消費者庁が7日公表した「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」で、約8割の消費者が強調表示に近接していても打ち消し内容を認識していないことがわかった。
アイトラッキングで消費者の広告接触行動を調査
同調査は一般消費者が紙・ウェブ・動画広告それぞれのどこに視線を向けているかの実態調査で、視線の計測手法であるアイトラッキングを利用した。調査の目的は、強調表示がなされている広告の打ち消し表示に、消費者が注意を向けているかの実態を調査すること。
同調査は、紙・動画・ウェブ(スマートフォン)の架空広告それぞれ3点を用いてアイトラッキング調査した。アイトラッキング調査はメガネ型の装置を用いて実施、調査には20〜60歳代の男女計49人で行った。49人の内訳は、各媒体の表示例に15人と予備4人の計49人。
動画広告は17年7月14日に発表した「打ち消し表示に関する実態調査報告書」の際に製作した架空広告を用いた。(関連記事http://www.tsuhannews.jp/44440)
スマートフォン広告は、16日発表した「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」の際に製作した架空広告を用いた。(関連記事http://www.tsuhannews.jp/51966)
紙広告については、新たに架空の新聞広告3パターンを製作した。新たに製作されたのは、健康食品、寝具、食材宅配を商材にした通販広告。
打ち消し表示、強調表示の直下にあっても10人中8人が見落とす
紙広告のアイトラッキング調査の結果としては、約8割の消費者が強調表示に近接していても打ち消し内容を認識していなかった。寝具の広告のケースでは、「マットレスお試し価格1万円」などとする表示に近接して「お試し価格での購入には、特別お試しセットの申し込みが条件」とする打ち消し表示を、強調表示に注意を向けていたと思われる9人中7人が認識していなかった。
野菜宅配の新聞広告のケースでは、「入会するとオリーブオイルをプレゼント」とする強調表示の真下に「過去に注文履歴がある場合は対象外」旨の打ち消し表示をしていたが、強調表示に注意を向けていたと思われる10人中8人が認識していなかった。
消費者庁の表示対策課の大元慎二課長は「打ち消し表示は、強調表示から離れていると見落としがち。少し離れただけでも認識できないことがあり、直下にあっても、文字が小さかったり背景と同化するような配色だと認識できない場合がある」と表示の仕方について注意を促した。
動画での打ち消し表示「音声での表示も検討すべき」
動画広告のケースでは、紳士服のセールのCMで調査した。セール条件を文字のみで表示したとき、調査に当たった15人中14人が打ち消し表示を認識していなかった。これについては、「動画の場合は、打ち消し表示を文字のみで表示すると消費者が認識できない恐れがある。たとえば、音声を用いた表示も検討すべき」(大元課長)とした。
スマホ広告では、定期購入をオファーする健康食品通販のランディングページで調査した。打ち消し表示が強調表示から離れた箇所にあっても、同一画面に表示されていても、視線が打ち消し表示に停留していないことがわかった。
調査の結果を踏まえ、消費者庁は一般消費者に対しては「広告で強調されている内容を見たときには、近接した箇所に打ち消し表示がされていることもあるので条件をよく見て欲しい」と呼びかけた。事業者に求められることとして、打ち消し表示を消費者が認識できない場合は、景表法に抵触する恐れがあるとし「一般消費者が適切に打ち消し表示の内容を認識できるように、要素別の特徴を生かした適切な情報提供を行う必要がある」(大元課長)とコメントしている。
(古川 寛之)
◼「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」
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