ICT市場調査コンサルティングのMM総研が7日公表した『デジタルリスクサービスに関する利用動向調査』の結果によると、2021年度の市場規模は77億円を超え、リスクの高まりを背景に拡大基調が続いている。その分、新規開拓の余地が大きいことも明らかになった。
デジタルリスクサービスの市場規模推移と予測
ネガティブ情報の検知系サービス、対策系サービスが対象
「デジタルリスク」は、企業にとってネガティブな情報がWeb上に存在している状態をいい、SNSや掲示板上の風評・悪評が代表的なリスクだ。Webでの情報発信を日常的に行っている1万1038社を対象とし、デジタルリスクサービスを利用している749社を抽出した調査は、6月3日~9日に実施。Web上のネガティブ情報を検知する「検知系サービス」、SEO対策など適切な情報を露出させて影響を軽減する「対策系サービス」の2種類を対象とした。
調査結果を基にした拡大推計によると、21年度のデジタルリスクサービスの市場規模は77億4000万円で、前年度比15.0%増と拡大した。リスクの高まりと、これに対応するサービスの多様化を背景に、24年度には139億2000万円に拡大するものと予測している。
「検知系サービス」の21年度の市場規模は35億3000万円。21年度~24年度の年平均成長率(CAGR)は18.6%と予測される。一方、「対策系サービス」の21年度の市場規模は42億1000万円で、24年度までのCAGRは24.0%と予測した。
デジタルリスク対策の実施状況(n=6109)
対策している企業は少数派
Webでの情報発信を日常的に行っている企業のデジタルリスク対策は、「実施している」「過去に炎上などを経験しており、対策を徹底している」の合計は19.0%。脅威を理解し、何らかの対策を取っている企業は未だ少数派なのが実態のようだ。
58.0%に及んだ「何も実施していない」理由は、「直近で深刻なリスクが発生していない」が26.3%で最多。また、「詳しい人材がいない」(23.6%)、「どのようなサービスを利用すればよいかわからない」(21.2%)、「対応する人員を確保できない」(18.6%)などが続いていた。
一方、すでにデジタルリスク対策を実施している企業は、今後の支出額を増やす見通しのようだ。「検知系」では約6割、「対策系」では約7割が、22年度の支出額を増やすと回答。SNSや各種掲示板の普及に伴い、広く一般に自由な投稿が可能となったことで、企業がデジタルリスクに晒される可能性が高まっている。経営に影響を与えた事例も増え、必要な対策も多様化していることが、サービス利用者の支出拡大につながっていく見通しだ。
利用を検討したいサービスは「企業研修」が最多
関連して、委託事業者の選定基準は、「検知系」「対策系」とも実績、信頼性、スキルなど人的な要素を重視していた。技術的要素については「セキュリティが高くて安心できる」という点を除き、さほど重視されていなかった。事業者選定では技術的な優位性よりも、自社の特徴・実績を示した上で、具体的な顧客課題を適切に解決する提案能力がより重視されている。
また、未利用企業が利用を検討したいサービスについては、「企業研修」が(42.6%)、「デジタルリスクに対する社内体制構築支援」(26.1%)、「企業法務支援・訴訟対応」(24.4%)と、いずれもデジタルリスク発生の予防や事前の対策シミュレーションなどに関するサービスだった。
業務で培った検知・対策の知見を活かし、デジタルリスクの予防やリスク事象が発生した時の事前準備などに役立つ情報提供や提案活動を推進することで、検知系サービスや対策系サービスに対する新規顧客の掘り起こしにつながる可能性を示唆している。
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