フリーマーケットサイトにサプリメントの偽造品が出品されたことを受けて、消費者庁は21日、消費者安全法に基づく注意喚起を行った。健康食品の偽造品販売で注意喚起を行うのは初めて。正規品とほとんど見分けがつかないことから、偽造品の特徴を公表した。
記者発表する消費者庁の担当官(21日午後、東京・霞が関)
購入者が気づき通報
今年5月、大手フリマサイト「ラクマ」で、大塚製薬(株)が製造・販売するサプリメント『EQUELLE(エクエル)』(120粒入り)の偽造品が出品された。購入した消費者が正規品でないと気づき、大塚製薬に通報。同社で商品パッケージやロット番号を確認し、含有成分を分析した結果、偽造品であることが判明した。
大塚製薬は5月17日、ラクマは5月24日に、それぞれのホームページで消費者に向けて注意を呼びかけた。6月上旬時点でも、偽造品の出品が確認されている。
正規品と偽造品の識別は困難
消費者庁によると、出品者は「遠藤」「小池」「森山」と名乗り、同商品の12袋セットを3万8,000円、6袋セットを2万円で販売。正規品よりも2~3割ほど安い価格を設定している点について、消費者庁では「フリーマットで購入するには手頃な安さで、消費者心理を突いた販売の仕方」(消費者政策課財産被害対策室)と話している。
商品パッケージ(表)、商品パッケージ(裏)、内容物と乾燥剤(消費者庁の発表資料より)
偽造品は商品パッケージも内容物も、正規品そっくりに製造。一見して偽造品であると気づくことは困難な状況にある。消費者庁では正規品との違いについて、次の3点を挙げる。
(1)偽造品の商品パッケージの賞味期限は「2023.2.2 C」と表記されているが、「2023.2.2」も「C」も正規品では存在しない。文字もかすれて印字されている。
(2)正規品の錠剤はやや黄色がかっていて、断面は円に近い形状。一方、偽造品は白色で、断面は楕円形。
(3)同梱の乾燥剤は正規品が透明のビニール袋、偽造品は白色の紙袋。
偽造品に特有成分なし、健康被害情報は寄せられず
また、大塚製薬から、正規品の特有成分が偽造品には含まれていないという報告を受けたと説明している。
「既に数十袋が販売されている」(同)が、偽造品と識別することが困難な状況にあり、消費者相談はほとんど寄せられていないという。消費者庁が把握しているのは2件のみ。どちらも40代以上の女性からの相談だ。
現在のところ、偽造品の摂取による健康被害情報は寄せられていない。しかし、安全性が不明なことから、消費者庁では摂取しないように呼びかけている。
個人による行為とは考えられない手口
消費者庁によると、出品者に関する情報は商品配送時の伝票しかなく、しかも、宅配伝票の発送者の蘭には購入者の住所・氏名が記載されていた。電話番号も“また貸し”を繰り返していたことから、特定に至らなかった。このため、出品者については不明という。
消費者庁の担当官は、「ここまで本物に似せたパッケージは個人では作れないことや、12袋まとめて販売する手法などを総合的に考えると、個人による販売とは考えられない」(同)との見解を示している。
楽天は「パトロールを強化」
ラクマではこうした偽造品の出品は禁止されている。運営する楽天グループ(株)は今回の事例について、「当該の商品についてはページの削除と、アカウント制限の措置をこうじている。当該商品についてのパトロールを強化し、見つけ次第商品ページの削除とアカウントの制限などの措置をこうじる」とコメントした。
今回のような本物と見分けがつきにくい偽造品対策としても「検知システムを強化したい」と話している。また、同社ではユーザーに向けたサイトで当該の商品に関する注意喚起文を5月24日に掲載している。
(※)「【重要】エクオール含有食品「エクエル パウチ120粒」の出品・購入について」
https://news.fril.jp/entry/2021/05/24/160021
大塚製薬、「偽造しにくいパッケージへ変更」
取材に対し、大塚製薬は今後の対策について、「生活者が安全に(安全な)製品をご利用いただけるよう、必要な注意喚起をしていく。偽造しにくいパッケージへの変更を検討する」(広報部)とコメントした。
健康食品や家電などを販売する通販各社では、フリマアプリなどの対策で頭を抱えている会社も多い。「フリマやショッピングモールへ自社製品が出品された場合には強く警告する」、「転売防止のために卸売先を絞り込む」といった取り組みが見られる。
(木村 祐作)
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