ファンケルは11月、情報発信拠点・ブランド体感拠点として「移動型店舗」を豊洲、曳舟の2カ所で実施した。同社初の試みとなる移動型店舗はどのような経緯で実施にいったのか。また、実際にどのような成果につながったのか。ファンケル 店舗営業本部店舗販売部営業グループ 係長 小林玉英氏に話を聞いた。
移動型店舗のきっかけは消費者の「ECシフト」
――まず、本取り組みに至った経緯を教えてください。
ファンケル 小林玉英氏(以下、小林): 移動型店舗を実施することになった一番のきっかけは、
「コロナ禍での購買行動の変化」です。コロナ禍でECシフトが急速に進み、通販やECで商品を買うことが当たり前になりました。それは行動制限が緩和された今でも変わらず、
実店舗へ足を運ぶ機会が少なくなったという人も多いと思います。
私たちはオンラインとオフライン、どちらのチャネルも持っていますが、やはり店舗でしか提供できない価値もたくさんあると考えています。「店舗での買い物の楽しさ」というものを、もう一度お客さまに体感していただきたいと思いから、今回の移動型店舗を実施しました。
実店舗にお客さまを呼び込むのではなく、移動型店舗で私たちのほうからお客さまに会い行くことで、普段から実店舗に行かないというお客さまとの接点づくりを意識しました。
――移動型店舗ではどのような商品、サービスを提供したのでしょうか。
小林:今回は豊洲公園とイトーヨーカドー 曳舟店の2つのエリアに出店したのですが、豊洲公園では「美」をテーマに、曳舟では「健康」をテーマに出店しました。
具体的に豊洲では、洗顔パウダーによる泡立て体験やマイルドクレンジングオイルによるメイクする落ち体験などを用意し、店舗の情報やアプリの情報を発信しました。
また、豊洲公園はファミリーのお客さまが多いので、育児や家事、仕事を頑張るママパパを対象とした当社のお得なプログラム「ママパパsmileプログラム」などもご紹介しました。
曳舟は、豊洲に比べると年齢層の高いお客さまが多いことがわかっていたので、「健康」を軸に、野菜の充足度測定や血管年齢測定などを実施。また、アンケートにお答えいただき、その内容から効果的なサプリメントのご紹介をするといったサービスも提供しました。
さらに豊洲と曳舟、どちらでも青汁の試飲できるようにしたところ、大変好評でした。というのも、青汁自体なかなか自分で買って飲もうとする人が少ないため、この機会に飲んでみようという方が多くいらっしゃいました。
ファンケルの青汁はおいしさも重視しているので、実際に、その場で「イメージと違って、なかなか美味しい」というご感想も多くいただきました。
目標値を大きく上回り、数年接点のない顧客が6割超え
――実際に成果はどうでしたか?小林:曳舟については、2日目に大雨で中止になるというトラブルはあったものの、想定していた1日の目標値はどちらも達成しました。
豊洲の達成率でいえば、体験イベントの体験者数は約180%、アプリ登録は100%超、プログラムの登録数は約120%と、目標を大きく上回りました。先ほどのお伝えした青汁体験などは移動型店舗と相性が良かったため、このような数値に表れていると思います。
実際に、豊洲公園に遊びに来ていた中学生や高校生の方が「ちょっと飲んでみたい」と興味を持ち、体験いただくシーンもありました。このような若い世代の方に興味を持っていただいたのは印象的でした。
――お客さまからの反響などはありましたか?
小林:いろいろ楽しんいただけたと思うのですが、私が一番印象に残っているお声は「ファンケルもこういうことするのね」というお声でした。
このご意見の裏には、ファンケルというブランドがこちらからお客さまに会いに行っているというところに驚きがあったからだと思います。
ファンケルはインターネットやお店に行かないと買えないというイメージを持たれているため、ファンケルのお客さまに寄り添う姿勢を、移動型店舗を通じてしっかりと伝えられたと思います。
――既存と新規のお客さま、どちらが多く来店されたのでしょうか。
小林:当初は私たちも、既存のお客さまが多いだろうと思っていたのですが、想定以上数年接点がないお客さまが多くいらっしゃいました。まだまだ検証の段階ではあるのですが、体感で言うと6割以上はそのようなお客さまでした。
顧客との距離を近くしていき、一人ひとりに寄り添うブランドへ
――今後の展望があれば教えてください。
小林:まずは、今回実施した内容をしっかりと分析して、参加してくださったお客さまが、その後にファンケルとどのように関わりを持ってくださっているのかを検証し、次の展開を考えていきます。
また、今回は首都圏中心の出店でしたが、今後は店舗が近隣にないような地域への出店も考えています。例えば秋田県はファンケル直営店舗がないので、そういった地域のお客さまに会いに行く形です。
あとは、特定のコミュニティに向けた出店も検討しています。
例えば、年齢層が高い方たちは朝の公園に集まり、体操など運動をしています。そういったところにピンポイントにおじゃまして、より深く商品やサービスについてお伝えし、一人ひとりに寄り添うような取り組みも実施したいと考えています。
移動できるというのが強みですので、寄り添う距離といったものを突き詰めていって、ブランドとお客さまの関係性をもっと近いものにしたいです。
まだ個人的なアイデアではあるですが、若年層の方に向けて学園祭などにも出店できないかと考えているので、さまざまな方向性を検討していきます。
――本日はありがとうございました。
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