2013.11.01 コラム
オリンピック便乗広告の法的リスク
久保京子の「ネットショップCS情報局」より
2020年のオリンピックの開催地が東京に決定し、マインド的にも、また経済効果としても期待が高まりますね。そんな中、注意が必要なのが、「オリンピック記念セール」「2020円均一セール」といったキャンペーンや、オリンピックに関連した景品や商品の提供・販売です。 商標権の侵害等で罰せられる可能性があるからです。
●オリンピックに関連する広告ができるのはスポンサー企業のみ
JOC(日本オリンピック委員会)やIOC(国際オリンピック委員会)は、五輪マーク・エンブレム、マスコット、「がんばれ!ニッポン!」のスローガンや「オリンピック日本代表選手団を応援しています」などの公式呼称などの知的財産を所有しています。 こうしたオリンピックに関する知的財産やJOC管轄選手の肖像を使用した広告活動を行うことができるのは、IOC、JOCなどの関連組織と、オリンピックに関する契約を締結したスポンサー企業のみとなっています。ですので、オリンピックに関する知的財産を無断で使用した場合、JOCやIOCから使用の差し止め要請や損害賠償請求を受けたり、不正競争防止法、商標法、著作権法違反となる可能性があります。
JOCは、「オリンピックイメージ等を無断使用した便乗広告にご注意下さい!」とアンブッシュ・マーケティング*(いわゆる便乗広告)の取り締まりを厳しくしています。 *「アンブッシュ・マーケティング」とは: あるイベントのオフィシャル・スポンサーではない企業が、あたかもオフィシャル・スポンサーであるかのような印象を消費者に与えるために行うマーケティング手法。(Weblio辞書)
●直接的な文言を使用せずにオリンピックをイメージさせる広告はOKか?
となると、「直接的な文言を使用せずに、なんとか東京開催決定を祝う表現を入れることはできないか」と考えたくなるのが広告主の人情ですが、いかなる文言を使用しようとも、商業広告で2020年のオリンピック東京大会を想起させる表現をすることは、アンブッシュ・マーケティングとみなされる可能性があります。
●個人であってもネット販売やアフィリエイトでの広告はNG
JOCは、個人がインターネット上の発言で呼称などを使用することは禁じていません。 しかし、たとえばオリンピックに絡めてサイト上で商品を販売したり、ブログのアクセス数を増やして広告料を儲けたり、といった場合は、個人であっても問題になるとしています。
●オリンピックに便乗した広告と判断される基準
JOCはオリンピックに便乗した広告と判断する基準として、以下を挙げています。 (1)権利の主体者の許諾なしに、 (2)商業利用の一環として、 (3)企業、団体、個人のイメージアップ、商品価値をあげるために、 (4)オリンピックの用語やマークを使用する場合、 (5)オリンピックのイメージを使用して、権利の主体者と何らかの関係を有するとの誤認を生じさせる恐れがある場合 日本広告審査機構(JARO)にも、さまざまな業種の広告主から問合せが多く寄せられており、JOCがアンブッシュ・マーケティングとなる恐れがあると懸念している表現例を紹介しています。
(※) 表現例: ・東京オリンピック・パラリンピックを応援しています。 ・祝2020年開催 ・祝2020年オリンピック・パラリンピック開催決定 ・2020年にはばたく子供たちを応援 ・東京で未来の夢を実現 ・オリンピック開催記念セール ・2020円キャンペーン ・祝・夢の祭典 ・祝・東京決定! ・7年後の選手を応援しています ・「東京」「2020年」の使用(セット・単体ともに)
●JOCが便乗広告を防止する必要性
JOCは「オリンピックマーケティングは、大会の開催・運営に必要となる資金と選手の強化資金およびオリンピック・ムーブメントの推進に必要な資金を確保するものであって、便乗広告が横行すると、スポンサー企業からの協賛金などの減収につながり、ひいては、オリンピック大会の開催や選手強化の支障を来すことになる」と説明しています。 打ち消し表示として、「当店はJOCマーケティングパートナーではありません」、「当店はオリンピックのオフィシャル・スポンサーではありません」等の断りを併せて表示すれば、アンブッシュ・マーケティングとはいい難くなるため、権利侵害となる危険を回避できる可能性があります。 オリンピックに関連したキャンペーンや、景品などを検討している場合には、JOCに相談することをお奨めします。 (※) (公益社団法人 日本広告審査機構)
・「祝!東京決定」NGの恐れのあるオリンピック広告の表現例 http://www.jaro.or.jp/ippan/saikin_shinsa/20130913.html
・広告にオリンピック関連の表現を入れることは可能か? http://www.jaro.or.jp/ippan/bunrui_soudan/sonota01.html ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
久保京子 内閣総理大臣及び経済産業大臣事業認定資格 消費生活アドバイザー 株式会社フィデス 代表取締役社長 事業内容:ネット通販向け広告法務、Webユーザビリティ、ユーザー調査 http://www.fides-cd.co.jp ネットショップのCSを高める情報発信中! 『ネットショップCS情報局』 http://blog.fides-cd.co.jp ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【過去のコラム】 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。「写り込み」の著作権侵害(平成25年9月 経済産業省) 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。ショッピングモール、SNS事業者と商標権侵害(平成25年9月 経済産業省) 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。利用規約変更への黙示の同意があったと認められる条件は?(平成24年11月 経済産業省) 2012年度通販市場売上高は、5兆4,100億円。前年比6.3%増で、14 年連続して増加!(JADMA) 第1類医薬品ネット購入可能サイトは1%。(厚労省 平成24年度 一般用医薬品販売制度定着状況調査) インターネットで購入する際の決済手段:性別、端末別編 (総務省 平成24年通信利用動向調査) 通販事業者の顧客対応トラブル相談、「規定外返品・返金・その他過剰要求」「商品二次被害補償(拡大損害)」が33.6% 配送サービスへの希望「当日配送」は4%、「翌日配送」は9%。「JADMA 2013配送満足度調査」 消費者に信頼されるパーソナルデータ取得手法とは
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