重篤な被害は1例でも報告
改正制度は今年9月1日と来年4月1日の2段階で施行される。9月1日施行の施策は、(1)健康被害情報の収集・報告の義務化、(2)サプリメントを対象としたGMP(適正製造規範)による製造管理の要件化、(3)表示方法の見直し。このうち、即日スタートするのが、健康被害情報の収集・報告の義務化。通販会社にとって、最も早急に対応しなければならない取り組みとなる。
GMP管理と表示方法の見直しについては、対応するための準備期間が必要となるため、2年間の経過措置期間を設けて、2026年9月1日から完全施行となる。
即日スタートする健康被害情報の収集・報告の義務化については、厚生労働省と消費者庁の両省庁で対応する。その際、機能性表示食品の届出者に加えて、特定保健用食品(トクホ)の許可を受けた事業者にも同様の取り組みを求める。
厚労省は食品衛生法施行規則を改正するとともに、関連通知で詳細を示している。それによると、届出者等(トクホ事業者も含む)は健康被害情報を収集し、被害発生・拡大の恐れがある情報が寄せられた場合には、速やかに保健所へ提出しなければならない。
報告義務の対象となる情報は、医師が診断し、製品との因果関係が否定できないもの(不明な場合を含む)。同一製品による「かゆみ・発疹」「下痢」といった症状カテゴリーが同じもので、30日程度の期間内に2例以上の情報を得た場合としている。
ただし、死亡事例をはじめ、入院の有無を問わず医師が重篤と判断した情報については、1例しかなくても報告義務の対象となる。
一方、医療機関名が把握できないもの、製品による症状と無関係なもの、医師によって因果関係が否定されたものについては、報告の対象外となる。
フローチャートの修正も
報告の期限は、届出者等が診断した医療機関名を把握した日から、15日以内と定めた。報告後に同様の症状が発生した場合は、都道府県や厚労省の指示が出るまで、報告を継続する。
届出者等は収集した健康被害情報を消費者庁へも、速やかに報告しなければならない。厚労省が健康被害情報を被害拡大の防止につなげることに対し、消費者庁では届出者等の順守状況を確認する。
収集・報告の義務が順守されていない場合、厚労省は食品衛生法に基づき、営業の禁止・停止を命じることが可能。消費者庁は食品表示法に基づいて、機能性を表示しないように指示・命令を出せる。
また、従来の届出ガイドラインは、届出者が健康被害情報を評価するとしていたが、これによって行政への報告が遅れる恐れがある。このため、消費者庁では「健康被害情報の収集方法のフローチャートに“評価”が入っている場合は修正が必要」(食品表示課)と説明している。
サプリの範囲を年度末までに示す予定
GMPによる製造管理の要件化も、機能性表示食品の届出者とトクホの許可を受けた事業者が対象となる。GMPの基準は告示(GMPガイドライン)で定める。
要件化はサプリメント形状の製品が対象。消費者庁は食品表示基準を改正し、サプリメントを定義づけた。天然抽出物などを原材料に用いた錠剤・カプセル剤・粉末剤・液剤などの加工食品としている。詳細については、年度末までに通知などで示す。「ラムネや小瓶の飲料などをどうするか」(食品表示課)などについて整理する。
原材料の製造についてはGMP管理を要件としないが、GMP管理を行う最終製品の工場では、原材料の受け入れ時に規格の適合などをチェックしなければならない。これに加え、原材料の安全性確保に関する手順を定めた通知を告示に落とし込み、安全性を担保する。
機能性の表示方法を厳格化
表示方法の見直しも9月1日に施行される。容器包装の切り替えが必要となることから、GMPと同様、2年間の経過措置期間を設ける。
改正点のうち、特に重要なのが機能性の表示方法。従来、研究レビューによって機能性を評価した場合であっても、多くの届出者は「コレステロールを下げる」など、届出表示の一部を切り取って表示してきた。しかし、完全施行後には、そうした表示はNGとなる。
完全施行後には、「本品には〇〇(成分名)が含まれます。〇〇には△△(機能性)ことが報告されています」などと表示することが求められる。
また、容器包装の主要面の上部に、“機能性表示食品”の用語を枠で囲んで表示しなければならない。そのすぐ近くに、届出番号を表示することも必須となる。
新規成分への対応や、更新制の導入といった残りの施策は、来年4月1日に施行される。詳細は告示などで示す予定だ。
(木村 祐作)
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