withコロナが定着した2021年は、巣ごもり消費の特需がピークを過ぎ、前年の業績を下回る通販会社も目立った。通販大手の(株)ファンケルも同様で、前年に売上規模を拡大させた不織布マスクの売上減や店舗の苦戦で21年は前年を下回る業績が続いた。しかし、ファンケル美健が三島工場を稼働させたり、「AIパーソナル肌分析」など新たな取り組みも開始している。2021年度のファンケルの取り組みを追った。
自社工場として最大規模の「三島工場」を稼働
コロナ禍の健康意識の高まりで、サプリメントの需要が増加するなか、(株)ファンケルの完全子会社(株)ファンケル美健は21年4月26日にサプリの専用工場「ファンケル美健 三島工場」(静岡県三島市)の稼働を開始。生産規模は最大で従来の3.5倍まで拡張が可能で、今後のグローバル展開を含め、急激な需要の変動に対応する。
三島工場の規模は自社工場最大で、SRC造地上6階建、延床面積は約3万1000平方メートル。錠剤・ハードカプセル・ソフトカプセルを含め、さまざまな形状のサプリメントが製造できる。21年8月からはキリングループのサプリメント製造を開始。同10月に『オルニチン』の初回の納品を完了。その後も受託品目を拡大させた。
同工場は無人夜間運転が可能な錠剤製造機や、最新型の錠剤選別機などの最新の設備も導入されており、自動化と省人化でより効率的、安定的に商品を供給できる体制を整えている。また、同工場の従業員85人のうち7割は地元から採用。地域の雇用創出にも貢献している。
薬の飲み合わせに関する情報提供サービスがスマホでも確認可能に
同6月にはファンケルのサプリと薬の飲み合わせに関する情報提供サービス「薬とサプリの飲み合わせ情報」がスマホでも検索できるようになった。健康食品と薬の飲み合わせを案内する「SDIシステム」は、健康食品を安心・安全に利用してもらうため、これまで電話で対応していたが、通信販売で会員登録(無料)したユーザーは、スマホなどでいつでも確認できるように改善した。
例えば、「青汁」と「抗凝固薬」を同時に摂取すると血液が固まる可能性が高くなるなど、サプリと薬の同時摂取は薬の効き目に影響するケースがあるため、飲み合わせに関する正しい情報の案内はとても重要だという。今回のスマホ対応によって同社の会員の利便性は大きく向上した。
酒類販売を強化
同8月には、富山市に拠点を置く酒類・清涼飲料水販売の(株)Start Nowを買収。化粧品や健康食品以外の分野での価値提供に向け、通信販売での酒類の取扱商品を拡充する。
ファンケルは20年10月に、筆頭株主であるキリンホールディングス(株)との共同の取組として、キリングループのメルシャン(株)と連携した輸入ワインのお届けサービス「ファンケル ワイン定期便」を通信販売で始めている。
非接触のカウンセリング「AIパーソナル肌分析」を開始
同9月には、肌に触れることなく肌の状態を確認できる『AIパーソナル肌分析』サービスを開始。これは同社独自の非接触型カウンセリングサービスで、16問の質問と、撮影した顔写真を使ったAIによる肌分析を組み合わせている。
同社の直営店舗では肌に触れるカウンセリングが人気を集めていたが、コロナ禍で自粛を余儀なくされていた。マスクの着用機会の急増による肌トラブルなど、ユーザーからは「肌の状態を見てほしい」という要望が絶えず出ていたことから、非接触型にした同社オリジナルのカウンセリングサービスを開発。全国の直営店舗や、店舗アプリ「ファンケル メンバーズアプリ」から利用できるようになった。
サステナビリティ委員会を設置
また、同社は同10月、持続可能な社会の実現に向けた取り組みのさらなる推進に向け、新たに『サステナビリティ委員会』を設置。
21年から開始した第三期中期経営計画「前進 2023~逆境を超えて未来へ~」では、持続可能な社会の実現への貢献と、グループの持続的な成長をめざして、「環境」「健やかな暮らし」「地域社会と従業員」の3つの重点テーマを設定していた。サステナビリティを経営の中核に置き、重点テーマに設けた目標を達成して中長期的に企業価値を向上させるために、『サステナビリティ委員会』を設置した。
同社の21年度は、コロナ禍での非接触サービスへの対応や、健康需要の高まりを受けた会員の利便性向上、企業価値を高めるサステナブル推進の取り組みなど、コロナ禍で新たに生まれたニーズに対応しつつ、将来を見据えた取り組みも進めてきた。こうした取り組みのほか、22年度はコロナ禍の影響はさらに薄まりつつあり、今後は店舗販売の回復も見込まれることから、同社の業績回復にも期待が持てそうだ。
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