楽天グループ(株)が11日発表した2021年12月期第3四半期(1~9月)連結決算は、売上収益が前年同期比15.4%増の1兆2005億円、営業損失が1083億6200万円(前年同期は605億1900万円の損失)、四半期損失は922億6200万円(前年同期は714億7100万円の損失)となった。
モバイル事業の損益を除くNon-GAAP営業利益は44.8%増の475億円
四半期としての売上収益は4069億円で、前年同期比12.6%増の2桁増収となり、過去最高を更新。楽天市場、楽天ネットスーパーなどの国内ECの成長や、楽天カード、楽天銀行などのアクティブユーザーの増加、クロスユースの拡大などが成長をけん引した。営業損失は、計画を前倒しした楽天回線エリア拡大に伴う先行投資などによる。
計画を前倒した楽天回線エリアの積極拡大に伴う先行投資で、Non-GAAP営業損失は577億3500万円(前年同期は286億5400万円の損失)となったが、投資が継続するモバイル事業の損益を除くNon-GAAP営業利益は、同44.8%増の475億円と大きく伸長している。
「楽天シンフォニー」を中心に23年度中に単月黒字化へ
同日行われた会見で三木谷浩史会長兼社長は、黒字化の目途として、「23年度中に単月黒字化する」と語った。その実現性については、「楽天シンフォニーはすでに3000億円の契約が取れている。今後も1000億単位で増えていく。23年度中の単月黒字の実現は十分可能だと考えている」と語った。
楽天グループのグローバル展開で三木谷氏は、EC・フィンテック・ソフトウェア(楽天シンフォニー)の3つが軸となるとしながら、最も競争力があるのは「ソフトウェア」だとした。「世界で初めて不可能と言われていたソフトウェア技術によるモバイルネットワークを構築したが、爆発的なコストアドバンテージがあると世界の人が認識し始めてきた。世界のトップの携帯会社と我々は対等に話をしている。なぜそれができたかというと、楽天モバイルで600万人がちゃんと仮想化技術で動いているから。論より証拠ということ。日本の会社が世界のプラットフォーム市場のトップを取れる数少ないチャンスだと思っている」と話した。
ショッピングECの流通総額は8.7%増、特需の前年前期より成長率は鈍化
国内ECの流通総額は前年同期比7.6%の1兆2000億円。コロナ禍を含む2年間の年平均成長率は+16%で、業界平均の-1%減と比べ、水準を大きく上回る成長。ショッピングECの流通総額は同8.7%増となった。コロナ禍の巣ごもり需要を背景に同29.3%増と大幅成長した昨年の第3四半期から一巡後も、さらなる成長をみせた。物販系分野のBtoC-EC化率は20年に8.1%(前年は6.8%)と例年より拡大。今後さらなる成長が見込まれる。
楽天市場×Rakuten Fashion(前年同期比30.2%増)、楽天市場×楽天西友ネットスーパー(同37.1%増)など、クロスユースの拡大が流通総額の拡大に寄与。さらに、日本郵便(株)との間に設立したJP楽天ロジスティクス(株)で物流事業を承継。新物流施設の稼働や業務・コスト効率の最適化、利便性の向上を推進。営業損失(投資事業を除く)は前年同期と比べ56億8800万円縮小するなど大幅に改善した。
四半期の推移では、売上収益が昨年同期比13.3%増の1685億円、営業利益は同39.0%増の214億2900万円。営業利益は既存事業の成長に加え、JP楽天ロジスティクスの物流事業承継が奏功している。
インターネットサービス事業の売上収益は15.6%増の7022億円
インターネットサービス事業の売上収益は7022億4800万円(前年同期比15.6%増)、セグメント利益は834億円(前年同期は64億2700万円の利益)となった。「楽天市場」での共通の送料無料(込み)ライン導入に代表される顧客利便性向上の施策などが奏功。また、宿泊予約の低迷が続いた「楽天トラベル」の予約促進が伸長に貢献。海外を含むその他のサービスでは、継続的なコスト効率化施策や消費行動の回復が営業損失の縮小に寄与した。
フィンテック事業は、売上収益が4555億8900万円(前年同期比7.0%増)、セグメント利益は682億3600万円(同7.6%増)となった。各サービスで堅調な顧客基盤拡大とメインサービスとしての利用が進み、増収を達成。「楽天カード」は、前第3四半期に追加計上したキャッシュレス還元補助金の反動で減益となったが、取扱高は前年同期比23.3%増、業界シェアは20%超に拡大した。カード発行枚数は10月に2400万枚に到達した。
「楽天ペイ」加盟店数は前期比約10倍に
「楽天銀行」は、7月に国内のネット銀行として初めて口座数が1100万口座を突破、メイン口座としての利用が進み、給与振込口座数は前年同期比59.0%増、決済件数は15.5%増と伸長し、株式上場の準備を開始した。ペイメント事業の「楽天ペイ」は、10月から開始した中小店舗を対象とした決済手数料実質0円キャンペーンが奏功し、加盟店数は急速に拡大。21年度の申込件数は前期比約10倍を見込んでいる。
モバイル事業は、売上収益が1622億800万円(前年同期比26.5%増)、自社基地局設置などの先行投資が継続中のため、セグメント損失は3025億1900万円(前年同期は1506億8200万円の損失)となった。9月末時点でMNOユーザーとMVNOユーザーの合計契約数が510万件を突破(MNO411万件、MVNO99万件)し、順調に顧客獲得が進捗している。
計画を前倒した楽天回線エリアの拡大に伴って10月以降、39都道府県でローミングの順次切り替えが進行。今後は、さらなるエリア拡大に伴い22年度第2四半期以降の業績改善を見込む。通信事業者向けソリューション事業のグローバル展開に向け、楽天シンフォニーが本格始動。法人化を予定し、資本業務提携も検討している。
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