(公社)日本広告審査機構(JARO)はこのほど、2020年度の審査概況を公表した。1万5000件を超えた相談受付件数は5か年連続で最多を更新。インターネット上の不適切な広告・表示に対する苦情の増加が顕著で、「定期購入」は引き続き増加。「厳重警告」の判定は15件で、ほぼすべてがアフィリエイト関連だった。
苦情案件は初の1万件超え
総受付件数の1万5100件は、前年度比120.9%。うち、苦情案件は1万1560件で同124.0%となり、初めて1万件を超えた。オンライン経由で寄せられる苦情の割合は、前年度の72.0%から78.9%となり、オンラインへのシフト傾向がさらに進んでいた。
消費者からの相談が1万2493件と82.7%を占め、30代男性を除いたすべての年代で増加。特に10~20代は前年度比168.2%と大きく伸びた。例年、男女比はほぼ2対1だが、近年は女性の比率が増えており、10~20代は20年度に女性の件数が上回った。
健康食品では定期購入の誤認表示に対する苦情が目立つ結果に
消費者のメディア接触時間や在宅時間が増えたことなどの影響もあり、オンラインゲームや動画配信などの「デジタルコンテンツ」や、「健康食品」「化粧品」「医薬部外品」などの美容・健康関連は大幅に増加。医薬品的な効能効果をうたうネット上の不適切な表示が多数見られたほか、健康食品では誤認させる定期購入契約の表示に対する苦情が目立った。
媒体別では、インターネット上の不適切な広告・表示に対する苦情の増加が顕著だった。純広告だけでなくウェブサイトの表示などを含む「インターネット」は、19年度に「テレビ」を抜いて初めてトップとなったが、20年度も前年度比136.6%とさらに増加した。
不快感を訴える広告表現が増加
医薬品的な効果や誤認を招く「定期購入契約」など、不適切な広告・表示への苦情が増加するとともに、不快感を訴える広告表現に関するものも増えた。「表示」「表現」「手法」に分類されるが、表示の「品質・規格など」は倍増。「デジタルコンテンツ」(225.2%)、「健康食品」(165.8%)、「化粧品」(272.6%)、「医薬部外品」(510.4%)などの増加が際立っていた。
この中で、JAROは「厳重警告」15件、「警告」9件をはじめ、「要望」1件、「助言」2件を発信した。著しく不適正な広告に対して適用するため 20年4 月に新設した「厳重警告」については、運用初年度の適用件数15件のうち、14件が「インターネット」で、そのすべてにアフィリエイトプログラムが関わっていた。
「定期購入」に関する苦情は126%増の297件
「定期購入」に関する苦情は297件で、前年度比126.9%。多いのは「健康食品」「化粧品」「医薬部外品」など美容・健康商材で、うち218件が購入していた。「飲むだけで痩せる、返金保証、6日分500円とあったが、定期購入契約で、解約を申し出ても1年間継続購入しないと解約できない」という健康食品。「飲むだけで痩せるとうたっているが、アフィリエイトサイトで痩身の根拠として掲載されたのは人工肛門の論文を加工したもので、初回限定価格500円は5回購入が条件だった」という健康食品などが厳重警告となった。
コロナ禍で企業活動や消費生活にも影響が表れた。苦情は、緊急事態宣言が発令された20年4月の223 件をピークに、徐々に落ち着いてきたが、序盤に多かったのは、マスクや除菌剤などの関連商品の価格や欠品に関するもの、広告内でコロナ禍に安易に言及した便乗商品、旅行やレジャーなどの広告出稿時期に関するものなどだった。「家族で吸えばコロナにならないとうたった水素酸素吸入器」などが厳重警告の対象となった。
この続きは、通販通信ECMO会員の方のみお読みいただけます。(登録無料)
※「資料掲載企業アカウント」の会員情報では「通販通信ECMO会員」としてログイン出来ません。