繰り返し違反は課徴金算定率3%→4.5%
不当表示で景表法違反に問われたものの、その後も同様の行為を繰り返す事業者もいる。これまでに10社程度でそうした繰り返し違反が確認されている。
この背景には、「やり得感がある」(健康食品企業)ことが挙げられる。課徴金額は、ざっくりと言えば違法表示による売上高の3%。
消費者庁では、過去に行われた課徴金納付命令の事案を集計すると、営業利益率の平均が3.4%(中央値)だったとし、3%は妥当と説明する。営業利益率が3%程度の事業者にとっては痛手だが、健康食品や化粧品など営業利益率が高い分野の事業者にとっては“やり得”が生じる。このため、抑止力が十分に働かないという批判が後を絶たなかった。
改正景表法では、不当表示への抑止力を高めるため、違反を繰り返した事業者には、現行の課徴金算定率3%ではなく、「4.5%」を適用する規定を導入した。これは、独占禁止法や金融商品取引法に導入されている割増算定率を参考にしたものだ。他法令では「1.5倍がメルクマール」(消費者庁)であることから、3%の1.5倍に当たる4.5%を設定した。
割増算定率の適用は、(1)事業者の報告が徴収された日、(2)表示の裏づけとなる合理的根拠の提出を求めた日、(3)弁明の機会の付与を通知した日――のうち、最も早い日から遡って「10年以内」に課徴金納付命令を受けた事業者を対象とする。
調査の迅速化…課徴金算定で「推計」が可能に
2016年4月に景表法に課徴金制度が導入され、不当表示への抑止力が強化された一方で、課徴金の調査には時間がかかるという課題も浮き彫りとなった。
特に中小企業では帳簿の記録が十分でないことがあり、調査が滞る要因となっていた。課徴金額は、不当表示を行った商品について、対象期間の品目別売上データを基に算定される。しかし、売上データが社内に十分に整備されていないケースもあり、調査が長期化する要因となってきた。
そうした状況に対応するため、改正景表法では、売上データが把握できない期間の売上高を推計できる規定を盛り込んだ。これは独占禁止法を参考にしたものだ。
改正景表法は「合理的な方法により推計して、課徴金の納付を命ずることができる」と規定。合理的な方法については、内閣府令などで説明している。それによると、課徴金の対象期間のうち、売上データがそろっている期間の1日あたりの平均売上額に、売上データが不明な期間の日数を乗じて算出する。
これにより、課徴金納付命令にかかる時間が短縮され、取り締まりの効率化が進むかが注目されそうだ。
購入者への返金に電子マネーも
課徴金制度では「返金措置」を規定している。課徴金納付命令を受けた事業者が、消費者庁へ返金措置計画を提出して認定されると、購入者への返金額が課徴金額を下回る場合には課徴金額が減額され、上回った場合には課徴金の納付を命じないことになる。
課徴金は国庫に入り、不当表示によって商品を購入した一般消費者には還元されない。一方、返金措置が適用された場合には、購入者に返金される。一般消費者が恩恵を受けられる仕組みだが、これまでに適用された事例はわずか4件にすぎない。4件は健康食品、オンラインゲーム、軽自動車(2件)となっている。
返金措置を促すため、改正景表法では金銭以外の手段による返金も認める。これまでは金銭による返金しか認めてこなかった。しかし、電子マネーなどの利用が普及し、金銭と同等の扱いとなっていることから、電子マネーや商品券などによる返金も可能とする。
電子マネーなどは種類によっては、不当表示を行った事業者でしか使用できないものもある。このため内閣府令で、使用できる地域・期限や利用できる商品・サービスの範囲が著しく限定されないことと規定した。
(つづく)
(木村 祐作)
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