経済産業省がこのほど公表した2019年度の「電子商取引に関する市場調査」によると、国内の物販系BtoC-EC市場が初めて10兆円の大台に乗る推計結果を記録した。着実に伸び続けている「成長市場」を改めて裏付けたとともに、伸び率が3年連続で一桁台だったことから、次第に「成熟市場」へのステップを踏み始めているとの見方も示している。
EC市場は急成長のフェーズから、成熟市場に移行へ
19年のBtoC-EC市場規模の全体は19兆3609億円で、前年比7.65%増となった。また、物販系分野のEC化率は18年の6.22%から6.76%に上昇した。分野ごとの内訳は物販系が10兆515億円、サービス系が7兆1672億円、デジタル系が2兆1422億円。各分野の前年からの伸び率は物販系が8.09%、サービス系が7.82%、デジタル系が5.11%だった。
物販系分野の伸び率は、17年から3年連続で一けた台となったが、成長率は十分高い値であることに変わりはない。ECモール・楽天市場の開始は1997年で、それから20年以上。すでに10兆円という巨大市場を形成しているにもかかわらず、いまだに対前年比で拡大をみせる市場は、依然として成長市場であることを示している。
一方で、調査開始以降16年まで、毎年10%以上の成長率を記録してきた経緯から考えれば、3年連続一桁台の成長率だったことは、国内の物販系BtoC-EC市場が次第に成熟市場へのステップを踏み始めているという見方もできるしている。
サービス分野では、新たなカテゴリーが登場
19年の国内BtoC-EC市場におけるサービス系分野で、最も市場規模が大きかったのは旅行サービスで、3兆8971億円と、分野全体の54.4%を占めた。続いて「飲食」の7290億円、「理美容」の6212億円となっている。
サービス系分野は、カテゴリーの特性などに基づく市場形成があり、横断的に総括することは難しいが、全体的には伸びしろを残しているとの見方を示した。宅配サービスやタクシーの配車アプリが浸透し始めているなど、新たなカテゴリーの開拓が進んでいる。今後、既存のサービスのネット予約が進むなどすれば、市場はさらに拡大すると予測される。
スマホ経由のBtoC-EC市場規模は4兆2618億円
インターネット利用端末に関してスマートフォンの利用は63%ほど。PCの利用が低下傾向にあり、スマホの存在感は増している。ECでも物販やサービス、デジタルの各分野で、スマホ経由での取引額が増加基調で推移。物販分野のスマホ経由のBtoC-EC市場規模は推計4兆2618億円で、42.4%に相当する金額となる。
スマホ経由のECがPC 経由と異なる特徴として、スマホアプリがある。利便性が高く、事業者にとっても消費者とより強いリレーションを構築するチャネルとして期待されている。ライフスタイルが多様化する中、事業者がBtoC事業を拡大するには、存在感を増すスマホ経由の導線を確立することが肝要になってきている。
EC事業者がSNSを自社ビジネスに活用する取り組みが進展
総務省の調査によると、ソーシャルメディアの利用率がすべての年代で増加しており、平均利用時間も、他のコミュニケーション系メディア(携帯 電話、固定電話、ネット通話、メール)と比較して最も長かった。中でもSNSは日常生活での存在感が極めて高く、コミュニケーションの手段として欠かせないツールとなりつつある。
最も多い利用目的は「コミュニケーション」だが、次に多いのが「知りたいことについて情報を探すため」。前年比7.2ポイントの増加幅は他の項目に比べて最大だった。このことから、SNS上で接点を持つ人や趣味・嗜好・考え方などが一致する人などから情報を得て、購入の意思決定を行うという購入行動様式が、すでに広く浸透している可能性が示唆される。
そうした動向を踏まえ、EC事業者がSNSを自社ビジネスに活用する取り組みも多くなってきており、SNS上での自社商品のアピール、消費者の興味・関心に応じた能動的な情報発信、市場動向や商品への評価等など収集・分析が行われている。
世界中から利用者を集める Facebook、Instagram の広告収入の推移を見ると、直近の3年間はいずれも右肩上がりで拡大している。また、SNS上で多くのフォロワーを持ち、商品購入の意思決定に影響を与えるインフルエンサーも登場しており、SNSのECへの影響は、引き続き注視すべきとしている。
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