消費者庁は1日、化粧品通販会社2社が広告宣伝を委託した成功報酬型のアフィリエイト広告について、「肌のシミが数日で確実に消える」など誇大な表示などに、消費者の合理的な選択を阻害するおそれがある行為(虚偽・誇大な広告・表示)を確認したとし、消費者安全法の規定に基づき消費者に注意喚起を行った。識者に寄ると消安法によるアフィリエイト広告に関する注意喚起は初。
LibeiroとシズカNYの商品が対象
注意喚起の対象となったアフィリエイト広告が表示していた会社と商品は、(株)Libeiroが販売する化粧品「エゴイプセビライズ」と、(株)シズカニューヨークが販売する医薬部外品「シズカゲル」。各地の消費者センターには両商品に関する相談が相次いでおり、消費者庁は、住民に被害が及んでいたという長野県と合同で調査を行った。
調べによると両社はそれぞれ、アフィリエイトサービスプロバイダ(ASP)に対し、アフィリエイトプログラムによる広告宣伝を委託していた。アフィリエイターが作成したアフィリエイト広告(ウェブページ形式など)に、広告主の商品販売サイトへのリンク(バナーなど)を掲載し、消費者がそのリンクから商品販売サイトへアクセスして商品を購入するなどの条件を満たした場合、広告主からアフィリエイターに報酬が支払われる仕組みだ。
過激な「体験談」などで相談件数増
Libeiro の「エゴイプセビライズ」のアフィリエイト広告には、例えば、肌のシミが数日で確実に消えるかのような内容(SNS の投稿画像、体験談など)が表示されていた。また、「定期縛り無し いつでも解約OK」などと強調。特定日には通常価格9800円が2980円で購入できるかのように表示されていた。
実際の相談例によると、消費者は、特価で試して気に入らなければ解約すればいいと考え、アフィリエイト広告の「お得に購入できる公式サイトはこちら」などと表示されたバナー広告などをクリックして商品を購入。到着後、広告に表示があり、期待していた効果が感じられないことに落胆し、Libeiroに解約を申し出た。シズカニューヨークが販売する「シズカゲル」のアフィリエイト広告の内容や消費者トラブルも、ほぼ同じ事例だった。
架空の体験談で誇大広告認定
合同調査で確認した事実として、「9800円を2980円で」という表示は期間限定ではなく、恒常的だった。また、「3日から1週間程度で肌のシミが確実に消える」とした表示は、両商品とも、このような効果はなかった。広告内の「体験談」も、作成したアフィリエイターが画像やテキストを編集して実在の消費者の体験談であるかのようにみせかけた架空のものだった。これらはすべて「虚偽・誇大な広告・表示」にあたるとしている。
両社はそれぞれ、ASPに対して商品についての広告業務を委託し、ASPがアフィリエイターへアフィリエイト広告の作成を再委託することを承知していたほか、これらの商品に関する 広告の表示内容の決定について関与していたことも判明。また、両商品が別商品であるにもかかわらず、商品名以外はほとんど同じ画像や文章が用いられたものがあった。
現在、両社によるアフィリエイト広告は閲覧できないが、1月時点でこれらの広告と同様に、肌のシミを短期間で解消する効果があるかのような内容の広告が公開されていたという。
両社「運用側の不適切な行為」と強調
Libiroは3月1日に公式サイト上に「消費者庁による注意喚起に関するお詫びについて」とする文章を公表。「弊社の業務委託先が制作および運用していたものであり、弊社にて広告内容を作成し、あるいは広告内容について指示をしていたものではありませんが、結果的に弊社商品に関して不適切な広告が行われたことにつき、お客様ならびに関係者の皆様に多大なご心配、ご迷惑をおかけしたこと心より深くお詫び申し上げます。今後は、弊社はもちろん弊社取引先企業におきましても、法令順守をいっそう徹底するよう対処して参ります」とした。
シズカニューヨークも同日、公式サイト上でお詫び文を掲載。「弊社の業務委託先、あるいは再委託先が作成したものであり、弊社が関与して、広告内容の指示、事後的に承認をしていたものではありませんが、結果的に弊社商品に関して不適切な広告が行われ、お客様ならびに関係者の皆様にはご心配、ご迷惑をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げます。今後は、弊社および、弊社業務委託先におきましても、法令遵守を一層徹底し、対処して参ります」とコメントを出しており、両社とも「あくまで運用側に不適切な行為があった」とする旨を強調している。
同庁は消費者へのアドバイスとして、事実とは異なる表示を行うなどの虚偽・誇大なアフィリエイト広告によって、消費者を商品販売サイトに誘い込む手口や、定期購入なのかどうか、支払総額はいくらか、購入回数の縛りはないか、解約・返品の方法など、契約内容を最後まで確認をと、呼びかけている。
そもそも消費者安全法とは?
消費者安全法とは、違反行為をした事業者を取り締まる法律ではなく、消費者被害の拡大を速やかに防止するため、消費者に注意を促すために社名やサービス名といった情報提供をしたりするもの。これまでには消費者安全法を使って、偽ECサイトやSMS詐欺、アマゾンや楽天、DMM.comを騙る架空請求などについて注意喚起を行っている。そのほか通販会社関連では、健康被害が出ている商品の注意喚起や(株)ケフィア事業振興会が展開していたオーナー制度についての注意喚起を行っていた。
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また消費者安全法では、事業主体がそもそも不明などといった、景品表示法や特定商取引法などでは取り締まりきれない“スキマ事案”を規制する役割もある。消費者庁関係者は「事業会社への措置命令や行政処分は調査期間などを要するため、消費者被害拡大防止をスピーディに食い止めるため、消費者安全法を使った社名公表などを行うこともある」と解説していた。
識者「課や法によらずアフィ規制か」
今回の件はどうか。健康食品や化粧品詳しい法曹関係の識者によると「消費者庁が庁をあげ、特定の法律や課にこだわらずアフィリエイト広告を規制していくという姿勢が明らかになったといえるのでは」と分析している。今回使われた消費者安全法は消費者安全課が管轄する法律。景表法を担当する表示対策課や、特商法を管掌する取引対策課とは別の課だ。ちなみに薬機法は、そもそも担当省庁が違い厚生労働省の管轄となっている。
前出の識者は懸念も示している。「今回の注意喚起の本質は、アフィリエイターによって作成されたアフィリエイト広告自体に問題があったこと。消費者庁が管轄する法律で、現状アフィリエイターを規制できるのは“何人規制”がある健康増進法。ただ健増法でアフィリエイトを規制するは前例がなくハードルが高いのではないか。またアフィリエイター自体を公表し違反内容を明らかにしたところで実効性には疑問が残る。そこで今回は消費者安全法を使い、アフィリエイターその人ではなく広告対象となった商品名や社名を公表し注意喚起するという手を使ったのではないか」。
そして懸念されるのは「となると今後も同様の手段で、悪質なアフィリエイターを食い止めるために商品名や社名が“ダシ”に使われてしまう可能性があるのではないか」と話す。
なお、景表法を所管する消費者庁の表示対策課では2020年度事業としてアフィリエイト広告の実態調査に乗り出している。今夏にも調査の報告書が公表される見通し。
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また取引対策課の特商法は改正の議論が進んでおり、定期購入絡みの違反事案については「詐欺的定期商法」の例として名指しするまでに至っている。
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