ネット上のアフィリエイト広告で根拠のない発毛効果を宣伝し「BUBKA(ブブカ)」という商品名の育毛剤を販売したとして、消費者庁は3日(株)T.Sコーポレーションに景品表示法(優良誤認)違反を認定し、再発防止などを求める措置命令を出した。消費者庁がアフィリエイト広告に基づく景表法の措置命令を行うのは初。
「BUBUKA ZERO」アフィ広告で違反認定
消費者庁によると、T.Sコーポレーションは「BUBUKA ZERO」という育毛剤と、同商品を含むセット商品を販売。2019年7~9月に成功報酬型「アフィリエイト広告」の仕組みを使い、「有名医科大学のマウス実験で実証済み」「たった2か月で髪がフサフサ」「育毛だけじゃない。脱毛防止までできる本物の育毛剤」などの広告についてアフィリエイトサイトを通じて宣伝していた。
さらに、「before」に薄毛、「after」に毛髪が濃い頭頂部の画像などを用いるなどして、商品を使用するだけで短期間で薄毛の状態が改善され、発毛効果が得られるかのような表示をしていた。「イメージ」「個人の感想」との表示もあったが、同庁は、消費者が宣伝表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではないとした。
消費者庁、アフィ広告「自ら決定」認定
同庁の調査を受け、T.Sコーポレーションに表示の根拠を示す資料の提示を求めた。同社からは、成分に関する論文などの資料が提出されたが、合理的な根拠とは認められなかった。また消費者庁は、同社アフィリエイト広告の表示内容を自ら決定していたとも発表した。こうしたことから、一連の行為は消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示すものと断定。景品表示法の優良誤認にあたるとして処分にいたった。
消費者庁によると、アフィリエイト広告に基づく景表法の措置命令を消費者庁が行うのは初だという。ただし「都道府県の措置命令事案まで含めると、過去にもアフィリエイト広告を違反認定したケースはあったかと思う」(表示対策課 松風宏幸 上席景品・表示調査官)とした。通販通信ECMOが把握する限り、昨春に埼玉県による景表法の措置命令で松風調査官が指摘するケースはあった。
松風調査官は本件の調査端緒についてもコメントした。「一般論として、調査端緒には自己申告、他省庁などからの情報提供や、我々の日々の業務の中での発見、競合企業からの情報提供などが考えられる。ただ、個別の事案の端緒については、今後の調査過程に支障をきたす恐れがあるため申し上げられない」(松風調査官)。
T.Sコーポ「再発防止に取り組んでいる」
T.Sコーポレーションは通販通信ECMO編集部の取材に対し、「本事案は2年前のものであり、発覚後取り下げおよび社内管理体制の強化に努めてきました。再発防止に向けた体制を整えて、1年以上が経過している状況になります。発生した理由としては、社内の管理体制の甘さが原因です。そのため、外部のチェック機関を通すこと、管理責任者を置くことで再発防止に取り組んでおります。今回の事案を真摯に受け止めて、今後再発がないよう引き続き取り組んで参ります」(平岡大輔社長)とした。なお、同社は(公社)通信販売協会(JADMA)の正会員社。
「アフィリエイターが勝手に、通用せず」
前述の「アフィリエイト広告の表示内容を自ら決定」とはどういうことか。消費者庁の表示対策課の松風宏幸 上席景品・表示調査官は「一般論として、例えば広告出稿先の選定や、アフィリエイト広告の場合はASPとの契約、広告原稿作成に係る素材の提供、実際に表示される広告内容の把握や承認ひいては報酬の支払いなどの状況を加味して総合的に判断の上使う言葉」と説明した。
通販通信ECMO編集部は消費者庁に対して、一般論としてアフィリエイト広告の実際の表示内容を販売会社側(=広告主)が承認していなかったり、把握していなかったというケースの場合も措置命令対象となるかなども質問した。
松風調査官は一般論であることを前置きした上で、販売会社側の景表法違反を認定し措置命令が行われることはあり得る、とした。また、「例えば新聞広告などでも、作成は代理店が行っており、広告主が実際の広告の表示内容を承認していなかったり、把握していなかったということはあるのではないか。その場合も違反認定はあるだろう。仮にアフィリエイターが作ったアフィリエイト広告であるからといって別段違う扱いをすることはない」を旨とするコメントもした。編集部の質問内容と回答について「こうしたことは今まで各報道機関の取材や講演会などでも繰り返しお話ししていること」とも付け加えた。
識者「ASPへの素材提供も慎重にすべき」
健康食品や化粧品の広告規制について詳しい弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の中山明智弁護士は「ついに消費者庁もアフィリエイト広告の違反認定に踏み切ったか、という印象がある。ASPやアフィリエイターなども巻き込む措置命令内容が出されることも予測していたが、思ったよりもストレートな内容で措置名利をだしたなとも感じた」とコメント。
また「措置命令内容について、”フィリエイト広告の表示内容を自ら指示していた“や”承認していた“、”把握していた“といった限定的な表現を使わず、“アフィリエイト広告の表示内容を自ら決定”という含みのある表現を使っていることも気にかかるポイント」と指摘。「ASPやアフィリエイターに丸投げしているような広告主もいると聞くが、今後はアフィリエイト広告を活用している事業者は管理の徹底が求められるだろう。素材の提供なども、最終的にどういう使われ方をする可能性があるかまで予測しながら慎重に行うべきだろう」と分析した。
アフィ実態調査、消安法など規制活発
健康食品や化粧品など、いわゆる単品通販に関する「定期購入」「アフィリエイト広告」への規制は厳しさを増している。景表法を所管する消費者庁の表示対策課では2020年度事業としてアフィリエイト広告の実態調査に乗り出している。今夏にも調査の報告書が公表される見通し。
アフィリエイト広告絡みでは、同庁の消費者安全課が管掌する消費者安全法を用いて今月1日に注意喚起が出たばかり。
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また取引対策課が所管する特定商取引法も定期購入規制を強める改正の議論が進んでいる。定期購入絡みの違反事案については「詐欺的定期商法」の例として名指しするまでに至っている。
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