「あみあみ」は、インターネット黎明期である1999年に開業したホビー通販サイトで、今年で25周年を迎える。立ち上げ当初は、トレーディングカードなどを扱っていたが、近年ではフィギュアを買うなら「あみあみ」といったブランドを確立している。
フィギュアを中心としたホビー商品は国内外問わず、需要が高まっており、高品質・高単価なものも増えているようで、あみあみの売上も右肩上がりで伸長。2023年は350億円を超え、その売上の50%以上が越境ECによるものだという。
海外ではコアなアニメファンが増加
――なぜ海外でフィギュアの需要が高まっているのでしょうか?
大網 岩永 梓氏(以下、岩永氏):コロナ禍での「おうち需要」の影響が一番大きかったと思います。北米を中心として、動画配信サービスが一気に広がったことで、海外でも手軽に日本のアニメが視聴できるようになりました。それに伴ってアニメグッズやフィギュアなどが伸びているというイメージです。
以前から、日本のアニメファンというのは多くいましたが、リアルタイムで最新のアニメやいま流行っているアニメを観ることができるようになったので、コアなアニメファンが増えているんです。
さらに、最近ではリアルイベントも復活してきているので、コアなアニメファンが集まるイベントも世界各地で増加しています。
当社もそういったイベントに出展し、海外のアニメファンたちとリアルな接点を持ち、コミュニケーションをとるようにしています。昨年はアメリカ、中国、韓国、シンガポールなど様々な場所のイベントに参加し、現地で商品販売、ノベルティ配布、アンケートの実施などを行いました。
地域や規模感はバラバラですが、本当にコアなアニメファンが集まっているので、まだまだ通販の伸びしろがあると感じます。リーチできていない層はまだまだいるので、今後も積極的にイベント出展し、あみあみの認知度を高めていく予定です。
――海外で認知度を高める上で、注意している点はありますか?
岩永:たとえば、WEB広告の運用をする際にはセグメントをより大切にしています。情報収集の方法や拡がり方が違うなどあり、日々研究中しながら運用しているという感じですね。
また昨今の海外では、表現に対して非常にセンシティブになっているので、フィギュアをPRする際は、SNSのチェックなどを含めた調査が重要だと考えています。「日本では当たり前となっている表現も、海外ではどのように受け入れられるのか」といった点をSNSで調べたり、ネイティブ社員に確認したりするなどして、表現方法を判断しています。
越境ECを強化するため物流拠点を移転
――物流拠点を移転した経緯について教えてください。
岩永:近年の堅調に伸びている通販事業に対して、これまでの町田市の自社物流拠点は手狭になってきたということで、2023年11月に日本GLP株式会社 さまが運営する「GLP ALFALINK相模原」内に自社物流機能を移転しました。
もともと、町田の物流拠点では、2棟5フロアに分かれており、上下移動がネックになるなどの問題はあったのですが、入出荷量が上がっていく中で多くの課題が出てきました。
例えば、トラックヤードなどが狭く、トラックの入れ替わりで待機時間が増えるなどのドライバーへの負担かかり、荷物が滞留してしまうこともありました。
さらに、越境ECの場合は、配送方法・種別が多岐に亘るため出荷のオペレーションも複雑化しています。そういった多様な海外発送の形態に対応するという意味でも、これまでの物流拠点では限界がありました。
移転後は最大出荷能力がアップし、繁忙期にもスムーズな出荷が可能に
――移転の効果について教えてください。
岩永:はい。まず、2棟5フロアだったところが広大な面積を持つフロアに集約されたので、上下移動のボトルネックが解消されました。さらに規模も外部拠点の利用分も集約するなどして、7000坪と4倍以上になっているので、トラックヤードの問題なども解決しています。
また、新拠点では様々な新しい機械を導入することで、効率化・省人化を推進しています。商品サイズ・重量を計測する機器の追加導入による、配送料金の計算のデジタル化の推進や積載量の予測のほか、これまでは手作業のみだった梱包部分のシュリンク包装による自動化などを推進しています。
こういった機械を導入することで、熟練のスタッフに頼りきりにならないというメリットも生まれています。不慣れな方、物流現場で働くのが初めての方でも 早期に戦力になっていただける環境を作る事ができました。
特に今回当社が目玉として導入したのが、「自動棚搬送ロボット」です。多岐にわたる商品のピッキングを効率化し、スタッフの負担を軽減しています。
あと、これは「GLP ALFALINK相模原」という複合施設のメリットにはなるのですが、本施設は、従来の物流拠点のイメージとは違い、おしゃれなカフェテリアがあったり、外には地域の人たちが使える運動場があったりと、スタッフたちが働きやすい場所になっています。実際に、スタッフたちの満足度も高く、スタッフ募集の際にも、ありがたいことにたくさんの応募をいただくことができています。
――今回の移転は、ユーザーにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
岩永:まず、配送がスムーズになるといった点です。移転が完了し、1カ月ほど経過した現時点で、超繁忙期と言える12月末に出荷の遅延、荷物の滞留などが見られないので、かなりスムーズに出荷が行われていると実感しています。
また、全体的に業務を効率化したことで、梱包レベルの向上に労力を傾けられることなども、長期的にメリットに感じていただける部分だと思います。フィギュアは、外箱を大切にされるお客さまも多いので、梱包レベルが上がることで、より良い状態で商品をお届けすることができます。
これまでも、お客さまからは「梱包が素晴らしい」などのご意見はいただいていいましたが、そこは引き続き徹底していきます。
梱包の部分は丁寧さよりも効率を重視すると、商品に対して無駄に大きい箱になってしまうなど、デメリットも出てくるので、お客さまに満足いただける梱包というのは外さないようにしていきます。
――「あみあみ」の物流へのこだわりを感じます。
岩永:昔は、通販というと在庫は持たなくていいし、事務所だけあれば簡単にできるというイメージがあったと思います。
しかし、当社はそういった時代から、通販で最も重要なのは“インフラ”の部分だと考えて、そこに投資をしてきました。その結果が、今の大きな成長につながっていると考えます。
当社が選択した自社物流という方法だけではなく、3PLによる物流運営も含めてインフラである物流部分に投資をしていくことが通販事業にとって大切と考えています。
効率化で生まれた“余裕”で新規事業に注力
――今後の展望があれば教えてください。
岩永:今期の上半期も、堅調に売上は伸びているため、10%成長は目指せると考えています。そのため、まずは物流拠点を安定化させ、2024年も堅調に伸び続ける通販事業を支えるというのが、最低限の目標です。
また、物流拠点の体制が整ってこれば、さらに効率化され、全体的に余裕が生まれてくると考えています。
物流部門が日々の注文に対して対応を追われてしまうような状態だと、なかなかほかのことに手が付けられません。なので、効率化によって生まれた余裕を活かし、すでに取り組みを始めている新しい事業に注力していきます。
会社の社風としてビジネスチャンスがあれば常に新しい挑戦をする会社なので、「あみあみ」で培ったノウハウや、独自の流通網を活用して、B to Bの海外流通や中国メーカーの日本での流通支援などさらに強化していきます。
今回導入した新しいロボットなどもそうですが、物流業界も日々進化しています。今までのやり方にとらわれるのではなく、
日々進化していく世の中に適用してくことが企業として重要だと考えています。
ーーありがとうございました。