ーーコロナ禍で動向の移り変わりなどはどうだったか。

　世界中でオンラインシフトが加速した。eBayにおいては日本のセラー（=出品者）の商品がよく売れるなど追い風となったといえる。国別の購買状況でいうと、例えば米国では政府による給付金が支給されたタイミングでバイヤー（＝購入者）の動きが活発になるといった傾向が顕著だった。新大統領政権下の米国では、再び給付金が支給される可能性もあり今後再び米国のバイヤーの購買が活性化するのではないかとみている。

　一方で、日本郵便のEMS（国際スピード郵便）に制限がかかるなど配送トレンドの変化も起きた。ただ、EMSの制限によって日本のセラーが、DHLなどといった「クーリエ（国際宅急便）」利用へシフトする動きが加速した。EMSと比べると、送料が嵩みがちといった側面もあるが、「到達が早くなる」「EMSで送れなかったサイズもカバーできる」といったメリットもあり販売トレンドの変化ももたらした。

ーークーリエシフトによるトレンド変化とは？

　まず配送スピードを格段に早くできる。海外には多少送料がかさんでも商品を早く手に入れたい、というバイヤーも少なくない。単純な購買欲というものもあるが、投資的商品は1日単位で相場が変動するために少しでも早く手元におきたいというニーズもあるのだ。近時のeBayでは「ポケモンカード(=ポケットモンスターのカード）」「遊戯王」「マジック・ザ・ギャザリング」といったトレーディングカードの取引が盛んだ。例えば「ポケモンカード」でプレミアムのついているカードは1枚で数百万円・数千万円という値段で取引されるものもある。いわば、ポケモンカードが投資商品として扱われているのだ。こうしたものは刻一刻と相場が変動する。またスニーカーといったコレクターズアイテムも同様に、相場が変動するため今すぐ手元にほしいというニーズがあるのだ。越境リセール市場では、スピードは非常に重要な要素となっている。クーリエシフトによってCVが良化することも珍しくない。

ーー実際の到達スピードはどれほどか。

　米国では、国内取引でも購入から到着までが一般的に大体4~5日かかると言われている。現在、日本のセラーの商品が購入された場合もほぼ同程度で到着するようになった。配送会社さんからお聞きした話では、ニューヨーク在住のバイヤーが購入した日本セラー商品が翌日に届いたというケースがあるそうだ。出荷場所と配達先がそれぞれの拠点から近かったなどが相まった特殊なケースではあるが、最速で翌日に届くこともあるというスピード感となっている。

ーーEMSでカバーしきれなかったサイズ対応とは？

　「重いもの」や「長いもの」を送る場合はEMSでは対応できないケースがあった。ただクーリエではかなり大型のものでも配送可能になるのだ。極端な例となるが、日本の桐ダンスや鎧、私も驚いたものでいうと日本間にあるような「欄間」といった重量級のものや大型のものも売れている。

ーー配送の問題で荷姿が大型化するものはEC進出を断念するケースもある。eBayでは例えば、どんな大物の売れ行きにチャンスがありそうか？

　趣味用品類はやはりチャンスがある。例えば1辺の長さがかさみがちなものでは、ゴルフクラブや釣り竿、自転車、楽器ではギターあやキーボードといったものは売れ行きがよい。いずれも日本メーカーのものは人気が高い。そのほかカーパーツ類もチャンスがある。マフラーやエアロ丸ごと、といった商品も売れている。クーリエを使えば車のエンジンですら送ることが可能なはずだ。もちろん日本車のエンジンなどを探しているバイヤーもいる。

　重いもので言うと、先ほどお話ししたような家具もそうだが、スピーカーやアンプと言った音響機器などかなり重量級のものも取引は多い。

ーー今年eBayでブレイクしそうな商品ジャンルなどはどうか。

　米国のeBayが確実に強化しようとしているところでは、先ほどもお話ししたトレーディングカード類だ。そのほか、時計やアンティーク、楽器といった資産性が高いものも人気が続くだろう。また、アフターコロナを見据えると外出自粛の反動として、派手なものや高級なものなど、など外出の際に着飾るための身に着けるアイテムのニーズが高まるのではという見方がある。そのほか、自転車などもそうだがアウトドア人気も世界中で続くとみている。

ーー今こそeBayにチャレンジすべき業種などはどうか。

　先ほどお話ししたように、日本国内のECだと重いものや長いものが送料の問題で売れにくいといったハードルがあるかもしれないがeBayでは「高くなってもほしい！」というモチベーションの高いバイヤーが多い。ひょっとすると送料がかさみがちな商材の事業者は国内以上に越境ECでニーズがあるかもしれない。ぜひチャレンジしてみてほしい。

　海外のバイヤーから日本のセラーは評価が高い。その理由として日本のセラーが扱うものは「偽造品がない」「中古でも状態がいい」といった安心感を持たれていることにある。こうしたことから、中古商材を扱う事業者にはぜひeBayを使ってみてほしい。なかでも専門性の高い中古事業者は求められている。やはり商品説明や商品写真ひとつをとっても、専門性が高いからこそのアングル写真や詳細説明ができる。

　またeBay参入を検討してくださる方にお伝えしたいこととして、「着想を広げてみてほしい」と思っている。どういうことかと言うと、eBayでは思わぬところでチャンスが広がっている。例えば、eBay内の検索ワードでは「ドラゴンボール」とあわせて「wallpaper（壁紙）」といった組み合わせで多く調べられていたりする。これは、ドラゴンボールの絵柄を部屋の壁紙にしたいというニーズがあるからこそだったりする。日本人的な感覚だと想像がつかないようなところに需要があったりするのだ。

カギは「エンスージアスト」

ーーeBayの新規出品者の傾向などはどうか。

　まず新規出品者の推移でいうと、引き続き絶好調だ。やはり熱狂的なファンがつくような分野の商品を扱う「エンスージアスト」系が8割。eBayにチャレンジしてもらいたい層でもある。クォーターごとのトレンド発信など、我々のメッセージはだいぶ伝わっているかなと思っている。eBayでは、チャンレンジしていただくセラーさんを大事に育てていく。ECは仕組みに目が行きがちだが、バイヤーときとんとコミュニケーションが取れさえすれば確実に伸びる。企業か個人か、都市部の事業者か地方の事業者か、という区分けは必要ない。チャンスを感じたらぜひチャレンジしてもらいたい。

ーー先日発表されたセラーアワードの結果についての感想や傾向分析も聞きたい。

　

　多くの方にeBayのビジネスチャンスも感じてもらいたいという思いもあり、今回からアワードの対象をあえて個人にも広げた。表彰を初の完全オンライン開催としたが、時間や場所の制約を取り払ったことによって間口を広げられたかな、と思っている。やはりこれまでのことを考えると、日本中に散らばるセラーを1か所に集めるのは難しいものがあった。オンライン開催によって、地方のセラーや１人で頑張っているセラーという人にも参加してもらえた。コロナが終息したさいには、リアルとオンラインのハイブリッドで開催できればと思っている。

ーー最後に2021年の野望や目標を聞きたい。

　大きなテーマとして「ECから国境を取り除きたい」と思っている。越境ECという言葉を超えて、ECとはそもそも世界に向けて売っていくもの、という文化を根付かせたいと考えている。海外販売も国内販売と変わらない、と感じてもらえるような土台を作っていきたい。やはりまだまだ売り手の方の意識として、言語対応にハードルを感じていたりというのは根強い。セラーが安心して越境ECにチャレンジできるように、プラットフォーマーとして全力でサポートしていく。

　またあらゆる場面で「イーベイ・ジャパン」の存在感を高めていきたいとも思っている。まず、一般的な認知として「eBay」は知っていても、日本法人のことまでは知ってもらえていない、という課題がある。日本国内からの新規出品の相談が米国本社に言ってしまうということもあるのだ。まずはこうした課題をクリアーにしていきたい。加えて、「eBay」全体の中での日本のポジションを高めていきたいと思っている。成長率などから、本社からは注目してもらえているがもっともっと伸ばせるはずだと思っている。