2023年はステマに対する規制、電話勧誘販売の規制強化によるアップセル・クロスセルの見直し、食品表示ルールの変更など、“待ったなし”の施策が立て続けに行われる。通販業界を取り巻く環境が大きく変わろうとしている。
改正国民生活センター法が1月5日施行
年明け早々に動き出したのが、改正国民生活センター法と改正消費者契約法。どちらも1月5日に施行された。
改正国民生活センター法は、悪質商法から消費者を守ることを目的に、(独)国民生活センターが事業者名を公表できる条文を盛り込んだ。これまでも事業者名を公表できたが、法律上の規定がなく、どのようなケースで公表できるのかがあいまいだった。
改正法は「消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益を保護するため、特に必要があると認めるとき」に、事業者名を公表できると規定。今後は、早期の事業者名公表による被害の拡大防止が期待される。
改正消費者契約法は霊感商法への規制を強化した。旧統一教会の問題をはじめ、インターネット上では占いサイトを利用した霊感商法が横行。消費者保護の観点から、契約を取り消せる範囲を広げた。
ステマ規制、3月までに告示制定
今春、重要な施策が目白押しだ。その1つに、ステルスマーケティング(ステマ)に対する規制がある。消費者庁は、景品表示法の指定告示制度にステマを追加する。
告示案についてパブリックコメントを募集し、その後、公聴会の開催や消費者委員会への諮問を行う。3月までに告示を制定し、「数カ月の周知期間」(表示対策課)を経て、遅くても今秋までに施行する見通しだ。告示の運用基準も公表し、ステマに該当するケースや問題とならないケースを示す。
ステマの可能性がある広告を展開している通販企業にとっては、周知期間中に削除するか、「広告」であると明記することが必要となる。放置しておくと、何らかの理由で削除・修正できない場合も含め、施行後には行政処分の対象となる。
景品表示法の改正も重要案件の1つ。消費者庁は今春に、改正法案を国会へ提出する。
「景品表示法検討会」は確約手続きの導入をはじめ、悪質業者対策として、課徴金の割り増し算定率の適用、個人に対する行政処分、直罰規定の導入などを提言。これを受けて、消費者庁は法案の策定を進めている。
改正の柱となる確約手続きは、行政と事業者の合意によって、事業者が自主的に不当表示を改善するという手法。措置命令や課徴金は適用されない。
取り締まりを迅速化できる半面、運用次第では不当表示の“やり得”につながるリスクもある。消費者庁は法案成立後、確約手続きのガイドラインを作成し、運用方針を示す。確約手続きの適用範囲や、購入者への返金措置の位置づけなどが注目されそうだ。
SNSに関する建議の対応状況を報告
内閣府の消費者委員会が昨年9月に公表した「SNSを利用して行われる取引における消費者問題に関する建議」に対し、消費者庁は3月までに対応状況を報告する。
SNSをきっかけに悪質商法の被害に遭う消費者の増加を受けて、建議は、特商法の「表示義務」「誇大広告等の禁止」など、通販に関する規定の執行を強化するよう要請した。
具体的には、SNSを端緒として商品を販売する事業者に対し、特商法が義務づける広告の表示事項をSNS上でも表示させるように要望。また、表面的な販売業者だけでなく、その背後にいる関連業者も含めて、特商法の執行を強化するように求めている。
電話によるアップセル・クロスセルは電話勧誘販売に該当
4月からは、インターネット上の不当表示の取り締まり強化に向けて、消費者庁の組織が拡充される。
景表法を所管する表示対策課に「上席景品・表示調査官」を新たに置き、違法なネット広告の取り締まりをテコ入れする。これに加え、同課の職員を4人増員し、デジタル広告の監視強化に乗り出す。
6月には、訪問販売や電話勧誘販売で必要となる契約書面の交付について、電子化による対応が追加される。従来は紙の契約書面が必須だったが、一定条件の下で電子メールによる交付も可能となる。
これと合わせて、電話勧誘販売の規制強化も予定されている。消費者庁は特商法の政令を改正し、電話勧誘販売の要件に、新聞・雑誌、ラジオ・テレビ、ウェブページを利用して、目的を告げずに電話をかけさせる行為を追加する。
新たな規制は、テレビショッピングなどの電話注文時に、別の商品を勧めるという手法によって、消費者トラブルが増加していることに対応した措置。「まさか勧誘されるとは思っていない内容(を電話で話し出す)という不意打ち性を問題視した」(取引対策課)。
改正後は、テレビショッピングや新聞広告、ウェブ広告などを見て電話で申し込んだ消費者に、別の商品を勧めたり、定期購入コースを勧めたりすると、電話勧誘販売に該当する。その際、契約書面の交付やクーリング・オフが適用される。消費者庁では、周知期間を設けて施行する方針を示している。
特にテレビショッピングやラジオショッピングなど、電話で注文を受け付ける通販企業にとっては、受注時の対応の見直しが喫緊の課題となる。
4月1日、新たな遺伝子組み換え表示制度が完全施行
食品表示の新たな施策も予定されている。消費者庁はアレルギー食品表示制度を見直して、表示義務品目に「くるみ」を追加する。食品表示法の食品表示基準を改正し、3月末までに公布する計画だ。
事業者・消費者への周知や、商品パッケージの変更が必要となるため、2年間の経過措置期間を設けてスタートする。
4月1日からは、新たな遺伝子組み換え表示制度が完全施行となる。任意表示について表示ルールを変更する。「遺伝子組み換えでない」と表示するには、遺伝子組み換え農産物が「不検出」となることが条件で、現行の「5%以下」から厳格化される。
このほか、厚労省が所管する食品添加物などの規格基準に関する業務を消費者庁へ移管するため、両省庁で準備を進める。今春に関連法案を国会へ提出し、2024年度の施行を目指す。
(木村 祐作)
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