楽天(株)が27日にグランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)とオンラインで開催した、楽天の事業戦略を楽天市場の店舗に発表する「楽天新春カンファレンス2022」で、三木谷浩史会長兼社長は、これまで2030年までの達成を目標にしていた国内EC流通総額10兆について、「2030年を待たずに達成できる」と明言した。
三木谷氏「国内EC化率はいずれ20%に到達」
昨年の新春カンファレンスはオンライン開催だったが、今回は会場でのオフラインとオンラインを併用したハイブリッド開催となった。新春カンファレンスではこれまで、自前の物流網構築や送料無料ラインの設定、モバイル事業の開始など、新たな取り組みを発表することが多かったが、今回の内容は新たな発表というより、国内EC流通総額10兆円に向けた道しるべを示す内容となった。
三木谷氏は冒頭、「世界のEC化率は17.8%で日本は8.1%。世界に比べて差が広がってきている。倍以上あるこの差が埋まるのかどうか。ネットショッピングの利便性、都市部から地方で働く人が増えてくることなどを考えると、日本のネットショッピングも8.1%からいずれ20%に到達するだろう。今のマーケットサイズが2.5倍に拡大すると考えれば、楽天グループが目指している国内EC流通総額10兆円は、2030年を待たずして、もっと早く実現できると考えている」と話し、10兆円達成をより早期に実現できるという見通しを示した。
早期に楽天モバイルユーザーを2000万人以上に拡大へ
楽天グループの流通総額10兆円に向けた取り組みのポイントとして、「モバイル・エコシステムからの還流」「Shopping is Entertainment!」「テクノロジー活用」「グリーン!!グリーン!!」「グリーン!!」の4点を掲げた。
「モバイル・エコシステムからの還流」では、楽天モバイルから楽天市場の還流が顕著になっている点を挙げ、楽天モバイル加入前と加入後の比較で、楽天市場での1人あたりの平均月間流通総額が約1.7倍に拡大していた。楽天モバイルの契約数も、楽天モバイルは楽天カードとの比較で顧客獲得スピードが3倍以上になるなど、急速に拡大している。現在はMNO+MVNO契約数が540万で、楽天モバイルユーザーを早期に2000万から3000万規模に拡大する、とした。
また、モバイルを契機にEC、フィンテック、広告、スポーツなどに還流し、エコシステムが拡大。ペイメントサービスの拡充でオフラインからの還流も増加している点も挙げた。
三木谷氏は「Eコマース市場が拡大していることに加え、楽天モバイルだけでなく、他のエコシステムを活用していくことで、10兆円の達成に持っていく。これは絵空事ではなく実現できる目標として、皆さんと一緒に二人三脚で臨んでいきたい」と話した。
21年のポイント総発行数が5300億ポイントに
「Shopping is Entertainment!」は、原点回帰の取り組みで、創業以来の基本的なコンセプトの1つである「お客さんにショッピングを楽しんでほしい」「Shopping is Entertainment!」に立ち返るという。エンターテイメント性をあげていく1つがポイントで、ポイント投資やビットコインも買える、楽天キャッシュでは人にポイントを送れるなど、さまざまな利用法がある利便性を強調。21年のポイント総発行数は5300億ポイントに達したという。そのほか、ショッピングSNS「ROOM」経由の購入者数が21年は前年比で2.5倍になっている点やライブコマースをさらに強化する方針などを掲げた。
また、わかりやすく快適なEC体験を提供することに関して、共通の送料込みライン導入店舗が昨年12月時点で約92%に達したことを挙げた。送料のわかりやすさに関するユーザー評価は送料込みライン導入後に大きく改善。三木谷氏は「楽天市場の送料がわかりにくいという声は、ほとんどなくなってきた」と語った。
「PIOP」導入企業に売上倍増・利益4倍の事例も
「テクノロジー活用」では、自社で開発したAIを活用した価格と在庫の最適化エンジン「PIOP」について解説。現在1038店舗が「PIOP」に申し込み済で、約200店舗が導入済み。PIOP導入済みのスポーツジャンルの店舗は売上高が導入後に倍増し、利益額が3.5倍に、在庫消化率も倍増したという。
また、新たなテクノロジーを使用した次世代配送として、「ドローンによる都市部オンデマンド配送の実現」「自動配送ロボによる配送サービスの実現」を挙げた。
三木谷氏、サステナブルな取り組みへの賛同を呼びかけ
最後に、社会全体でのサステナブルな取り組みの重要性や、楽天グループのグリーン戦略について解説。サステナブル専門のECサイト「EARTH MALL with Rakten」は流通総額が3.9倍に達し、サステナブル関連商品の掲載数は約12.7万点掲載されているという。三木谷氏は「楽天グループが(グリーン戦略の)方向に動いていっていることを認識しておいてほしい」「その方向に賛同していただいて、同じ方法に向いていければ」とサステナブルな取り組みへの協力を呼び掛けた。
創業25周年を記念した楽天ロゴは、楽天カラーとグリーンの2色で構成され、グリーンビジネスに向かう方向性を示しているとした。
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