消費者庁の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」は19日、2月から6回に及んだ議論の結果を報告書(案)として取りまとめた。デジタル分野では、悪質なネット通販など悪質商法への規制強化に言及し、早急な法整備の必要性を進言した。消費者庁はこれを受けて検討を加え、来年の通常国会にも両法の改正案を提出する方針だ。
定期購入契約に新たに罰則規定か
検討委員会は、消費者の脆弱性を狙った悪質商法への対策強化と、デジタル化に対応した法制度の在り方を含むルールの整備を主な検討課題とし、夏までに一定の結論を出す方向でオンラインを含めた会議を重ねてきた。この間の議論ではデジタル分野に関して、「定期購入」の規制に向けた検討と、デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引の増大を踏まえた対応が優先的に議論されてきた。
定期購入に関する消費生活相談は年間4万4000件に達しており、前年から倍増。顧客の意に反して「定期購入契約」させる行為の規制強化がとり上げられた。現在、通販関連で直罰規定があるのは、「誇大広告の禁止」だけだが、定期購入契約に関しても新たに罰則規定を設ける意見が大勢を占めた。
早急な規制強化策には慎重な姿勢も
定期購入に次いで優先課題とされたのが、デジタル・プラットフォーム企業に対する特商法上の措置の検討だったが、これまでの自主的な取り組みに理解を示し、早急な規制強化策には慎重な対応となった。
これらの議論をまとめた報告書(案)では、「消費者庁は、消費生活相談の状況や取引の実態などを踏まえた実務的で法技術的な観点からの検討を行った上で、早期の実現を図るべき」とした上、「新たな規制の導入に際し、事前の周知を図るための時間は必要となるものの、早急に実効性を図ることが不可欠」との表現で提案。
違反行為に関するECモール運営者・販売事業者との関係性について施策を
デジタル・プラットフォームを経由した取引などについては、デジタル・プラットフォーム企業と連携を図りつつ、オンライン・ショッピングモールなどにおける販売業者などの特定商取引法の表示義務の履行の確保、および法執行時の販売業者などに対する追跡可能性の確保のために、特定商取引法の見直しを含めた所要の方策を検討すべきとした。
併せて、「必要な制度改革と厳正な法執行」「産業界の自主的な取組とそのための事業者に対する啓発などの支援」「消費者の賢く適切な判断を導くための取組」を、三位一体で行うことが必要とし、特定商取引法及び預託法の分野からこれらの取組を着実に実現していくことが期待されるとした。
取引の安全性確保に向けた取組の推進を求める
また、「新たな日常」が模索される中で、消費生活をはじめとした社会経済情勢の劇的な変化に適切に対応し、消費者の不安を払拭して取引の安全を確保する環境整備を図るための取組を推進していくことを求めている。
デジタルプ・ラットフォーム企業について消費者庁は、議論のたたき台として、提供するオンライン・ショッピングモール、アプリストアなどで消費者が取引をする際、取引相手がだれかを含め、信頼性の確保が重要ではないか。特に取引相手や取引条件が明確でない場合、トラブルの解決が困難になるなど、取引の安定性への影響が大きく、消費者に不利益をもたらすとともに、企業が提供するサービスへの信頼性も棄損される恐れがある――。
などとして、特定商取引法の観点からどのような対応が考えられるかという問題提起をしていた。同省は、取引の場の提供者としての役割や、消費者に対する情報提供の在り方を議論する「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備に関する検討会」(昨年12月から開催中)とも連携して結論を出したい考えだ。
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