(一社)JPCERT/CC内のフィッシング対策協議会は9日、フィッシング対策と関連の高いインターネットサービスの「認証方法」について、サービス利用者への調査結果を公開した。ログイン認証は安全性より利便性を重視する傾向やパスワード管理の安易さが目立つなど、安全性への理解が少ない可能性があるとし、啓発の必要性に言及している。
若い世代はSNSのIDログインが中心
調査は2月28日~3月2日。18~69歳のインターネットサービス利用者の男女562人に聞いた。年代による傾向をみると、SNSや総合サービスのアカウントでのログインについては、18~20代の利用が77.5%、30代の利用が73.0%と、SNS利用度の高い若い世代での利用が高く、これらの年代はSNSを中心としたアカウント管理が進んでいた。
「ログインした状態にしておく」の設定は18~20代が49.5%を占めており、利便性を求めていることが分かる。全体としても、対象サービスによるものも含めて80.7%が設定しており、ブラウザへのパスワード記憶とも合わせて利便性重視の傾向がうかがえた。
「パスワードをブラウザに記憶」が78%
パスワードの管理は、専用のソフトを利用している数は少なかった。紙やメモ帳、スマホやPC内のメモファイルで保管している利用者が一定数いた。記録媒体の管理が重要だと認識しているかどうかが問われるところで、啓発の必要性もあるとした。反面、ブラウザへパスワードを記憶させている利用者は78.0%だった。賛否についての議論はあるが、利用についてもメリットを分かりやすく伝えることで、安全な利用の促進につなげたいとしている。
パスワードの文字数について、8文字以下で安全と思っている利用者は53.2%。現在は8文字では安全性が足りていない状況なので、事業者は10文字以上、可能であれば12文字以上をめざして設定をルール化してほしいと強調している。
「顔認証」を18.9%が嫌悪感、「指紋認証」は肯定的な傾向
より安全な認証技術への意識では、「顔認証」を18.9%が嫌っており、生体データをサービスへ預けることに嫌悪感を持つ回答もあった。「指紋認証」は顔認証に比べて嫌われている傾向が低く、肯定的な回答が多かった。「ワンタイムパスワード」の普及率は高くなっているが、使用経験なしが20%、何か分からないも5%あった。
「二段階認証」を利用できる場合、どんなサービスに利用したいかを確認したところ、「ネットバンキング」が59.1%。次いで「クレジットカード会員サービス」が45.6%と、資産を扱うサービスで高い数字を得た。これは、サービス提供者との考えがマッチしている状況だという。
二段階認証は22.8%が「面倒」と回答
本人認証での不満点については、二段階認証が面倒との回答が22.8%。何となく不安、不安を感じつつもログインしている利用者が44.7%という状況だった。これらの「何となく」を解消するための施策を検討する必要があると思われる。また、32.7%が不安は感じていないと回答しているが、油断している利用者も含まれている可能性もあると指摘している。
オプションでの追加認証については、面倒でなければ利用するが48.6%で、無償なら利用、有償でも利用と合わせて75.4%は利用すると回答。「面倒でなければ利用する」と、「面倒なので利用しない」(12.8%)と合わせると61.4%となり、多くが面倒か否かで利用を判断していることがうかがえた。
「面倒でも安全性重視」の回答が75%から58%に減少
安全性を重視したサービスと、便利な利用を重視したサービスでは、どちらを利用したいかとの問いに、58%は手間がかかり面倒でも安全性が重視されているサービスを求めていた。しかし、39.5%は利便性を優先しており、安全性よりも便利な利用を重視した利用者が多く心配な状況だとしている。
19年2月のサービス提供事業者向け調査では、「ユーザビリティ」よりも、「セキュリティ」を求める回答が75%だったが、今回の利用者調査では、面倒でも安全としたい58%との差が出ている。利用者は、安全性よりも利便性を優先し、便利な利用を重視しているため、これらの差を埋めるためにも安全確保に工夫が必要とした。
調査にあたったフィッシング対策協議会の認証方法調査・推進ワーキンググループは今後、サービス提供事業者向け調査と利用者調査を比較し、意識の違いについて検討を加えて安全利用へ向けた意見としてまとめ、発表する考えを示している。
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