経済産業省がこのほど発表した「2021年度電子商取引に関する市場調査」の結果によると、中国のEC市場規模は2兆4886億US ドルとなり、前年比15.0%増と推計。今後も拡大傾向にあり、25年には3兆6159億US ドル、前年比 8.0%の増加を見込んでいる。
中国の越境EC市場規模は17%増
市場調査は、国内ECの黎明期である1998年度から実施し、24回目。BtoB、BtoC、CtoCの規模などの推計から、近年は越境ECにも注目。日本・米国・中国 3か国間の越境ECの市場動向や規模、消費者の利用実態などを調査している。「通販通信ECMO」では、「国内」「世界」「米国」の動向をそれぞれ紹介し、今回の「中国」が第4弾となる。
それによると、中国の21年越境EC市場規模は1773億US ドルとみられ、前年比17.4%増と推計。市場規模は拡大傾向にあり、22年は2051億USドル(同15.7%増)、23年は2209億USドル(同8.2%増)が見込まれている。
同省は、中国の越境EC市場や利用者の特徴、消費行動、今後越境ECの利用者になる可能性のある潜在顧客の特徴について知っておくことは日本のEC事業者にとって有益と、「越境ECの特徴」を8つの論点に分け調査結果を示した。
中国越境ECのシェアは86%が中国企業に
まず、「シェア」について。トップは天猫(Tmall)の36.8%。網易考拉(Kaola.com)が27.4%、京東(JD.com)が13.9%、唯品会(vip.com)が8.3%、アマゾン(Amazon.com)が4.3%と続く。上位4位までは中国企業で、越境ECサイト全体の86.4%を占めている。
「利用者の年齢層」は、25歳~34 歳がトップで34%が越境ECを利用。おおむね18歳~54歳の年齢層では17%以上が利用しているが、55歳~64歳では10%以下、65歳以上では 1%未満となっている。ただし65歳以上でも、家族や友人に代行してもらい間接的に商品を購入することもあることが、EC事業者へのヒアリングなどで明らかになっている。
「決済方法」の1位はALIPAYが43%、2位が42%でクレジットカード
「デバイスの種類」は、スマートフォンが96%、ノートパソコンが47%。いつでも、どこでもアクセスが容易なスマホの利用による越境ECの拡大が今後も予想され、日本のEC事業者もスマホでの閲覧を前提としたサイト構築を意識することが求められるとしている。
「決済方法」のトップは、ALIPAYの43%。クレジットカードが42%、中国銀聯が37%。ALIPAYは、アリババグループが提供するキャッシュレス決済システムで、中国最大のECプラットフォーム「タオバオ」の決済手段として普及した。また、クレジットカードも ALIPAY 同様に決済方法としてよく利用されていることが分かる。
越境EC利用者の「商品の見つけ方」、1位は「検索」・2位は「SNS orリンク先」
越境EC利用者の「商品の見つけ方」のトップは、「アイテム/ブランドの検索」(64%)。続いて「SNSおよびリンク先」(47%)、「友人/家族のすすめ」(45%)だった。「本物」「説明に虚偽なし」「新品」は日本では当たり前だが、それが必ずしも常識でない中国では、半数近くに及んだ、いわゆる「口コミ」を考慮しながら行動しているのではないかとの見方を示している。
越境EC をしてでも「日本の商品を購入したい理由」のトップは、「自国で購入できないから」(77%)。「価格が安い」(37%)、「品質がよい」(31%)、「日本ブランドに安心を感じる」(26%)などが続いた。商品のオリジナリティや日本限定などの「プレミアム感」をいかに出せるかが、日本における越境EC成功の鍵といえそうだ。
外国人の訪日と越境ECには密接な関係も
コロナ禍が収束して訪日が可能になった場合、越境ECの利用で「購入したい日本の商品」は、 トップは「おもちゃ、ゲーム、アニメグッズ」で48%。続いて「本・DVD/CD・エンタ メ」(41%)、「家電製品、カメラ、AV機器」(32%)などだった。
「訪日外客数と越境ECの関係(中国・米国)」について。外国人による訪日と越境ECには密接な関係があると言われている。日本滞在時に、実際に商品に触れた経験や自分自身の目で確認できた経験、信頼できると認識した経験が起点となり、越境ECの利用が促進されていることが、JETROやBEENOSグループなどの調査で明らかになっている。
ところが、コロナ禍で20 年以降は訪日外客数が著しく減少。日本政府観光局によると、20年は中国からの訪日外客数が107万人、米国からは22万人に、さらに21年はそれぞれ4.2万人、2.0万人まで落ち込んでいる。越境ECがインバウンド需要の受け皿になっている側面もあるが、一刻も早くコロナ禍が収束し、越境ECと相乗効果のあるインバウンド消費が回復することが日本の小売業、日本経済全体にとって望ましいことは言うまでもない。
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