2022.07.21 マーケティング
3カ月で売上5倍も!「618商戦」で成功事例続出の「抖音電商(Douyin EC)」とは?
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中国越境ECの一大イベントと言えば毎年11月11日の「W11(独身の日)」だが、6月18日の「618商戦」も存在感が強まっている。2022年の商戦でも(株)小田急百貨店がライブコマースで視聴者数80万人を集めたり、美容機器を販売する(株)ARTISTIC&CO.GLOBALが前年度比流通取引総額195%を叩き出すなど日本企業の成功事例が飛び出てきている(▽関連記事:アーティスティック&C、ECセール「618」で前年比195%の売上を達成)。そんな注目の越境ECイベントだが、ARTISTIC&COでは中国最大のショートムービープラットフォーム「抖音(=Douyin、ドウイン)」のECプラットフォーム「抖音電商(Douyin EC)」上でのGMVが前年度比約1065%と飛躍的な売上を記録したという。今回の「618商戦」で「抖音電商(Douyin EC)」ではほかにも成功事例が飛び交っているという。本稿では、中国向け越境ECの成功を目指す日本企業にとって最注目株とも言える「抖音電商(Douyin EC)」に迫る。
DAU6億人の売り場=抖音
まず「抖音(Douyin=ドウイン)」とは中国最大のショートムービープラットフォームアプリだ。「抖音(Douyin)」のDAU(※1)は6億人を超え、サーチMAU(※2)は5億5000万人に達する。単純計算だと、ネットユーザー数9億8600万人と言われる中国のネットユーザーの約6割が日常的に利用していることになる。再生回数もエンターテインメントコンテンツの総数が8兆6000億回に上るなど、「抖音(Douyin)」が放つ圧倒的な存在感がわかる。
※1)DAU=デイリー・アクティブ・ユーザー
※2)MAU=マンスリー・アクティブ・ユーザー
そんな「抖音(Douyin)」上のECプラットフォーム事業が「抖音電商(Douyin EC)」。2021年に正式開始した。ライブコマースを通じたEC販売を強力に後押ししており中国EC業界にとっても大きな存在として注目を集めている。
さらに2022年には、中国向け越境ECを目指す日本のブランドメーカーを支援するため日本に専門チーム「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」も設立した。
専門チーム「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」メンバーと、日本責任者である黄益氏(写真右)
新たな勝ち筋「興味EC」提唱
拡大を続ける中国のEC市場には有力なECサイトが乱立し、戦国時代に突入している。そうした状況のなか、満を持して登場したのが「抖音電商(Douyin EC)」だ。EC事業に乗り出した背景には、ショートムービーやライブコマースの普及、レコメンド技術の進化、多数の優秀なクリエイターの参入といった条件がそろったことがある。
「抖音電商(Douyin EC)」では、月平均で約1億件のショッピング関連コンテンツを提供している。「抖音(Douyin)」自体のショートムービー視聴履歴と高度なレコメンド技術を活用することで、従来のECとは異なるアプローチを可能とした。さらに、多数のクリエイターが参入していることから、出店企業は販売促進で強力なバックアップを得ることもできる。
一方、中国の消費者にとっては、ショートムービーを視聴することで、娯楽を堪能し、生活に必要な知識や仕事に役立つ情報を得ながら、ショッピングも楽しめるというわけだ。しかも、視聴履歴とレコメンド技術により、消費者が求める商品を自動的に推奨してくれるため、自ら商品を探しに行くという手間も省ける。
従来のECは、消費者にニーズに見合う商品を見つけてもらうというアプローチの仕方だった。これに対し、「抖音電商(Douyin EC)」はデータとレコメンド技術によって、個々の商品に対する潜在ニーズを持つ消費者を見つけ出すという、まったく逆のアプローチ方法となる。もちろん「消費者にニーズに見合う商品を見つけてもらうという」という従来型のECと、同じやり方もカバーする。
この新たな仕組みを「興味EC(インタレストコマース)」と名づけ、提唱している。このアプローチが奏功し、すでに中国のEC市場はレッドオーシャン状態であるにも関わらず「抖音電商(Douyin EC)」では21年度のGMVが前年比3.2倍と大きな成果をあげている。
KOL斡旋まで!手厚い支援体制を構築
「抖音電商(Douyin EC)」はデータを駆使して、ブランディングと販売施策を融合させた。KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる中国で大きな影響力を持つインフルエンサーのキャスティングをはじめ、ライブコマースの設計などMCN(Multi Channel Network)を供給できる。
「抖音電商(Douyin EC)」には、出店者を支援するために、4つのプロダクトが用意されている。
1つ目は、「ワンストップマーチャントビジネス運営プラットフォーム」。商品取引から店舗管理、販売後の対応までワンストップで運営できる。マルチチャネルの開拓、インフルエンサーによる拡販などが可能だ。
2つ目は、「コンテンツマーケティング総合サービスプラットフォーム」。マーチャント、インフルエンサー、MCNと効率的に連携できる。商品のリセールやサービス管理などのエコシステムサービス、消費者と商品の効率的なマッチングなどを行うインテリジェントマッチングが可能だ。
3つ目は、「EC事業一体化 インテリジェントのマーケティングプラットフォーム」。ターゲティングとコンバージョンの最適化、効率的な広告投下、投稿前後の分析などができる。
4つ目は、「全体可視化 プロフェッショナルのデータプラットフォーム」。マーチャント、インフルエンサー、MCNへのデータ提供により、全方位から診断してビジネスの意思決定を支援する。
これらにより、プラットフォームとECを一つのエコシステムとすることで、コンテンツマーケティングとECの各データをクロスさせて、それぞれの施策の相乗効果を生み出すことができるという。
GMV5倍!ピルボックスジャパン成功事例
「抖音電商(Douyin EC)」は中国の消費者へ売り込みたい日本企業にとって、有効な売り場だ。出店企業からは、成功事例が続々と報告されている。その1つである、健康食品販売会社のピルボックスジャパンの取り組みを紹介する。
ピルボックスジャパンは2021年11月末、「抖音電商(Douyin EC)」での越境EC販売を開始。3カ月目に、初月の5倍のGMV(流通取引総額)を達成した。在日の複数のインフルエンサーを起用したことが功を奏した。在日のインフルエンサーは中国内に日本の商品への関心が高いフォロワーを多数抱え、彼らとのコラボにより、高い精度でターゲットのユーザーにアピールできたという。
加えて、ブランディングの効果も見られた。KOLのライブで商品情報が拡散され、ユーザーが自発的に関連動画を視聴したり投稿したりしたため、3カ月間で1万人以上のフォロワーを獲得できたとしている。
「抖音電商(Douyin EC)」へ出店する企業は増え続けている。筆者がアプリを確認したところ、日本でもお馴染みの「GUCCI」「STARBUCKS」「Unilierver」といったグローバルで名を馳せるブランドの旗艦店が立ち並ぶ。日本企業でも「カネボウ」「ライオン」「第一三共」といった多くの著名ブランドが名を連ねている。
618商戦で758ブランドが売上2億円超!
冒頭でふれた「618商戦」での「抖音電商(Douyin EC)」の戦績も目を見張るものがある。6月1日から同18日まで「抖音電商(Douyin EC)」上で開催されたキャンペーン「Douyin 618好物節期間」ではライブコマース総配信時間が4045万時間を超えた。さらに商品販売機能を備えたカート付きのショート動画が1151億回再生。売上が1000万元(22年7月10日のレートで約2億330万円)を超えたライブルームは183会場、売上が1000万元を超えたブランドは758つ。期間中のアクセスユーザー数は115%アップした。
さらに「抖音電商(Douyin EC)」では、大型商戦のみならず毎月キャンペーンを実施している。「618商戦」後の2022年6月24日から30日には「全球买手派对」なるキャンペーンを実施。「全球买手派对」はおすすめ商品の案内を強化し、海外にいるインフルエンサーのライブ販売をサポートするもの。同時に、現地の消費者が越境ショッピングの習慣を育てることも、目標の1つとしているという。今年6月の「全球买手派对」キャンペーンでは、日本商品の越境EC会場となる「日本好物」を用意。「第一三共」「味の素」「FANCL」「ETVOS」など10以上の日本ブランド旗艦店がキャンペーンに参加。900万人以上のフォロワーを抱えるトップインフルエンサーを含む、複数の在日インフルエンサーらがライブコマースを実施。キャンペーン期間内、売上100万元以上を達成した在日インフルエンサーは8名に上ったという。「抖音電商(Douyin EC)」ではこうしたキャンペーンも毎月のペースで実施していく予定だ。
Douyin EC Globalの日本責任者である黄益氏は「抖音(Douyin)は中国消費者向けの最も重要なコンテンツマーケティングチャネルの1つ。以前からくのブランドさまから活用いただいている。抖音電商(Douyin EC)によってECサービスを同時に提供することにより、ブランディングと販売促進を1つのプラットフォームで展開でき、LTV向上の実現につながる」と話す。加えて「また、抖音(Douyin)での施策はマーケット全体の販売にシナジー効果をもたらす。ブランドごとの中国向けの全体戦略にも貢献できると考えている」(黄氏)と呼びかけた。
中国向け越境ECのファーストチョイスに
「抖音電商(Douyin EC)」は興味ECとライブコマースをフックに驚異的な成長を果たし、中国の消費者が海外ブランドを購入するツールとしても存在感を強めている。
今後、中国向け越境ECを目指す日本企業にとっては、その魅力的な売り場状況からファーストチョイスにふさわしいECプラットフォームといえるかもしれない。「興味EC」という新たなアプローチ法によって、日本企業の越境EC攻略を確かに成功に導いているからだ。
最後にあえて中国越境EC市場、そしてライブコマース市場のポテンシャルについて改めてみてみよう。まず中国現地のEC市場だ。(独)日本貿易振興機構(JETRO)が21年6月に公表したレポート「中国EC市場と活用方法」によると、中国のEC小売額は日本円にして約188兆円に上るとし、小売総額に占めるECシェア率も30%に及ぶという。ライブコマースについては三井物産戦略研究所のレポート「拡大する中国のライブコマース市場(2020年12月)」によると、2020年で前年比倍の9000億元(22年7月10日レートで約18兆2970億円)、21年には1兆3000億元(22年7月10日レートで約26兆4290億円)に迫ると予測している。
そして越境EC市場は、経済産業省の発表資料(※3)によるとこの時点で中国の越境EC利用市場は390億米ドル(22年7月10日レートで約5兆3040億円)。さらに中国内で越境ECの利用者数は主要国の中ではトップであり、2017年までに7000万人を超えているとし、「越境ECユーザー数も増えていくことが予想される」(※3経産省資料)としている。ここ5年で「独身の日」での日本企業の成功事例は枚挙にいとまがない。中国の越境EC利用人口は増え続けているとみられ、多くの中国の消費者が海外ブランドを越境ECによって購入しているわけだ。
富裕層が拡大傾向にある中国では、海外ブランドに対する需要も高まっている。そこで注目されるのが越境ECだ。中国のEC市場自体が巨大でありライブコマースの市場も成熟。さらに越境EC利用ユーザーも膨大だ。こうした背景からも中国越境ECは日本国内のEC事業者にとって大きなビジネスチャンスと言えよう。その一手段としてライブコマースを通じ「興味EC」を提唱する「抖音電商(Douyin EC)」は“ダークホース”と言えるかもしれない。
日本企業にとって越境EC市場開拓を成功させる可能性を秘めた「抖音電商(Douyin EC)」。今後さらに注目度が上昇しそうだ。
※3=平成 30 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書/経済産業省 商務情報政策局 情報経済課
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