(一社)イーコマース事業協会(以下、EBS)はこのほど、「ECサイトでの購入物品転送事業者の実態把握と犯罪の未然防止対策の強化」について、群馬県警サイバー犯罪対策課から協力依頼を受けたことを公表した。主な目的は、EC事業者が不正転売事業者の標的とされている事態の周知と注意喚起だという。 EBSは緊急で会員向けの啓蒙動画を作成し、限定公開で動画配信を開始した。
群馬県警は2月に中国籍3人を逮捕
群馬県警は2月、他人のクレジットカードを不正に使用したとして中国籍の3人を私電磁的記録不正作出・同供用と窃盗の疑いで逮捕した。中国からカード情報を不正使用し、国内のECサイトに商品を注文。配送先を日本国内にある関連会社の転送業者に指定し、その業者を通じて、不正に取得した商品を中国へ送っていた。昨年4月、県内在住の女性から「カード情報を勝手に使われた」との通報が調査・逮捕の端緒となっていた。 群馬県警のサイバー犯罪対策課は3月26日、EBSに協力依頼があり、EBSが受領した。
EC事業者にもチャージバックで被害
EBSの吉村正裕理事長によると、県警が捜査を進めていく過程で、「クレジットカードの不正使用や、それに伴う被害について知識や認識に乏しいEC業者が多かった」ことも、EBSへの周知依頼の一因だったという。
こうした犯罪で被害を受けるのは、不正利用された一般消費者と、不正購入の対象となったEC事業者。一般消費者は、カード会社による「チャージバック」により、不正利用された金額が返金される可能性がある。ただ一方で、EC事業者はチャージバックが発生した場合、商品の代金をカード会社経由で消費者に返金しなければならず、商品も失い、さらに代金を返金しなければならないという事態に陥る恐れがある。
今回の逮捕につながった事件の被害者はカードの不正利用に長期間気づかなかったためチャージバックを受けることができず、県警に相談し捜査が開始となった。県警は、吉村理事長に「捜査段階で、被害に遭ったEC事業者が不正利用やチャージバックについて、あまりに知らないという印象を持った」と話したという。
クレカ不正利用が大規模化?
吉村理事長は私見とした上、中国に住む中国人の代わりに海外商品を購入して手数料を得たり、価格を上乗せして転売する 「代購(代理購入)」 ビジネスは、2010 年代に入って急速に盛り上がった。ドラッグストアや量販店で薬、化粧品、家電などの売れ筋商品を大量に購入し、ネットショップやSNSで売りさばき、爆買いの原動力にもなってきた。
しかし、19 年1月に中国で施行された「電子商務法(新EC法)」で状況は一変。「ECプラットフォームを通じて商品・サービスの売買する事業者は、個人であっても企業と同様の登録と納税が義務付けられ、違反者には最大200万元(約3200万円)の罰金が科される」という内容で、代購ビジネスが減少。一方で、クレジットカードの不正利用による犯罪が増加し、進化している。今回の事件は 「転送事業者を装った大規模な国際的な組織犯罪」だと話す。
EC事業者の対策としては、本人確認の徹底や、換金性の高い買い物が大量にあった際の注意、セキュリティコードの導入、3Dセキュアの導入・検知システムの活用、被害にあった際の情報共有(特に中国向け転送事業者の実態把握)などが考えられるとしている。
啓蒙動画は各地域のEC団体にも共有
EBS は、会員事業者や業界関係先への注意喚起および啓蒙のために動画の配信を開始するとともに、(一財)日本電子商取引事業振興財団、東海イービジネス研究会、九州ECミーティング、和歌山eコマース研究会、ぎふネットショップマスターズ倶楽部などの友好EC団体に対しても、代表者を通じて共有したとしている。
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