消費者庁が15日に特定商取引法違反で行政処分を行った(株)LIBELLA(東京都新宿区、北原紘高代表)は、昨年発生した通販会社3社による特商法違反事件(3件)の“黒幕”だった。
LIBELLAと関連3社の関係(消費者庁の発表資料より)
関連3社による特商法違反事件
昨年起きた3件の特商法違反事件は、サプリメントのインターネット通販が舞台。定期購入契約に関する表示が、消費者を誤認させるというものだった。時系列は次のとおり。
・20年1月21日、(株)GRACE(東京都新宿区)を特商法違反に認定。再発防止策とコンプライアンス体制の構築などを指示した。
・20年8月6日、(株)wonder(栃木県宇都宮市)を特商法違反に認定。6カ月間の業務停止命令などを出した。
・20年12月17日、(株)Kanael(東京都新宿区)を特商法違反に認定。6カ月間の業務停止命令などを出した。
LIBELLAが資金を出して設立
この3件は一見したところ、別々の特商法違反事件のように思われた。しかし、今回の行政処分により、LIBELLAが3社を実質的に支配していた実態が明るみに出た。
LIBELLAは、インターネット広告事業やウェブコンサル事業を行うIT企業。資本金は300万円、2017年5月に設立。東京都新宿区にオフィスを構える。北原紘高代表の下、ホームページ上では従業員数22人としている。
表向きには、サプリメントのインターネット通販は行っていないように見える。ところが、今回の行政処分で消費者庁は「特商法に規定する販売業者に該当する」と判断した。その背景を説明する上で、まずはLIBELLAと3社の関係を整理する。
GRACEとwonderを設立する際に、LIBELLAはこの2社に資金提供を行っている。注目すべき点は、GRACEの江頭竜輔代表がLIBELLAの社員であること。GRACEは事実上、LIBELLAが資金と社員を出して作った通販会社というわけだ。
wonderについてはさらに手が込んでいる。wonderの三品考史代表は「お飾り社長」であり、実質的に支配していたのはGRACEの江頭代表だった。昨年1月に行政処分を受けたGRACEの代表であり、LIBELLAの社員でもある人物が、wonderを隠れ蓑にして違法なネット通販を続けていたことになる。
Kanaelについては、LIBELLAの出資によって設立された販売会社だったこともわかった。
事業方針の指示、消費者対応など統括
LIBELLAは資金や社員を出すほか、3社のサプリメント通販事業で重要な役割を果たしている。
3社が販売するサプリメントの仕入先や製造委託先の企業に対し、代金支払い債務の連帯保証を行っていた。また、3社の通販事業の業績をLIBELLA内で共有し、事業方針を具体的に指示。ウェブサイトの表示や顧客対応といった業務も統括していた。
その一方で、サプリメント通販でLIBELLAは、「消費者の前面に一切出て行かない」(消費者庁取引対策課)という状況にあった。
特商法では、法の規制を受ける通信販売を定義している。特商法上の通信販売とは、販売業者が特定の方法によって売買契約の申し込みを受けて行う「商品・サービスの提供」を指す。
この定義を言葉どおりに受け止めると、直接商品を消費者へ販売していないLIBELLAは、特商法の対象外のように見えてしまう。しかし、前述したとおり、実質的に関連3社を支配下に置き、共同でサプリメントを販売していたというのが実態だ。そこで、消費者庁はLIBELLAの行政処分に踏み切ったわけである。
消費者庁「野放しにできなかった」
消費者庁の担当官は、「黒幕のLIBELLAの北原代表の存在を確認した。野放しにできなかった」と打ち明ける。「証拠を積み上げて(北原代表が元締めであることが)わかった」と話している。
消費者庁がどの時点で、黒幕の存在に気付いたのかは不明。だが、3社とも実質的に代表以外に従業員がいないことや、販売商品に共通点があることなどを踏まえると、かなり早い時期に把握していたと考えるのが自然だ。
LIBELLAの告知文(同社ホームページより)
取り消し訴訟を提起へ
一方、LIBELLAは今回の処分に納得していないようだ。行政処分が発表された16日、同社のホームページ上に業務停止命令に対抗する方針を掲載。次の3点を主張している。
・通販事業者を対象とする特商法が、広告代理店である当社に適用された点は承服できない。
・業務停止命令に対する取り消し訴訟の提起、執行停止の申し立てを速やかに行う。
・取り消し訴訟などの結果にかかわらず、コンプライアンスの順守に努める。
今回の行政処分には、「通販に関する商品の販売条件について広告を行う業務の停止」が盛り込まれた。広告代理店でもある同社では、本業に火の手が及んだことで危機感を募らせているとみられる。
全国の消費者センターに約4000件の相談
記者は、GRACE が20年1月に行政処分を受けた当時、取材で同社へ電話したが、責任者は出てこなかった。wonderが20年8月に特商法違反に問われた際にも取材を試みたが、「代表につなぐことはできない」と告げられた。今回のLIBELLAについては電話番号さえも不明。取材で入手した番号に何度か電話したが、つながらなかった。関連会社も含め、説明責任を果たそうとする姿勢は見られない。
wonder1社だけでも、全国の消費生活センターに寄せられた消費者相談は約4,000件に上る。しかも、この数字は全体の数%に過ぎず、氷山の一角。おびただしい数の消費者が解約しようとしても対応してもらえず、その間に次の商品が届き、不安を募らせていた様子が容易に想像できる。
今回の事件のように、複数の販売サイトを隠れ蓑にして悪質な商法を繰り返す通販会社の噂は絶えない。真面目に取り組んでいる大多数の通販会社にとっても、甚だ迷惑な話と言える。
(木村祐作)
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