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2013.12.13 コラム

ジーユーのECはバーチャルな「超大型店舗」 、店舗×ECの迅速な連携で売上拡大

ユニクロを運営するファーストリテイリングのグループ会社で、独自ブランドを展開するジーユー(東京)。2006年の創業以来、「ファッションを、もっと自由(ジーユー)に。」をコンセプトに、低価格でありながら良質なファッションアイテムを揃え、キッズからシニアまで幅広い支持を集めている。業績も好調で、直近の通期決算である2013年8月期の売上高は837億円、営業利益は76億円。ECサイトの開設は2010年4月で、現状の売上規模は、「大型店舗10数店舗分」(広報)という。ジーユーにおけるECの立ち位置や、店舗とのシナジーの生み出し方など、増収増益を続ける同社のEC事業について、マーケティング部ダイレクト事業チームリーダーの渡辺泰章氏に話を聞いた。

 

 

ジーユー渡辺氏「ファッションの『我慢』を取り除きたい」

ジーユーという名前を耳にすると、真っ先に思い浮かぶのは、「低価格ブランド」というイメージではないだろうか。実際ECサイトを覗いてみると、2,000円台のアウター、1,000円未満のムートンブーツなど、目を疑いたくなるほどの低価格帯商品が並ぶ。しかしそれらは決して、「安かろう悪かろう」という物ではない。デザインはトレンドを押さえ、ブーツにはインソール(中敷き)を付けるなど機能性も充実しており、もっと価格が高くても売れるのではないかと思えてしまうほどだ。しかしそれらの良質な商品が、「ユニクロの半額で提供されている」(広報)というから驚く。なぜジーユーは、ここまで価格を安く設定しているのだろうか。

 

 その答えは、ブランドコンセプトである、「ファッションを、もっと自由に。」にあった。 「消費者は、ファッションに対してこれまで2つの我慢をしてきました。一つは価格、もう一つはタイミングです」(広報)。 例えば値段が高いという印象がある子供服。従来の商品は、「可愛いものは高い。安いものは可愛くない」が一般的であった。しかしジーユーは、「安いのに可愛い」とそれまでの常識を覆し、消費者が自由にファッションを楽しめる機会を提供した。 またもう一つの我慢となっている「タイミング」。今でこそファストファッションが浸透し、「今着たいものを今買う」事が当たり前になってきたが、従来は欲しい商品があったとしても、値段の折り合いがつかない場合には、「バーゲンまで待つしかないか…」とその場で手に入れられない事もあった。しかしジーユーであれば、手頃な価格で「今欲しい可愛い商品」が手に入るため、待つ我慢から解放されるというわけだ。

 

ECは実利を伴う販売チャネルと、売れ筋動向をリサーチする媒体の2つの役割

 同社がECサイトを開設したのは、創業から4年たった2010年。「ECという分野で見ると後発かもしれませんが、それでもまだファッションのEC化率は2%と言われていましたから、十分勝機はあるだろうと考えました」(渡辺氏)。ジーユーのEC会員は、ユニクロのECサイトと同じIDで購入できるため、開設当初こそユニクロからの流入に支えられていたが、「現在は、ユニクロは幅広い流入経路の一つでしかありません」(同)と、独自の顧客獲得に成功しているという。ジーユーのEC売上はサイト開設以来右肩上がりの成長を続け、現在は、「ジーユーの大型店数十店舗分の売上規模になっている」(同)。

 

 ジーユーはユニクロ同様、自社で商品企画から販売までを行うSPA型のアパレル企業である。全国で240店の実店舗とECを展開しているが、扱う商品に違いはなくどのチャネルでも同じ商品を販売している。同社にとってECは、「存在場所がバーチャルというだけであって、超大型店舗という存在」と渡辺氏は位置づける。 ECは実店舗同様1つの店舗というカウントではあるが、そこにECならではの役割を与えることによって、全体の業績を伸ばす足がかりにしている。

 

 その1つが、EC上での先行販売だ。現在EC上では、一部の商品を実店舗より先行して販売している。ここで売れ行きを確認し、追加生産の是非を確認したり、実店舗のレイアウトに生かしていくためだ。また利益率が良いプロパー商品を先行販売品として大型店で取り扱う事は、定価販売できる商品が増えることにもなり、「より多くの利益が出せる」(渡辺氏)ということでもある。

 

 そのため定価で販売できる商品数が増え、結果として会社全体の利益に貢献するというわけだ。 同社にとってECは、店舗売上を伸ばすためのリサーチ媒体と、実利を伴う販売チャネルという2つの役割を果たしている。 ECのさらなる売上向上につなげるために、店舗のフィードバックをECに反映させることも実施している。

 

 実店舗は、「毎週土曜日を起点として1週間のサイクルが構成されている」ため、店舗での売れ筋情報をもとに、ECのトップページに掲載する商品を週に1〜2回変更している。それにより、ECでも売れ筋商品を前面に持ってくることができる。店舗とECのスピーディーな連携が、同社の好調な業績を支えている要因となっている。

 

LINEの利用開始で、購入率が急上昇

 同社が扱う商品はキッズ、ウィメンズ、メンズと幅広いので、顧客層も自ずと広範囲になる。そのためマーケティングやプロモーションも、「ターゲットを特化せず、全方位に網をかける必要がある」と渡辺氏は説明する。現在特に力を入れているのは、モバイル会員の獲得だ。スマホアプリ、メルマガ、LINEなど、モバイル会員への登録を促進するあらゆる施策を展開している。 特にアプリとLINEが好調だ。2012年3月にスタートした専用アプリは、毎月2ケタ%増でダウンロード数が伸びているだけでなく、アクティブに利用しているユーザーが目立つという。ECだけでなく店頭でも利用できるクーポンも配信している事が、利用者数を伸ばすきっかけとなっているようだ。

 

 2012年8月からスタートしたLINE公式アカウントは、200万人超のフォロワーを抱える(2013年11月現在)。使い方は、フォロワーへのメッセージ配信とホーム機能を活用した情報発信だ。数字こそ明かしていないものの、「LINEでのメッセージ配信効果は絶大で、活用前後で購入率がずいぶん変わった」(渡辺氏)という。また、「即効性があるため、随時売れ行きを確認しながら、LINEユーザーに反応の良い商品を探ることができる」(同)としている。

 

 

「新しい自分を発見してください」の実現のため、いかに「個」にアプローチできるか

 LINEを始めとし、Instagram、Snapeeeなど、新興ウェブサービスにも臆せずチャレンジし、売上と顧客数の拡大を続ける同社だが、今後はどこを目指して行くのだろうか。目標を聞いてみると、「スタイリングコーディネートに舵を切ること」との回答を得た。

 

 「当社は、ジーユーでの買い物によって『新しい自分を発見してください』というコンセプトを発信しています。実店舗であればスタッフとの会話の中から、新たな商品との出会いや、これまでお客様ご自身では選ぶことの無かったコーディネート提案が生まれるかもしれません。しかし、ECではまだそれが実現できていません。ECでも、“あなた”に対してもっと提案していかないと、『新しい自分の発見』には繋がらないでしょう。ECでの購入履歴だけでなく、将来的には店舗の購入履歴も含めて商品をリコメンドするなど、技術的にもマインド的にも、どれだけ「個」に対した提案ができるかが勝負所だと考えています」。

 

 同社の強みは、圧倒的な規模感、商品供給量、そして価格帯にある。しかし、「買いやすくするためにディスカウントばかりを続けていたら、いずれ頭打ちが来るでしょう。そうすればどんどん感覚が麻痺して、もっと安くしなければという方向に走ってしまうかもしれません」と渡辺氏は冷静に分析する。だからこそ「個」に対するスタイリングコーディネートを実現することによって新しい商品との出会いを提供したいと考えている。単品だけでなくトータルコーディネートでの購入が実現されれば、一人当たりの購入点数・価格が上がり、安定的な売上向上につながるからだ。

(取材・文 公文紫都)

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■会社名:株式会社ジーユー

■設立:2006年3月

■ECサイト名:GU

■URL:http://www.gu-japan.com/

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