(株)矢野経済研究所はこのほど、国内のメタバース市場を調査し、概況や動向を明らかにした。2021年度の市場規模は744億円、26年度には1兆円を超えると予測。法人向けが先行し、ビジネス用途のサービスが普及、徐々に消費者向け市場に浸透していくとみている。
22年度は前年度比245.2%の1825億円の見込み
21年度の国内メタバース市場規模(メタバースプラットフォーム、コンテンツ・インフラなどプラットフォーム以外)、XR(VR/AR/MR)機器の合算値は744億円と推計。22年度は前年度比245.2%の1825億円まで成長すると見込んでいる。
コロナ禍を受け、バーチャル(仮想空間)で代替するサービス、例えば、社内会議をはじめ、バーチャル展示会やオンラインセミナーなどに対する需要が急増した。一方で、リアル(現実)で実施すべきものと、費用対効果の観点から、オンラインでも可能であるものとのすみ分けが明確化しつつあり、バーチャル関連サービスの需要は今後も継続するものとみられる。
こうした中、国内メタバース市場は法人向けが先行して立ち上がり、まずビジネス用途のサービスが普及し、以降、消費者向け市場に浸透していくと予測。20年~22年にかけてさまざまなプラットフォームが立ち上がり、大手企業も次々と参入しており、事業者間の協業や業務提携などにより、さまざまな実証実験を行いながら、今後の事業化をめざしている。
活用したビジネスは、プラットフォームを中心にさまざまなコンテンツが提供されている。大きくBtoB/BtoBtoCとBtoCモデルに分類できるが、現状は前者が多いものとみられる。また、消費者向けに対しては、収益化していないプラットフォーマーが現時点では多いとみられる。
各事業者ではビジネスモデルを多角化
主要プレイヤーはプラットフォーマーとサービスやコンテンツ提供事業者となるが、プラットフォーマーはサービスやコンテンツ提供事業者に仮想空間を提供し、毎月のシステム利用料(サブスクモデル)、開発費用(要望に応じてカスタム開発)、コンテンツの販売や物販を行った場合の手数料などで収益化している。
しかし、黎明期であることから、プラットフォーマーがサービスやコンテンツを開発して提供するケースやインフラ(開発環境)提供事業者がサービスを提供するケース、企画立案から一気通貫でサービスを提供する事業者などさまざまで、各事業者はビジネスモデルを多角化しながら対応しているとみられる。
26年度に1兆円超えと予測
今後、メタバース事業に参入する企業が増え、仮想空間を利用したオンラインイベント(展示会やセミナーなど)やシミュレーション、教育・トレーニング、ネット通販での接客やショッピング体験など、さまざまな産業分野で活用が拡大し、さらにハードウエアと技術の進展により消費者向け市場にも広く普及するとみられ、26年度には市場規模1兆円を超えると予測する。
普及には、バーチャル(仮想)とリアル(現実)をシームレスに連携する技術やサービスも重要になってくる。XR(VR/AR/MR)機器を用いて入る世界を本質的なメタバースとみる事業者もいるが、現状のハードウエアと技術では制約が多い。今後、こうした技術の進み具合によって、成長速度も変わる可能性があり、ハードウエアと技術の進展が重要な要因になる。
参入事業者は、まずはPCやスマートフォンを中心にサービス提供を行うものとみており、ユーザーが日常的に利用可能なサービスから普及するとみているが、将来的にはXR機器の技術的進化、バリエーションの増加、普及台数の拡大とともに、消費者向けが大きく成長し、メタバース国内市場全体も拡大するとしている。
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