コロナ禍の中、EC・通販業者の本社移転が増えている。働き方の変化によるオフィス運用を見据えた対応、事業推進の観点から生活者とより密接になる地域の選定、集中できる環境づくりなど、理由はさまざま。共通するのは、企業価値の向上や持続的な事業基盤の強化と、世の中の変化に柔軟に適応し、従業員の働きやすさに寄り添った対応といえそうだ。
クックパッドは「オフィスの役割」を重視し、ミッション実現のためのオフィスへ
クックパッド(株)は、将来的な出社勤務体制を前提とし、サービス開発に最適化した柔軟なオフィス運用を推進するため、WeWork オーシャンゲートみなとみらい(横浜市西区)への本社移転を決めた。ミッションである「毎日の料理を楽しみにする」の実現には、「つくり手を増やすこと」が重要と、「つくり手」に向けたプラットフォームサービスの拡大をめざす。
「働く場所」は料理に関わる「つくり手」や生活者と密接な環境に、「オフィス環境」はサービス開発に最適化した設計に、「働き方」は社会状況に合わせた柔軟なオフィス運用に、「暮らし方」は職住近接を支援する諸制度の運用に――。同社が掲げる「これからの働き方」だ。
移転予定は5月上旬。今回の意思決定で一番重要と考えたことは「オフィスの役割」。コロナ禍の厳しい環境でも立ち止まらず、社員や仲間たちとの貴重な時間を大切に、ミッション実現のためのプロダクト開発や事業の推進に集中できる環境づくりをめざしたいという。
ギフトモール、オフィス集約でリモート支援も
オンラインギフトサービス「Giftmall」などを運営する(株)ギフトモールは、従業員の多様な働き方と生産性高く働ける職場環境の実現をめざし、元日に本社を移転した。併せて、リモートワーク推奨をはじめとする社内の制度変更を図り、企業価値の向上に取り組んでいる。
同社は2014年の創業以来、日本とシンガポール間でオンラインツールを活用し、リモートワーク環境で事業を成長させてきた。20年4月の緊急事態宣言を受け、国内の従業員間の業務に関しても、在宅リモートワークノウハウを浸透。本社移転を機に、さらなる事業成長を目的にリモートワーク支援制度の導入を決めた。
21年2月以降は、「自宅における勤務環境の整備を支援(最大15万円)」「リモートワークしやすい住宅への引っ越しを支援(最大30万円)」「都内のオフィスを1か所に集約し、オフィス効率と協働のしやすさ向上の両立を図る」ことを実践する。
新オフィスの執務スペースは原則フリーアドレスで、無線・有線LANを完備。眺望がいい窓際は、商品撮影のほか雑談コミュニケーションなどにも。壁防音素材の個室ブースは、Web会議のほか営業電話などに最適。そして、ボックス席のように設けられた多目的スペースは、1on1など対面のミーティングや休憩など幅広い用途に活用できる。
フェリシモ、事業規模の強化で新本社ビル「Stage Felissimo」へ移転
また、ファッションや雑貨など自社企画商品を中心に、カタログやウェブなどの独自メディアで生活者に販売するダイレクトマーケティングを展開する(株)FELISSIMO(フェリシモ)は、18日に神戸市新港突堤西地区の新本社ビル「Stage Felissimo」へ移転した。
神戸港開港150年を記念して市が再開発を進める、文化・商業・業務・住宅などで構成される複合開発地域。神戸に優秀な人材や魅力的なクリエイターが集い、新しい価値の共創を行う拠点の創設で、新たな事業や商品を次々に生み出していくとしている。
将来的な発展が見込まれるエリアへの移転で、持続的な事業基盤の強化を図るとともに、世の中の変化にスピーディに適応し、従業員の働きやすさに寄り添った職場環境づくりをめざす。一般利用も可能となる施設で、1階ホールでは催事が可能。9月には2階に「FELISSIMO CHOCOLATE MUSEUM」が開館する予定だ。
ジャパネットHD、主要機能を東京から福岡オフィスに移転
このほか、(株)ジャパネットホールディングスは昨年11月、福岡市を新たに主要な拠点の1つとするプロジェクト「JAPANET@FUKUOKA」を立ち上げ、ホールディングスの主要機能を東京都から福岡市へ移転した。ウィズコロナの新しい働き方としてオフィスの在り方を見直し、自宅から近いオフィスに通勤できるコールセンターの拠点分散や、会社に徒歩で通勤できる社員への手当制度導入など新たな取り組みを行ってきた。
「JAPANET@FUKUOKA」プロジェクトでは、人事・経理などを含む12部門を福岡市のオフィスへ移転するとともに、中途採用も強化。福岡に新たな雇用を生み出し創業の地である長崎とともに九州から全国へ新しいサービスやスポーツ・地域創生の取り組みを広げている。
ZOZOはハイブリッド勤務に向けて本社移転
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する(株)ZOZOは2月中旬、千葉市稲毛区へ移転する。近年の働き方の多様化に加え、コロナ禍でリモートワークが推奨されるなど、オフィスの必要性が変わりつつある。一方で、従業員同士の対面でのコミュニケーションも引き続き重要と考え、オンラインとオフラインの「ハイブリッド型の勤務形態」を採用することとした。
ハイブリッド型の勤務形態では、現状よりも少ない執務スペースでの稼働が可能なことから、縮小と機能集約を狙って県内移転を決めた。新しい働き方により、従業員一人ひとりの健康と働きがい、生産性の向上を図り、企業価値の最大化をめざす。
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