2022.03.04 通販会社
ディノス創業50周年…「モノがたり」掲げ新体制で挑む次の50年とは?
カタログ通販、テレビショッピングの草分け的存在である(株)DINOS CORPORATION(東京都中野区、石川順一社長)。同社は2021年3月に現商号に変更し、新体制を発足させた。また同12月には創業50周年という大きな節目を迎えた。同社常務取締役の吉田美佐雄氏に、これまでの50年間を振り返ってもらうとともに、新体制の下で進める取り組みについて話を聞いた。
2021年12月で創業50周年の節目
――まずは吉田常務のプロフィールをお聞かせください。
吉田常務:社歴は40年になります。主な職歴としてはカタログのMDを10年ほど、その後、経理・経営管理を11年担当しました。このほか、商品戦略と営業戦略の責任者をそれぞれ3年ほど務めました。
直近の10年は人事・総務・法務・広報などを担当し、取締役としてこれらを管掌しています。また、コールセンターを新任取締役と一緒に見ています。
――昨年12月に創業50周年を迎えました。これまでを振り返ると?
吉田常務:1971年に(株)ディノスとして創業し、翌年フジテレビでテレビショッピングを本格的に始めました。日本で初めての本格的なテレビ通販番組として、主に主婦を対象にスタートしました。
当社創業の時期は日本における通信販売の黎明期でもあり、通販商品の品質や情報は“ピンキリ”で、どの企業を信用すればよいのかがわからない状況でした。だから、当社はメディアとして正しい商品情報を提供し、責任をもって商品をお勧めするというポリシーの下でスタートしたのです。テレビ通販番組を開始した翌年(1972年)には、お客様の会員化を目的にカタログ第1号を発行し、商号も(株)フジサンケイリビングサービスに変更(1973年)しました。
その後、当社は1996年に中野坂上(東京都中野区)に本社を移転、2004年に(株)ディノスに商号を変えました。この当時は業績が芳しくなく、社内には将来に対する漠然とした不安があったこと、そしてフジサンケイグループの一員ではあるものの、もっと自分たちの力で進んでいこうという意図もあって、改めてカタログと同じ「ディノス」という社名に変更しました。
――そして、2021年3月から新体制がスタートしました。
吉田常務:(株)セシールとは2013年7月に合併したのですが、昨年3月に分社化し、(株)DINOS CORPORATIONとして新たなスタートを切りました。ここまでが当社の創業から50年間の主な軌跡となります。
まだ通販が市民権を得ていない頃から、当社はマスコミグループの1社として「お客様を裏切らない」「信頼を得て期待に応える」という思いの下で、誠実に事業を営んできたと自負しています。お客様から「ディノスなら安心できる」と言っていただけるブランドの基礎は、ある程度構築できたと感じています。
「時計の針を合併前に戻さない」
――新体制の発足から1年ほど経ちましたが、ここまでの状況は?
吉田常務:13年にセシールと合併したときも、拠点が東と西でインフラも含めて相互補完ができるなど、いろいろな話が上がっていました。しかし、合併は企業の都合なので、これまでの両社のお客様をがっかりさせてはならないという点に注意しました。セシールの良さ、ディノスの良さを大切にしながら、お互いの良いところを取り入れるようにしてきました。
今回の分社化は、お互い自立した道を歩んだ方が良いという判断ですが、ディノスとして時計の針が合併前に戻るようなことは絶対にしないという意思を持っています。それでは生き残れないからです。
新生ディノスとして何をすべきかが問われるなか、コロナ禍も加わり、従来路線を淡々と続けることは許されない状況にあります。経営サイドとしてはむしろチャンスと捉え、変化への対応やスピード感も含め、これまで積み重ねてきたことを磨き上げながら、進むべき方向を見据えていく考えです。
当社はグループ自体がメディア集団なので、メディアに対する意識が強く、「テレビのお客様」「カタログのお客様」という捉え方をしがちでした。しかし、今後はこれではいけないと思っています。
お客様の立場からすると、たまたまテレビやカタログといったメディアで商品を見たけれども、ウェブで価格を比較して購入を決めることもあり、またスマホで見ておもしろかったので買うこともあります。お客様はメディアにつくわけではなく、最終のコンタクトポイントを複数持っています。だから、こちらがメディアに固執しすぎると、お客様の意識と違ってくるのです。
当然、カタログ向きの商品もあれば、テレビ向きの商品もあるでしょう。しかし、今日売りたい商品があっても、すぐテレビ番組を作ったりカタログに載せることはできません。一方、ウェブは可能で、機動性はウェブの方があります。新体制の下で、柔軟性をもってお客様と向き合うことを追求していきます。
それぞれのメディアをもっとシームレスに使用できるようにして、明確な意思を持って戦略的に展開していく商品が増えてくれば、当社は今まで以上にパワーアップできます。さらに、ディノスでしか買えないとなれば、当社の強みとなっていくわけです。
肝は商品…「モノがたり」発信で差別化
――今後の展開で見据える点は?
吉田常務:2019年に企業ビジョン「モノがたりで、くらし、たのしく。」を策定しました。
ビジョンには「モノがたり」という言葉が入っています。これには、商品をただ売るのではなく、なぜその商品を選んだのか、それをつくったメーカーさんや職人さんはどのような方か、といったストーリーをしっかりお届けしていくという意味が込められています。やはり当社の肝は商品であるという点は、現場からトップまでが共有しています。
同時にお客様にも、商品を選ぶ際の思いや生活環境といったストーリーがあります。作り手の物語もあれば、販売側の物語もあれば、お客様の物語も。そこに当社は強く関わっていくべきであり、他社との差別化になる点だと思っています。
お客様に、商品が届くのが待ち遠しいと思ってもらいたい、開封するときのワクワク感を感じてほしい。これらを提供することが当社のビジョンなのです。ビジョンを策定するだけでなく、社内への浸透にも注力してきました。社員向けのワークショップを実施したり、年1度のビジョン実現に向けたアクション表彰式を開催したり、各社員にビジョンを身近に感じてもらうための仕掛けを継続的に行っています。
創業からの50年間でお客様の信頼を得てきました。そして50周年を迎えて新体制になり、今後は当社のビジョンをお客様へアウトプットしていくことになります。
次の50年に向けて私たちが追い求めるのは、ITなどのテクニックではなく、通販事業者として何をコアに据えて大事にしていくかを見極めること。その解決策としてDX、投資、人材育成などがあると位置づけています。
――コアを大切にしてブレないことですね。
吉田常務:これまでの50年間を振り返ると、節目節目で同じような取り組みをしてきたことに気付きます。2004年に商号を(株)ディノスに変更したときのブランドのタグラインは「歌うように、くらそう。」でした。そして、現在のビジョンは「モノがたりで、くらし、たのしく。」です。両方に関わった当社の人間は「やはりうちの軸は変わらないな」と言っています。
まったく違う人間が参加し、時代も変わっているのに、結果は近いところにいく。それは、コアの部分が当社のDNAとして息づいているからだと思います。新しく入社した社員もエッセンスを共有し、その時代に合った新しい切口を盛り込んでいく。そうしたハイブリッド的な取り組みによって、企業は継続していくのではないでしょうか。
ウェブメディアで「モノがたり」発信
――「モノがたり」を発信するウェブメディアも立ち上がっています。状況は?
吉田常務:ビジョンの体現の一環として、人の物語を紡ぐウェブメディア「Everything Has A Story」を昨年12月15日にオープンさせました。「モノがたり」をうかがう、インタビューの相手の方は当社の顧客層にこだわらず、例えば94歳のおばあちゃんに登場してもらったり、8歳の小学生にも出てもらったりしています。
「Everything Has A Story」は、企業としてさまざまな人の暮しを理解していたいという考えの下でオープンしました。どうしてもマーケティングの視点だとセグメントをしてしまい、その顧客層にヒットすることを考えがちです。
しかし、企業としては、さまざまな人の暮らしを理解することが必要です。当社のターゲットでない年齢層を取り上げると、それを読んだ社員が従来と違うチャレンジを考えるきっかけにもなります。社内の人間に影響を与えるメディアになれば価値があると思います。
私たちが語るのではなく、年齢も仕事や夢中になっていることも全く違う「Everything Has A Story」「モノがたりで、くらし、たのしく。」を体現している様々な人たちにフォーカスすることで、当社のビジョンを多くの方に理解していただけるようにしたいですね。
――よいスタートが切れたようですね。
吉田常務:今年の7月までをめどに、50周年にちなんで50人のインタビュー記事を掲載する予定です。このサイトが世の中にどう捉えられているのかを分析し、コンテンツを育てていきたい。単純に商売に結びつけるのではなく、企業ブランディングのために、どのような会社なのかを理解してもらうことが目的です。
前期業績は巣ごもり需要で好調
――直近の業績の推移をお聞きできますか。
吉田常務:昨年11月に発表した21年度上期決算が直近の数字で、減収減益となりました。20年度はコロナ禍による巣ごもり需要もあって売上が好調に推移しましたが、新生活様式が定着したことで前年の特需が落ち着いたことと、東京五輪の開催によりテレビショッピングの放送回数が減った影響などが要因です。今後の業績の見通しについては、引き続きコロナ禍の影響もあり、予測が難しい状況です。
――3年前に打ち出した「リテンションマーケティング事業」の概況は?
吉田常務:新しいチャレンジにも取り組んでいます。「Makuake」を活用して新商品を出品したこともその1つ。「Makuake」では目標額に対して1000%ほどの最終結果となり、手応えがありました。新しい接点を見つけるという意味で、これまでのアウトバウンドや広告出稿などだけでなく、クラウドファンディングもその1つに加わりました。
3つの重点領域を中心にSDGs対応を実現へ
――近年は社会課題の解決につながる事業領域への投資、サステナブルな企業への成長に関する取り組みも強化されていると聞きます。こちらの状況は?
吉田常務:昨年4月に「サステナビリティビジョン2030」を掲げました。SDGsの17のゴールのうち「3(すべての人に健康と福祉を)」「5(ジェンダー平等を実現しよう)」「12(つくる責任つかう責任)」「17(パートナーシップで目標を達成しよう)」の4つを当社の最重要課題として設定しました。これをもとに「すこやかさ」「多様性」「自然環境」を当社の重点領域とし、2030年に向けた目標の実現を目指していく方針です。社内に推進体制を設け、ガイドライン等も策定しました。
個別の商品を見ると、こうした目標に該当するものも多くあるのですが、まだまだ点在しているイメ―ジであり、それを線にして、面として見せていくという全社的な動きはこれからです。
誠実に事業を営む上で、SDGsへの対応は欠かせません。ですからこのサステナビリティビジョンの3つの重点領域を軸に、今年からは当社らしい具体的なアクションへと取り組みを移していくとともに、積極的に情報発信をしていきたいと考えています。
――本日はありがとうございました。
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