(株)矢野経済研究所がこのほど公表した2019年度の「コールセンターサービス市場とコンタクトセンターソリューション市場調査」の結果によると、両市場とも前年度比5%台の成長ぶりをみせた。一方、20年度以降の伸びは鈍化し、微増で推移していく見通しという。
電力・ガス自由化が追い風に
調査は7~9月。コールセンターサービス市場規模は、インバウンド・アウトバウンドの電話応対やWeb・FAXなどの顧客対応業務を請け負うアウトソーシング事業者(コールセンターサービス提供事業者)、コンタクトセンターソリューション市場規模は、コールセンター・コンタクトセンター向けの提供事業者(ソリューションベンダ)の、それぞれ売上高ベースで算出した。
それによると、19年度の国内コールセンターサービス市場規模は、前年度比5.8%増の9963億円だった。引き続き、労働力不足を背景としたコールセンター業務のアウトソーシングニーズの拡大、電力・ガスの自由化などに加え、公共の分野で大型スポット案件が発生したことなどから成長を果たした。
20年度にかけては、在宅勤務の導入や拡大が進んでいる。コールセンターという特性上、3密になりやすい職場であることから、各社とも新型コロナウイルス感染防止の対応を進めている。個人情報漏洩の観点などから進んでこなかったが、コロナ禍では、センター内の3密対策だけでなく、BCP(事業継続)の観点や不足する労働力を補う意味もあるという。
コロナ影響で大型スポット案件も増加
コールセンターサービス市場では、新型コロナウイルスの影響により、公共分野において大型スポット案件が発生しているほか、一般企業では労働力不足や労働者派遣法の改正などを背景に、コールセンター業務をアウトソーシングする流れが強まっている。
加えて、エンドユーザーとの接点は電話だけではなく、Web、ソーシャルメディアなどマルチチャネル化が進み、業務の幅が広がりを示していることもアウトソースの動機になっている。 一方、コロナ禍で顧客企業の業績悪化や先行き不透明感から発注規模が縮小することや、在宅オペレーションの拡大や電話対応以外の業務拡大に伴い、サービス提供単価の下落につながることなど、マイナス面も散見されるという。
20年度は1兆円規模に拡大か
これらから、20年度以降におけるコールセンターサービスの市場規模は、1~2%程度の成長に留まるものと予測している。20年度は1兆154億円を見込み、21年度は1兆281億円を予想値として挙げた。
ソリューションは5.7%増の5073億円に
また、19年度の国内コンタクトセンターソリューション市場規模は、同5.7%増の5073億円。システムの更改時期に当たる企業が多かったことや、AIを活用したコールセンターソリューションへの投資が増えたこと、また低単価ではあるがクラウド型のコンタクトセンターソリューションが普及したことも要因となって、高い伸びを示した。
20年度はコロナ禍で、在宅環境に適しているクラウド型のコンタクトセンターソリューションを中心に企業の投資が進み、単価が低下傾向にあるため、前年度よりも伸びは鈍化するとみている。20年度は5191億円を見込み、21年度は5282億円を予測している。
単価低下も?伸び鈍化し微増推移を予測
21年度以降は、顧客窓口であるコールセンターシステムへの投資は引き続き、堅調に実行されていくと推測する。しかし、クラウド型のコンタクトセンターソリューションを中心に投資が進むために単価が低下し、伸びは鈍化。ただし、これまで利用が少なかった中小企業で、新たにクラウド型のサービスの導入が増えると考えられるほか、Webチャネルとコールセンターを融合させた新たな顧客サポート体制の強化を目的にしたシステム整備も進むと想定できるため、市場規模は微増で推移していくとみている。
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