2007年9月の創業以来、モバイルECで順調に売上を伸ばしているのは、会員数33万人を誇るキャバクラドレスやカラーコンタクトのECサイト、「DAZZY STORE」の株式会社Dazzy(旧ストークス)だ。現在の売上構成比は、PCが全体の2%程度と圧倒的にモバイルに強みをもつ。同社の2013年7月期の売上高は、前期比19.0%増の25億円となる見通し。今年は初めて、東京ガールズコレクション(TGC)への出展も果たすなど、新たな取り組みにも力を入れている。
中古車販売会社が、“すきま”を利用して海外から洋服を輸入。国内でアパレル通販を展開。
Dazzyの代表取締役・有友純一郎氏はもともと、海外から中古車を輸入して国内で販売する会社に勤めていた。コンテナを利用して車を輸送していたある時、上の方にすっぽりと“すきま”があることに気づく。重いものを入れると車がつぶれてしまう恐れがあるが、軽いものなら問題ない。これは何かに使えないだろうか。そう考えた有友氏が目をつけたのが、当時キャビンアテンダントの間で流行していたアバクロの「チョーカー」だった。 海外に中古車を買い付けにいくたびに、日本の友人から「チョーカーを買ってきてほしい」と頼まれる。これは、ビジネスとしても生かせるはずだ。そう睨んだ有友氏は、アメリカのショッピングモールを回り、コンテナの“すきま”に、チョーカーを、「つめるだけつめて」帰ってきては、国内で通販展開していった。こうして海外でアパレル商材を仕入れ、車雑誌を中心に広告を出稿していったところ、月間で600〜1,500万円ほどの受注になった。有友氏は、徐々にアパレル通販の面白さにのめり込んで行き、自身でECサイトを立ち上げようと考える。
無地のTシャツ専門サイト、月商1,000万円に達し売却
2005年、無地のTシャツを専門に販売するモバイルECサイトを立ち上げた。国内のヒップホップ好きの若者の間で人気があった無地のTシャツを仕入れ、国内で通販展開する。米国では380円程度で販売されているこの商品を、国内では1,200円で販売。「季節を問わずに着られる」と23歳以下のユーザーを中心に、順調に売り上げは伸びていった。当時は今ほど、モバイルECが注目されてはいなかったが、「PCサイト構築の知識がなかったから」という理由で、PCではなくモバイルを主戦場に選んだのだという。月商が1,000万円に達したときに、サイトを売却した。「この層(23歳以下)を狙えば、モバイルECはもっと可能性を秘めているのではないだろうか」(有友氏)。売却によって得た資金で、本格的にモバイルECへ参入しようと決意する。
常に携帯を所持しているのは…「キャバクラ嬢」だ!
スマートフォンが普及した今でこそ、モバイルで購入することに抵抗が無くなった人は多いだろう。しかし、当時はフィーチャーフォン全盛期である。PCに慣れている人にとって、小さな画面で購入することは「不便」と感じた人が多いはずだ。ところが、なぜ23歳以下の人たちは、ためらいもなく携帯で購入するのだろうか?ヒアリングを重ねていくうちに、「PCは起動までに時間がかかる」「常に携帯電話は持ち歩いているから、使い慣れている携帯で買うことに違和感はない」、こんな実態が浮かび上がってきた。つまり、23歳以下のユーザーにとっては、肌身離さず持ち歩いている携帯電話の方が、「Eコマース」という面においても、PCより便利なツールであるというわけだ。 こうしてさらにターゲットを突き詰めていったところ、「キャバクラ嬢」というキーワードが出てきた。彼女たちは、客とのコンタクトを取る必要があるため、他の女性以上に携帯を所有している時間が長い。商材は、「キャバクラドレス」に絞った。キャバクラ嬢に話を聞くと、彼女たちは1着1万円程度するドレスを自腹で購入しているのだという。「もっと安くドレスが手に入れば、いろいろ着回せるのにね」。そんな声をヒントに、3,000—5,000円程度で売っていこうと考えた。試しに、お店で低価格ドレスを販売してみたところ、すぐに売れた。これはいける。こうして、幼なじみの下井大学氏とともに、キャバクラ嬢ドレスを販売するモバイルECサイトが立ち上がった。
段ボールは使わずに、紙袋で配送
今まで1万円で購入していたものと、同品質の商品が安く手に入る。このクチコミがキャバクラ嬢の間で広まり、売り上げは毎月倍々で増えていった。ざっと振り返ると、1期目が3,000万円、2期目が3億円、3期目で14億円という驚異的なペースである。キャバクラ嬢の愛読雑誌「小悪魔ageha(アゲハ)」への広告出稿も、伸びを加速させるきっかけとなった。 しかしターゲットをキャバクラ嬢に設定する限り、ユーザー数に限りがあるのも事実だ。そこで、リピーターになってもらうための施策に力を入れた。キャバクラ嬢はたいてい、ネイルを綺麗に整えている事が多い。万が一ガムテープを外し、商品を箱から取り出す際に爪が折れてしまったら、ユーザーは離れてしまうだろう。そうしたリスクを取り除くため、当初から段ボールは使用せずに紙袋で配送している。また、通販の弱みである「試着ができない」に対しては、返品を自由にすることで回避していった。なかには、明らかに数回着た形跡があるものを平気で返品してくるユーザーもいたが、何も言わずに受け入れていると、良心がとがめるのだろうか。次第に、使用したドレスの返品はなくなってくるのだという。
ユーザー層を広げるため、カラコン、下着の販売も開始
通年で販売しているものだけでなく、「サンタのドレス」など、シーズンものもどんどん投入していった。同社はメーカー機能も保有しているため、オリジナル製品の開発にも力を入れることができる。昨年末に販売した「サンタのドレス」は、累計1万4,000着を販売するヒット商品となった。見た目は、他の通販サイトで販売しているものと違いはないが、着心地で差をつけた。ドレスの下に短パンを付ける、スカートにパニエ(アンダースカート)を入れ、よりふんわりとした見た目にする。細かい事ながら、女性心理を巧みにつく商品戦略が、支持されている要因の一つでもある。 この4年間は、カラーコンタクト、下着を始めとする商材の拡大と実店舗展開にも力を入れてきた。下着はブラジャー&ショーツのセットで1,000円を切ることで、女子中高生の獲得にも成功。現在の売上構成比は、カラコン3割、キャバクラドレス4割、下着3割と、キャバクラドレス以外の商材も堅調に成長していることが伺える。 店舗は、歌舞伎町の一号店を皮切りに、現在は新宿に2店舗、沖縄に3店舗を出店。キャバクラドレスだけを扱っていた当時は、広告出稿できる媒体に限りがあったため、ユーザー数の拡大は頭打ちの状態にあった。そこで、ECに馴染みのないキャバクラ嬢への啓蒙も兼ね、実店舗の展開を始めた。この戦略があたり、わずか4坪の店内ではあったが、初月から500万円売上げることができた。今後は、名古屋、札幌、博多、大阪への出店も予定している。
TGCに初出展。“安いドレス屋”さんではないとアピールしたい
今年、初めて東京ガールズコレクション(TGC)への出展を果たした。出展の理由はさまざまあるが、一つには「安いドレス屋さんというイメージを払拭したかった」と有友氏は言う。たしかに同社の出だしは低単価ドレスであり、今でも強みであることには変わりないが、「高級ドレスも扱っている」ブランドであることを、アピールしたかったのだという。来場者からの反応が良かったことから、年内の再出展を検討している。
ドレスだけで100億円をめざす
TGCのランウェイを、キャバクラドレスを着たモデルが歩く。同社にとっても、これが大きなチャレンジだったことに間違いはないだろう。今後は、「ドレスだけで100億円の売上をつくりたい」と、有友氏は将来的な目標を掲げる。まずは「5年以内に、50億円」。次はどんな手を打ってくるのだろうか。Dazzyの今後に、注目したい。
ドレス・カラコン通販DazzyStore(デイジーストア):http://dazzystore.com/ (取材と文 公文紫都) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
会社名:株式会社Dazzy 設立年月日:2007年9月19日 ECサイト名:ドレス・カラコン通販DazzyStore(デイジーストア) URL:http://dazzystore.com/ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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