三井住友カード(株)がこのほど公表した「新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした消費行動の変化(第2弾)」によると、ECサイトの利用(消費行動のデジタルシフト)が勢いを増し、消費者にとって当たり前のチャネルとして定着しつつある。特に高年齢層のデジタルシフトについては、第1弾の「兆候」から「定着」という表現に変化している。
三井住友カードと顧客時間が調査
分析は(株)顧客時間と共同で実施。第1弾は1月~4月15日までのキャッシュレスデータを集計したが、第2弾は主に緊急事態宣言解除前後の消費行動の推移に着目した。
▽参考記事
それによると、「EC・通販」は、緊急事態宣言解除後も堅調に推移している。外出自粛や実店舗の休業を要因としたEC利用の伸長はもちろん、これまで利用していなかった消費者が、EC利用を通じて便利さに気付いた、といった背景も増加の一因として考えられる。
一方で、リアル消費は緊急事態宣言での大幅な落ち込みと、宣言解除からの回復傾向が顕著だ。決済金額を見ると、4月20日からの1か月間は3月末と比べて半分の水準にまで落ち込み、ECや通販チャネルを持たない小売店にとって厳しい状況を表していた。
6月以降若干減少も2月より高水準
第1弾で見い出した「高年齢層のデジタルシフトの兆候」は、その後も同様の傾向が続いている。ECの決済金額シェアは4~5月をピークとして6月は若干減少しているが、コロナ禍による消費影響がほぼなかった2月と比較しても大きく数字を伸ばしていることからも、高年齢層のデジタルでの消費が定着する可能性を垣間見ることができる。
EC決済金額比率は20%弱→30%台に
また、「衣」「食」「住」「生活・健康美容」「旅・移動」「遊・学」「EC」の7つのカテゴリに分けて分析した結果、すべての消費における「EC」の決済金額比率(19年は20%弱)は、20年3月から増え続け、4~5月は36%。6月1週目も32%と高い数値を維持。懸念される第二波や第三波への備えのためにも、EC・通販対応の重要度はさらに高まってくるとみている。
また、「衣」「食」「住」では、19年が各月のシェアがほとんど変わらないのに対し、20年の4~5月の外出自粛期間に「衣」のシェアが低下し、「食」が増加していた。6月1週には「衣」の シェアが15%に急回復し、自粛の反動などの消費行動が考えられる。
家具類は4月以降EC決済比率が増加
特定の5業種について、リアル店舗とデジタルチャネルを展開している企業の決済比率と推移を比較したところ、「衣服小売」「家電量販店」は3月以降、リアル店舗での決済件数が前年同月比で減少か横ばいとなっている中、デジタルチャネルの決済件数は大きく伸び、4月の決済件数では半数前後を占めていた。
「家具・雑貨」は、「衣服小売」「家電量販店」と比べ、従来までのデジタルチャネルの決済比率は低かったが、4月以降は一気に伸長し、5月も増加傾向が増している。一方で、「スーパー」や「ホームセンター」はコロナ禍の中でもチャネルシフトの変化が見られなかった。各地域での充実した店舗数や店舗営業が継続していたことも要因と考えられる。
スーパー・ホムセンはBOPISカギに?
これからの「スーパー」「ホームセンター」のデジタル戦略は、「配送」を重視したECへのデジタルシフトだけではなく、消費者にとってアクセス環境がいい実店舗来店の利便性と、三密を避ける買物が両立できる「BOPIS(Buy Online Pickup In Store)」のような、事前注文~店舗受け取りを重視したデジタルシフトが必要とされるかも知れないと指摘している。
デリバリーは定着に
コロナ禍で注目された消費行動の特徴の一つが、「デリバリー」「ふるさと納税」「クラウドファンディング」などの「応援消費」だ。
「デリバリー」は6月に入っても大きな減少は見られない。利便性だけでなく、三密を避けるため外食を控える、在宅勤務が続くなどの理由から、暮らしの一部に根付く可能性も高いと考えられる。また、飲食店側でも従前の売り上げ水準への回復に向け、デリバリーサービスや持ち帰りが今後の事業展開の一つとして定着していく可能性もある。
ふるさと納税・クラファンも増加
「ふるさと納税」は通常、年末に大きく決済件数・金額が伸び、3~5月は決済件数・金額ともに少ない傾向があるが、今年は3~5月の決済件数・金額が多く伸びており、特に4月は19年の2倍以上となった。
「クラウドファンディング」の急増は、消費への価値観や考え方を変えた象徴的な出来事だ。困難な状況に直面した音楽や映画などのエンタテインメント業、飲食業や医療従事者たちへの寄付など、「大好きな場所やお店を存続させたい」「誰かの役に立ちたい」といった「応援」の気持ちが、クラウドファンディングを通して支援する消費行動として一気に急増した。
消費行動「家中」→「家外」へ移行
事態の移り変わりとともに、消費対象も変化している。「家中消費」から「家外消費」への移行だ。4~5月は、「ホームセンター(1位)」「ECモール・通販(2位)」「玩具・娯楽品(3位→5位)」「家電量販店(5位→3位)」などが上位となり、「家中生活の充実」を主眼においた消費行動が見られた。
6月1週目には「スポーツブランド(1位)」「美容品(3位)」「靴(6位)」などが大きくランクアップ。「家中から家外へ」の消費対象の変化を見ることができる。一方で、5月~6月1週目にかけては、家中生活を象徴する「ホームセンター(1→8位)」「ECモール・通販(2→9位)」「玩具・娯楽品(5→10位)」「スーパー(10→13位)」などは落ち着いた推移となっている。
大型連休期間までの経済活動は、引き続き停滞傾向が見られたが、段階的な緊急事態宣言解除以降は、各業種で回復の兆しを垣間見ることができる。また、「応援消費」の増加から見い出したコロナ禍が与えた価値観の変化は、新しい生活様式での新しい消費行動とも言える大きな気付きの一つ。三井住友カードは、今後もさまざまな視点から、情勢変化に伴う消費行動変化の考察を深めていきたいとしている。
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