ヤフー(株)を傘下に持つZホールディングス(株)=ZHDとLINE(株)が1日、経営統合した。国内最大規模のインターネットサービス企業としてのスタートだ。「コマース」「ローカル・バーティカル」「フィンテック」「社会」の4領域がつながりあった新たな価値の創出をめざすとし、コマース領域では、2020年代前半にEC物販取扱高で国内No.1になることを見据えている。
すべてのサービスにAI実装、5年で5000億円の投資
ZHDとLINEは、それぞれの親会社であるソフトバンク(株)と韓国・NAVER Corporationを含めた4社で、経営統合と業務提携の締結に基づく協議を進めてきた。経営統合に関わる契約書の一環として、ZHDとLINE承継会社が20年1月に締結した株式交換契約書に定めた株式交換の効力発生をもって、経営統合が完了した。
国内最大級のIT企業誕生ともなり、すべてのサービスにAIを実装し、新たな価値の創造を推し進める。5年間で5000億円の投資を計画、その間にAIの活用に携わる国内外のエンジニア5000人を増員する。ソフトバンクやNAVERなどのノウハウとネットワークを活かした海外展開も拡大。シナジー効果と事業やサービスの成長を推進し、23年度の売上収益は2兆円、営業利益は過去最高益となる2250億円をめざす。
「情報」「決済」「コミュニケーション」の3起点を持つ企業に
統合により、「情報」「決済」「コミュニケーション」という日常生活に不可欠な3起点を持つ複合企業グループにもなった。
ヤフーとLINEを中心とした「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を≪根幹領域≫と定めて推進するとともに、特に「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech」「社会」の4つを≪集中領域≫とした。それらの領域にデータやAI技術を掛け合わせることで、社会自体をアップデートしていくとした。
LINEギフトからYahoo!ショッピングの商品が購入可能に
その1つ「コマース」では、新たな買い物の選択肢を提供する。コミュニケーションアプリ「LINE」などを活用した「ソーシャルコマース」だ。ソーシャルギフトではLINEギフトとYahoo!ショッピングなどとの連携。共同購入では「LINE」上で友だちに購入を呼びかけ、みんなで安く購入。ライブコマースでは同じ動画を見ている人と交流して買い物……。
加えて、オンライン店舗と実店舗の商品データを連携させ、自分に一番あった購入手段を選べる新しい買い物体験「X(クロス)ショッピング」。オンラインに加え実店舗でも、ダイナミックプライシングでお得に購入できる「My Price構想」を検討する。さらにユーザー向けロイヤリティプログラムの統合も検討していくとした。
EC支援ソリューション「Smart Store Project」開始
NAVERの知見を活かした、自社ECサイトの構築・運営、分析、さらには接客・送客などが可能なECソリューション「Smart Store Project」を、21年上半期に提供を開始する。
中長期的には実店舗、自社ECサイト、Yahoo!ショッピングなどのモール型EC、集客用の各種SNSサイトや、LINE公式アカウントなどを1つの画面上で一括して管理・運営ができる仕組みを構築していく考えだ。
PayPayとLINE Payは加盟店連携
「フィンテック」では、「買う」「予約する」「支払う」といったアクションにあわせて、ローンや投資商品、保険などニーズにあった金融商品を提案する「シナリオ金融」を拡充。PayPayとLINE Payは加盟店連携を開始し、21年4月以降、ユーザースキャン方式加盟店ではLINE Payでの支払いが可能になる。PayPayとLINE Payは22年4月にLINE Payの国内QR・バーコード決済をPayPayに統合する協議を開始した。
飲食予約や旅行予約などの「ローカル・バーティカル」では、企業のDXの支援を通じて課題解決に寄与するとした。「Yahoo!ロコ」「一休.comレストラン」「LINE PLACE」などの複数のサービスからの予約・送客に加え、AIの活用でマッチング精度の向上をめざす。また、フードデリバリー(株)出前館のデリバリーインフラの活用を検討、ZHDグループが手掛けるサービスのさらなる配送の利便性向上にもつなげていく考えだ。
広告領域では事業者向けの新たなソリューションを提供
広告においては「Yahoo! JAPAN」「LINE」「PayPay」の連携で、事業者向けに新たなマーケティングソリューションを提供する。「Yahoo! JAPAN」や「LINE」のメディア上などで広告を配信し、特定商品の購入者にのみ、改めてお得なクーポンを届けて再購入を促すなど、効率的で継続的なアプローチが可能になる。
「社会」では、行政DX、防災、ヘルスケアの3分野を柱とし、官民連携を活かした日本のDX、ひいては社会課題の解決に取り組むとした。
新生ZHDは経営統合を記念して同日、特設サイトを開設。ユーザーからの課題やサービス・機能をネット上で広く募る「課題解決ボックス」を期間限定で設置している。
■LINEとの経営統合に関する特設ページ
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