考えています。
適切な期待値を形成することで自ずとLTVは伸びるので、将来の事業計画が立てやすくなり施策の幅が広がります。LTVが大切だからこそ、時間をかけてでもリスクマネジメントを徹底することが大事です。
大平:環境変化については「D2C事業への大手参入」が目立ってきていると思います。新興のビジネスモデルから一般化しつつあるという状況なのかな、と感じます。
ーー大手を中心に参入が増えていくとスタートアップや中小には厳しい環境となるでしょうか。
大平:むしろ大手が参入してくることは「チャンス」と捉えられると思います。大手ではできないような泥臭いデータ収集による商品開発や、大手が手を出しづらいニッチな領域での商品開発などの差別化をより明確に打ち出していけますし、良い意味で健全な競争が加速するのではないでしょうか。
大手にはリアル店舗があるなど強みはありますが、スタートアップの強みは高速PDCAを回せる機動力があることです。自社サイトで様々な施策を打って改善するのを繰り返すことで成長速度が上がります。
これまではプラットフォームに依存していてもある程度の成長を維持できましたが、今は状況が変わりつつあります。大手参入が増え、競争が加速することで今まで以上にただ役立つ商品というだけでなく、情報的価値に共感を生む意味のある商品が求められる時代になっていると思います。商品開発レベルでの戦い方が確実に変わってきていて、なかなかプラットフォームを入り口にしたモデルでは商品の魅力を伝えきれないのではないでしょうか。
真野:今までも必要なことではありましたが、真の顧客起点で考えられた商品づくりと、求めている顧客へ適切に商品を届けるための手数を泥臭くてもさらに増やすことが事業を成功させる秘訣ではないかと思います。
『欲しい商品』が一瞬で広がる社会へ
ーー今後の展望はいかがでしょうか?
真野:先程の広告規制の話もそうですが、サブスク/D2Cの戦い方で、間違った認識が広がることを止めなければなりません。「EC Force」というシステムを通じて、ショップさまそれぞれが求める答えを追っていけるようにリードしていきます。そのためにも本質的な企業と連携をとって、D2C市場を盛り上げていきます。
大平:世の中にはまだ潜在的ニーズがある商品がたくさん埋もれていると思います。もっと沢山の商品を広める力を持った集団になっていきたいです。そして、「マーケティングといえばブリーチ」と言われるような会社に進化させていきたいですね。
真野:我々も商品づくりやEC Forceを通して、顧客が自分でも気づいていない本当に欲しいものが簡単に手に入る社会を作れるよう活動していきます。「『欲しい商品』が一瞬で広がる社会」を一緒に作っていきましょう!
ーー本日はありがとうございました。
●対談者プロフィール
【株式会社ブリーチ 代表取締役 大平 啓介氏】
大学入学後、教育系企業のWeb集客から事業を始める。その後、自宅アパートにてインターネット販促支援事業をスタート。2010年、個人事業主からクライアント商品数の増加に伴い法人設立、代表取締役に就任(現 株式会社ブリーチ)。法人設立前から10年間、インターネットを用いた販売・マーケティング支援を行ってきた。大平のマーケティングによって多数のヒット商品が生まれている。
■ブリーチ
http://bleach.co.jp/index.html
【株式会社SUPER STUDIO 共同創業者 真野 勉氏】
1987年、東京都生まれ。学生時代からITベンチャー企業にインターンとして入社し、新規事業の営業に従事。同社の急成長に貢献し、東証マザーズへの株式上場を機に退職。2014年12月24日に株式会社SUPER STUDIOを代表林・花岡と共に共同創業。自社サービスである「EC Force」が広告宣伝なしで100ショップに導入された立役者である傍ら、採用人事として5年間で組織を100名程度まで拡大。現在は大手クライアント開拓などの営業と並行し、エバンジェリストとして企業間アライアンスをリード、キーワードである「D2C」を軸にSUPER STUDIOブランドの啓蒙活動も担っている。
■SUPER STUDIO
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