マーケティング&コンサルテーションの(株)富士キメラ総研がこのほど公表した「AI ビジネスの国内市場調査」によると、市場規模は2020年度に1兆円を超え、25年度には倍増すると予測。DXの要素技術の一つとして利用の拡大が見込まれるとした。
富士キメラ総研が調査
調査は3~8月。AIを活用した分析サービスをはじめ、AI環境を構築するためのコンサルティングやSI、AI環境を支えるアプリケーションやプラットフォームなどをAIビジネスとし、AI活用が進んでいるソリューション市場、エッジAIコンピューティング市場も捉えた。また、5月に実施したユーザーアンケートでAIの導入実態などを把握し、AIビジネス市場をまとめた。
20年度は15.4%増の1兆1084億円見込む
それによると、AIビジネスの20年度国内市場は1兆1084億円を見込み、19年度比15.4%増。25年度は、倍近い1兆9357億円を予測した。AIが注目され始めた16年度ごろは、期待感から漠然と導入を検討する企業がみられたが、18年度以降は具体的な業務課題の解消に向け、活用を検討する企業が増えている。ベンダー側のノウハウの蓄積とともに、ソリューションが体系化されつつあり、19年度には実証実験から本格導入に移るケースも増えた
AIを活用するソリューションでは、初期段階として事務処理や顧客問合せ対応など、ある程度定型化された業務の効率化、自動化を目的とした導入が進展。第2段階として知識を持つ従業員や熟練者が実施していた業務を、ノウハウに関係なく可能とし、業務品質を平準化するソリューション、第3段階として蓄積されたデータを用いたビジネスの高度化を目的とした活用も、今後進んでいくとみられる。
DX推進でAI導入加速と予測
20年度は、コロナ禍の影響で、プロジェクト遅延や新規案件の延期などが一時的にみられた。しかし、リモートワークの急速な普及もあり、デジタル技術を活用した構造改革を積極的に進めている企業も多く、経済状況が悪化している中でも企業競争力向上の取組みの一環として、AIへの投資は優先的に行われるとみられる。21年度以降は、企業DXを実現するための要素技術の一つとしてAI の利用がさらに増加していくことを予想している。
エッジAI分野の市場は33%増の177億円
クラウド上やデータセンターなどで実行されることが多いAIの学習・推論処理機能を組み込み、機器や機器(エッジ)側のサーバーで行う「エッジAIコンピューティング」の20年度市場は、19年度比33.1%増の177億円、25年度には565億円を見込んだ。
エッジ側での処理によってリアルタイム性が高くなり、家電やモバイル端末、車載デバイスなどの民生機器、オフィス機器、輸送関連、リテール関連などの産業機器と、さまざまな機器への搭載が期待される。特に、タイムラグがなく結果を即座に反映させることができるため、自動運転に不可欠な技術であり、大手自動車メーカーや自動車部品メーカーがAIベンダーと自動運転の高度化に向けた共同開発を加速させていくとみられる。
19年度は試作品開発のための検証が中心だったが、20年度には具体的な試作品開発へと進んでいる。コロナ禍のさなかだが、輸送関連などの産業分野ではAI活用に関する意欲は低下しておらず、下半期にはプロジェクトの再開により、市場は拡大するとみられる。21年度以降は、AIが組み込まれた機器の量産化やアプリケーション開発が本格化する。
OCRやRPA分野が注目株
注目のAI活用ソリューション市場として、業務効率化・自動化の関連ではOCRやRPA、チャットボット。業務品質平準化では次世代コンタクトセンターソリューション、メンテナンスソリューション、需要予測ソリューションなど。ビジネスの高度化を目的とした活用ではパーソナライズドレコメンドソリューションや店舗支援ソリューションなどが挙げられる。業務自動化ニーズの高まりなどで、これらの市場も拡大を予想している。
億単位のAI投資検討が3割超
AIを利用もしくは3年以内に導入する計画がある企業で、導入・検討状況を把握している担当者520サンプルに対するアンケートでは、19年度のAI投資予算としては1億円以上~5億円未満が最多で、1億円以上のAI投資予算を持つ企業は3割以上となった。20年度の投資予算は、前年度比で6割以上が増加した。コロナ禍の中でも、今後のAIビジネスの進展、AI関連市場のさらなる拡大が期待できる結果となったとしている。
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