画像処理で色修正を前提にするのはアカン!
結論から言うと、商品写真の色味と、実物の商品の色味は基本的に同じにはなりません。しかし、近づけることは可能です。さらに最も重要なのは、お客様の環境にできる限り依存しない写真にすることです。
その際、「とりあえず撮影して、後から加工で何とかしよう」はアカン!のです。
厳密に言うと、あなたのショップにプロカメラマンとプロレタッチャー(画像処理のプロ)がいるのであれば、中判やフルサイズセンサーのカメラで高解像のRAW撮影をして、キャリブレーションされたモニターで1つひとつ商品を見ながら厳密なレタッチ、、、といった事は可能ではあるでしょう。ただし、ルーチン作業としてそこにかかる時間(=商品滞留期間)とコストに耐えうる商材・ビジネスであることが大前提になりますので、多くのネットショップの場合、現実的ではないでしょう。
では、どうすれば良いのか?
答えは、「撮影環境を最適にし、商品の色味を画像加工に頼らない」ことです!
画像レタッチの素人が画像編集ソフトで変に色を加工調整すると、画質が劣化したり違和感が大きくなり、お客様の環境(モニター・光源・設定)によって発生する色の差異がますます広がってしまいます。
そして、修正作業のドツボにはまってしまい、作業コストで利益が削られるばかりでなく、作業が属人化して事業リスクにもなり得るのです。
商品の色味は、撮影時にカメラ側を正しく設定することで、限りなく肉眼で見る色味に近い表現をすることが可能です。
そのために、まずは以下の3つを実践してください!
- 太陽光は遮断する
- ライト&蛍光灯の色味を揃える
- ホワイトバランスの設定をする
これだけで商品の色再現レベルはグンと上がります!
まずは基本の光源について説明していきます。
太陽光で商品撮影したらアカン!
下の左側のぬいぐるみの写真をご覧ください。
そもそも、太陽光だと商品全体にまんべんなく光をあてることが困難です。そのため「太陽光からのオレンジが強く当たっている部分」と、「そうでない部分」のムラが激しく出てしまっています。
さらに、撮影場所の蛍光灯からの青色を多く含む光と太陽光が混ざって、全体的に紫がかった色になってしまっています。
背景の色を見ていただければわかりやすいと思います。
これを実際の商品の色味に近づけるために、画像処理ソフトで編集したものが右側の写真です。
太陽光は夕方には赤く、曇りには青くといったように刻々と変化します。商品を太陽光が当たる場所で撮影してしまうと、その日の天気や時間によっても商品の色味が大きく変わってしまいます。
これでは商品撮影業務の時間も限られ、安定した撮影もできませんよね?
この商品写真のように画像処理で修正するとしても、撮影時間によってに色味が変わってしまい、同じ色の商品の修正にもそれぞれ違った処理を要します。効率としては最悪ですよね?
「うちの商品撮影場所はどうしても太陽光が入ってしまうよ!」という場合は、窓を遮光カーテンで覆う・ダンボールで塞ぐなどの対策を取りましょう!
おしゃれな間接照明がある場所で商品撮影したらアカン!
事務所やお店の一角で撮影業務を行なっている場合、同じ空間に使用しているスポットライトやおしゃれな空間を演出する間接照明の光など、複数の光源が混ざってはいませんか?
光には無数の種類があります。それらは一般的に「色温度」という尺度で分けられています。
色温度は下記の図の通り、光の色を数値で表したものです。
いわゆる「間接照明」や「スポットライト」は3000K前後の色温度が低い電球が使われている場合が多いです。こうした光が商品撮影に影響すると、商品が「オレンジ寄り」の色合いになります。モニターで見ると実際の色味との差異が大きくなります。
商品撮影に適したライトの色温度は【昼白色】または【白色】と言われています。商品撮影に使用するライトや電球はいずれか一種類に揃えましょう!
撮影に利用していない間接照明などが当たっている場合は、電源を落としておきましょう。
可能であれば、色々な種類のライトの影響を受ける場所は避けて、光源をできるだけ一定にできる環境に撮影ブースを設置しましょう。
ホワイトバランスはマニュアルで設定せなアカン!
太陽光を遮断し、ライトも【昼白色】または【白色】で統一したら、最後に【ホワイトバランス】の設定です。ホワイトバランスは、あなたの撮影環境に最適な値にマニュアルで設定しましょう!
ホワイトバランスとは、簡単に言えばそれぞれの撮影環境における【白】の基準を決める項目です。ほとんどのデジタルカメラに備わっています。
デジタルカメラはそこで設定された白色の基準を元に、被写体=商品の色を表現します。つまり、この基準がおかしいと、商品の色もズレていってしまうのです。
以下は代表的なホワイトバランスのプリセットごとに撮影した写真です。
その違いを見てみましょう!
実際の商品の色味に最も近いのが、一番右の【マニュアル】ホワイトバランスで撮影した写真です。
他の3つのプリセットと見比べてみてください。【白熱電球】【曇天】のプリセットでは。商品の色味が青やオレンジになっています。これでは「写真と違う商品が届いた!」とクレームを受けても仕方がありませんよね。
【オート】で撮影した写真は比較的・マニュアル設定の写真に近いですが、少々色が薄くなっています。また【オート】の場合だと同じメーカーのカメラでも結果が随分異なるので、業務効率を下げる要因になってしまいます。
商品撮影には【マニュアルホワイトバランス】を使いましょう!
設定方法はメーカーによって異なります。
以下のリンク先で、商品撮影でよく利用される代表的なメーカーごとに【マニュアルホワイトバランス】設定方法をまとめていますので、参照にしてみてくださいね!
なお、ホワイトバランスのマニュアル設定は必ず撮影用のライトなどをつけた状態で設定しましょう。実際の撮影環境と異なる環境で設定しても、意味がありません。
厳密に言えばグレーカードと言われるホワイトバランス設定用の用紙を使うのが最良ですが、費用や難易度の観点から、ここでは割愛します。
「それも詳しく知りたいよ!」という方は、ZenFotomatic個別サポートでお話ししましょう!ご連絡お待ちしております。
ここまでで耳慣れないカメラ用語が出て来て、難しく感じてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こうした設定ができていないと、実際の商品と写真の色の差を大きくなってしまい、返品リスク・トラブルや長時間の加工作業に拘束される事になりかねません。EC運営の必須知識の一つと心得て、是非実践してください!
属人化したらアカン!
今回はECの返品理由に多い「実際の商品と商品画像の色が違う!」問題について、その対応策をお話ししました。
ここでもやっぱり重要になるのは、色修正作業も属人化したら「アカン!」という事です。属人化することによる事業リスクについては第二回のコラムを振り返ってみてください。
そして属人化を防ぐには画像編集ソフトで修正するのではなく、撮影環境を正しく構築しましょう。これについては、第三回のコラムと前回のコラムを改めてご覧ください!
理想を言えば、お客様に実物と一切差異の無い色を写真でお伝えしたいのは当たり前です。またそれは色だけでなく、商品画像全体のクオリティーも同様です。
一方で当該業務の実務者の方に多いのが、会社の利益ではなく自分の職域である商品撮影や商品画像加工業務しか見えていないという問題です。
「何時間かけてでも忠実な色を再現しなくては!」
「年月を費やしても撮影や画像加工の技術を磨かなくては!」
職務に対する責任感という点では素晴らしいのですが、自身がコストであることを認識せず、間違った方向を向いたモチベーションによって逆に会社の利益を圧迫しているという本末転倒状態です。
勿論、現実的には少人数運営の場合を除き当該実務に関わる方が経営視点を持つことは稀でしょう。
だからこそマネージャーが「ところで、それだけ時間かけて、利益出るんだっけ? 商品滞留させて資金繰り大丈夫だっけ?」と直球を投げても、理解を得られるどころか自己否定と捉えられ感情的なやりとりになることだってありえます。
実際に多くのZenFotomaticユーザー企業様の経営層やマネージャー層の方から聞く話です。
今後しばらくは、人手・人材不足による採用難が続くことになるでしょう。ECのササゲ(撮影・採寸・原稿)実務者の採用も然りです。結局は、「できるだけ」「できるところから」自動化せなアカン!という事です。
その際に理解すべきポイントは、以下の2点です。
1つ目は、その時点でのテクノロジーに人が合わせる必要 ”も” あるということです。どんな道具(テクノロジー)も正しい使い方をして初めてその効果を発揮します。
2つ目は、人的リソース(属人化)にかかるコストは給与や交通費や各種社会保険料だけでなく、採用・教育・マネージメントのコストも忘れてはいけないということです。それには教育者たる高単価人材のリソースをも割くことになり、にもかかわらず育てた人材が離職するリスクも含まれています。
実際に結果を出しているネットショップは、その思考でテクノロジーを取り入れ、その時点での未解決部分は人的運用でカバーしながらでも、できるところから自動化を進めています。
現実として、毎年多くのネットショップが淘汰されています。そんな中、ササゲ業務効率化・自動化の重要性に気付いていないネットショップは、そこを改善せず、マーケティングにばかり投資しています。売れば売るほど業務量が増幅しブラック企業化した挙句に利益率が上がらない、という負のループから抜け出せていません。それどころか、売上の波が引くと今度は余剰人員の波に飲まれています。
本コラムの主旨から、これを読まれている方の中にはササゲ業務実務者の方も多いことと思います。決して快くはない書きぶりかもしれませんが、好むと好まざるを得ず、これが現実なのです。
あなたのそのモチベーションは、人間だからこそできるクリエイティブな仕事に振り向けましょう!
次回は・・・
いよいよ本コラム「売れる商品画像講座」も次回で最終回です。次回は視野を海外に広げ、そう遠くない将来に縮小が避けられないであろう国内市場を越えて、海外で売れる商品画像とはどんな画像か?
また海外のECはどんな業務フローで運営しているのか?について、実際に数カ国のZenFotomaticユーザーのEC運営現場をこの目で見て、サポートしてきた経験を皆さんにシェアしたいと思います!
是非、お楽しみに!
著者:三浦 大助 | グラムス株式会社 代表取締役 CEO
アパレル商社で社内システム開発・保守に従事し同社でEC事業を立上げ。2010年グラムス(株)を設立しネットショップ9店舗を立ち上げ運営。各種業務システムを自社開発した中から商品画像の処理機能をZenFotomatic(ゼンフォトマティック)としてローンチ、世界150カ国以上のネットショップに提供中。他、EC業務のシステム化コンサルティングやオフショア開発支援、海外人材採用やマネージメントのコンサルティング、EC業務フローやシステム化のセミナー登壇、勉強会での講師活動を行う。
▽連載一覧
第一回:「売れる商品画像」は思い込み?
第二回:1秒の効率化で大きく業務改善!
第三回:ECが構築すべき商品撮影環境とは?
第四回:超効率的な画像処理を実現するには?
第五回:商品撮影はスマホでOK!?その理由とは…
第六回:一眼レフは難しくない!業務改善も実現!?
第七回:1クリックで済む効率的な加工写真の作り方
第八回:ネットショップ店長がシステム屋になったワケ
第九回:ECに最適化された商品画像管理とは?
第十回:写真にこだわるECに潜む事業リスクとは?
第十一回:商品の色が写真と違う!を防ぐには?
第十二回:ついに最終回!世界で通用する商品画像とは?