インターネットの成果報酬型広告「アフィリエイト」をめぐり、消費者庁の表示対策課が広告主や広告作成者、仲介会社を対象にした大規模な実態調査を計画している。12月25日からは2020年度事業として、調査にかかる入札実施案件の予算規模を確認する市場価格調査も始まっている。関係者らへの取材から報告書が公表されるのは早くとも2021年夏ごろになるとみられる。
「通販通信ECMO」が入手した調査の仕様書
販売会社でなくとも健増法でリスク
同課によると、ネットショッピングの急拡大に伴い、アフィリエイト・プログラムを利用した成功報酬型のバナー広告の手法が多く見られる。一方で虚偽や誇大広告といった不正も少なくないのが実情だ。これまで、二重価格表示の際は比較対照の価格の具体的表示、根拠なく効能・効果があるかのように消費者に誤認される表示を行わないことなどを求めてきた。
さらに16年には、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、広告作成者や仲介会社は対象商品の供給者でないため、景品表示法上の措置を受ける事業者に当たらないが、表示内容の決定に関与している場合には、何人も虚偽誇大表示をしてはならないと定める健康増進法上の措置を受けるべき者に該当し得るとした。また近時は販売事業者が特定商取引法の業務停止命令・業務禁止命令といった行政処分が出るケースも頻発している。
西川課長「大規模かは判断しかねる」
こうした対応の一方で、現在でも虚偽・誇大な内容が少なくないと指摘されている。商品を買った人からは苦情や被害の相談は後を絶たない。こうしたことから、同庁はアフィリエイト広告のより詳細な実態把握を目的として実施する模様。すでに一部メディアでアフィリエイトに関する大規模な調査が行われるとする報道が先行していたが、通販通信ECMOの取材に対し消費者庁の表示対策課・西川康一課長は「“大規模”かどうかについては判断しかねるが、そうした検討を行っていることは事実」とコメントしていた。
アフィ広告に関与の広範囲を実態調査
「通販通信ECMO」編集部が入手した調査の仕様書によると、調査対象はアフィリエイト広告を中心にして、また、アフィリエイト広告と関係する範囲内でアフィリエイト広告に類似した広告についても広範に実施。広告の類型や種別、全体の市場規模、収益構造などを調べ、アフィリエイト広告の契約形態や作成プロセス、配信方法、アフィリエイト広告の各関与主体がどのように収益を得ているかにも踏み込む。
さらに仲介会社やアフィリエイターの属性(事業規模の分布、アフィリエイターの個人・法人別、各主体の法的知識の有無など)、広告の作成から公開に至るまでの業務フロー、アフィリエイト広告への誘導導線であるバナーなどが掲載されているメディア事業者などの適法性審査基準の有無や内容、表示に関する法的責任の分担、表示の確認の役割分担など。
併せて、アフィリエイト広告とアフィリエイト類似広告における不適切な営業活動の実態。違法な表示についての出稿勧誘や作成申出など、不当な表示につながるおそれのある営業活動などの有無やその内容なども調査項目に入れている。
また、仲介会社にはアンケート調査を実施する。おおむね50社を予定しているという。「アフィリエイト広告」実態調査の仕様書によると、契約期間は契約締結日から2021年3月31日までとし、納入期限は同3月24日としている。
3月末に調査結果、報告書は早くて夏か
消費者庁関係者や景品表示法に詳しい識者の話をまとめると報告書が公になるのは早くとも2021年の夏ごろとなる見通しのようだ。現在、調査の外部委託について入札公告の市場調査を行っている段階。市場調査期間は今年12月25日から年明けの1月7日まで。その後、入札にかけ3月下旬に調査結果を納入。4月以降、消費者庁による追加のヒアリングなどを経て報告書のまとめ作業に取り掛かることになる模様。最終的に公表される成果物は、18年5月に公表された「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」や同6月公表の「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」といったものと近しい形態で公になるとみられる。
消費者庁による規制強化も夏以降に?
この調査によるEC・通販業界への影響はどうかなるか。前述の景表法に詳しい識者は「調査の過程でアンケート回答依頼やヒアリングが入ることはあるだろうが、具体的な規制強化に踏み込んでいく動きは報告以降となるのではないか。となれば来夏以降は広告規制が厳しくなる可能性がある」と指摘する。別の景表法に詳しい弁護士からは「表示対策課の中でもネット広告に関するリテラシーの差が激しいという印象がある。例えばアフィリエイト広告の仕組みについて理解できていないというような職員もいるように思う。課内での情報格差を縮めるという狙いもあるのでは」という分析もうかがえた。
「健康食品関連では代理店までを巻き込んだ逮捕案件も出て騒然となる中、これから実態調査・早くて夏に報告というのは消費者庁の動き方はいくらなんでも悠長すぎるのではないか」という声もあった。「逮捕案件まで出て萎縮してしまう事業者もいる一方で、“無法”なプレーヤーの存在で割を食っている健全な事業者がいるのも事実」としたうえで「アウトローへのスピーディーな対処は薬機法案件として警察が担う、という状態がスタンダードになりかねないのはいかがなものか」と前述の識者は話している。
「媒体社」の考査厳格化の影響も
消費者庁のこの動きで媒体社の考査が厳格化するなど影響は避けられないだろう。関係者への取材では「媒体社」に関する調査に重きをおく可能性があるようだ。あるEC・通販事業者からの情報によると、すでに「消費者庁のアフィリエイト実態調査が関連しているのかはわからないが、媒体社のレギュレーションが急に厳しくなるという動きが出てきている」のだという。アフィリエイト広告を集客手法とするEC・通販事業者は関係各所の動きを注視する必要があるといえるだろう。
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