Zホールディングス(株)は24日、物流・配送の強化を含めた新たなコマース戦略を発表した。ヤマトホールディングス(株)と提携し「PayPayモール」「Yahoo!ショッピング」ストア出店者向けのフルフィルメントサービスの提供を開始するほか、リアルとECを連携させた次世代コマース「X(クロス)ショッピング」を掲げ、実店舗の在庫情報をECモール上で検索可能にしたり、Yahoo! JAPANのeコマースで利用している検索や決済などを含む一連のショッピングシステムをEC事業者向けに提供する。
(写真左から、Z-HD小澤隆生取締役、アスクル吉岡晃CEO、Z-HD川邊健太郎CEO、ヤマトHD長尾裕社長、ZOZO澤田宏太郎CEO)
川邊CEO「eコマースNo,1へ」
同日にウェブ上で開催された発表会にはZ-HDの川邊健太郎CEOが登壇。「Yahoo!ショッピングは13年の『eコマース革命』から5年間で取扱高が3倍まで伸びた。EC業界における1位、2位のプラットフォーマーの背中がすぐそこまで見えてきている。2020年代のうちにeコマースナンバーワンになりたい」と意気込みを語った。
川邊CEOは「成長の要因は『品揃えが多い』『お得』という認識が広がり伸びていったのではないかと分析している。さらなる成長のために<ほしいものが欲しいときに手に入る世界の実現>を我々が推進し、eコマースナンバーワンを目指す」とも話した。
ヤマトHDとタッグ、フルフィル支援
具体的な戦略は「物流支援」「実店舗との在庫連携」「システム支援」の3本柱。
物流面については、ヤマトHDと提携し「PayPayモール」および「Yahoo!ショッピング」の出店ストア向けに専用の新物流サービス「フルフィルメントサービス」「ピック&デリバリーサービス」を用意。商品の受注から出荷までのすべて、または一部をヤマトHDが代行する。
「フルフィルメントサービス」はワンストップで物流を支援し、「ピック&デリバリーサービス」は物流工程の一部分を支援する。サービスは全ストアを対象に提供。利用申し込み受付は、出店ストア向けに24日から開始した。サービスのスタートは6月30日を予定している。導入費用などについては現時点では明かされなかったが、他のECプラットフォーマーが手掛けるような物流代行サービスと「競争力のある価格」で提供すると匂わせた。
ヤマトHDの長尾裕社長は「ストアの現場を物流業務からの解放できる。当社とプラットフォーマーそしてストアとともに成長していきたい。そして、サステナブルなEC業界の構築を目指す」とコメントした。
サービス開始から年末までは、サービス活用の促進を促すためECユーザー向けに「実質送料無料」キャンペーンも実施する。Yahoo! JAPANは、新物流サービスの利用ストアの商品を購入したユーザー限定で、送料相当額のPayPayボーナスライトを付与する。
店頭在庫をアプリの地図上に表示へ
実店舗の在庫連携機能の提供を行い、ECとリアル店舗による購買を融合させていく「Xショッピング」構想も打ち立てた。
「PayPayモール」出店ストアの実店舗在庫情報を連携することにより、「PayPayモール」上で取り扱う商品数を拡充する。エンドユーザーは出店ストアの実店舗にある商品も含めて「PayPayモール」上で商品を検索~購入ができるようにする。
購入した商品は実店舗での受け取りを可能とし、ユーザーは店舗に行けば配達を待つことなく、商品を手に入れることができるようになる。出店ストアにとっては、実店舗の集客につながり、商品を受け取りに来たユーザーが店舗にある別の商品を購入するなどの「ついで買い」による売上増も見込めるとしている。
実店舗在庫連携の第1弾の取り組みとして、3月10日から「ヤマダ電機 PayPayモール店」などの一部ストアにて、実店舗在庫の有無を表示する取り組みを開始している。今後はZOZOTOWN出店ショップの実店舗在庫情報の活用を検討するなど、表示できるストアの商品数を拡充していく予定。
ZOZOの澤田宏太郎CEOは「ZOZOTOWNをカタログ代わりに閲覧する人が多い。ECは閲覧数に対して購入数が数%という世界だが、店頭在庫検索ができれば『店頭にあるなら見に行こうかな』という需要を喚起できると思う」と期待感を語った。ZOZOTOWN参加ブランドの中では『フリークストア』『CIAO PANIC』『Lul's』らが店頭在庫との連携に積極的な声を寄せているという。
今秋には「PayPayモール」上で実店舗在庫を購入し、実店舗で受け取りができるよう準備を進めている。
Yahoo!使い自社EC構築
さらにYahoo! JAPANのショッピングシステムの提供も行う。PayPayモールやYahoo!ショッピングに出店するEC事業者は、Yahoo!JAPANのシステムを活用して自社ECサイトを構築できるようになるということだ。
自社ECサイト運営には、継続的なシステム投資や、技術開発に必要な人材の確保、集客などさまざまな課題がある。この課題を解決するため「PayPayモール」や「Yahoo!ショッピング」で利用している検索や決済などを含む一連のシステム「XSエンジン」を外部に解放する。
EC事業者は「XSエンジン」を利用することで、自社EC構築ができるほか、「PayPayモール」や「Yahoo!ショッピング」の複数サイトを一括運営が可能になる。PayPay決済、機械学習(AI)を活用したレコメンド機能など、Yahoo! JAPANが培ったノウハウを広く開放する。「実店舗の在庫連携機能」も「XSエンジン」に実装予定です。「XSエンジン」提供の第1弾取り組みとしては、アスクルの「LOHACO」が導入する。
「XSエンジン」の導入費用については「現時点では未定だが、可能なかぎり変動費の体系ととっていくつもり」(Z-HD小澤隆生 取締役専務執行役員)とした。「例えば、自社ECサイト構築などSIerに発注する費用を考えると、比べ物にならないような金額感になると思う」(同)ともした。
川邊CEO「コロナでECの局面変わった」
会見の終盤、Z-HDの川邊CEOは「新型コロナウイルスの影響によって、ECが迎える局面は変わったと思う。『ほしいものが欲しい時に手に入る』という重要性はいよいよ増している。ECにはさらなるアップデートが必要な時機を迎えている。Z-HDは『ストアの負担軽減』『リアルを含めた店舗』にフォーカスし、『クロスショッピング』を広げていきたい」と意気込んだ。
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