楽天(株)がこのほど発表した2020年12月期(20年1~12月)連結決算は、売上収益が前期比15.2%増の1兆4555億3800万円、営業損失が938億4900万円(前期は727億4500万円の営業利益)、純損失は1141億9900万円(同318億8800万円の純損失)となった。モバイル事業や物流の投資で業績が悪化しているなか、楽天の三木谷浩史会長兼社長氏は「いろんな意味でチャレンジが続いているが、すべての指標について大きく前進している」と語り、今後の見通しに自信を見せた。
楽天市場の年間流通総額、初の3兆円超に
売上高は過去最高となった。コロナ禍の巣ごもり需要で、主力のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」の年間流通総額が初めて3兆円を超えるなど、国内EC取扱高が大幅に伸長した。一方で、物流網の整備・強化とモバイルでの自社基地局設置などの先行投資が継続中のため減益に。これらの先行投資を除くと大幅増益を達成した。
経営面で重視しているポイントついて三木谷氏は「すべてが重要な指標だがあえて言えば流通総額の継続的な成長と楽天モバイルの加入者の2つ。収益をマキシマムにしようとすれば、正直言っていつでもできる。ただ、そうすると成長が止まってしまう。将来に向けた投資を止めず、しっかりと利益を取りながら、積極的に投資もする」と語り、先行投資の重要性について強調した。
インターネットサービスの売上収益は前期比10.3%増の8201億1500万円、セグメント利益は同62.6%減の401億1400万円となった。主力サービスの国内ECは、コロナ禍に伴う消費行動の変化などで成長率が大きく加速。年間の流通総額は前期比19.9%増の4兆5000億円と、初めて4兆円を超えた。
国内ECの第四半期単体の売上収益は前年同期比35.1%増の1785億2800万円、営業利益は同70.3%増の209億7600万円。「楽天市場」や、医療品・日用品などを扱う「Rakuten 24」などでは、巣ごもり消費の拡大に伴うオンラインショッピング需要の高まりで、取扱高に押し上げの効果が見られた。
送料無料ラインの統一について三木谷氏は「楽天の弱点は送料がバラバラだったことだが、9割ぐらいが送料無料になってきている。紆余曲折はあったが、送料無料ラインの統一の活動が功を奏している」とした。
基本料0円の「UN-LIMIT VI」開始、基地局増設でコスト3~4割増
モバイル事業は、売上収益が前期比34.4%増の2271億4200万円となったが、セグメント損失が2269億7600万円(前期は765億2400万円の損失)。楽天モバイルの四半期業績推移で、第4四半期の売上収益は前年同期比23.9%増の451億1800万円、一方、営業損失は同459億円減の725億1800万円となった。
20年4月の本格的なサービスの開始後、9月には5Gのサービスを開始。基地局展開は12月には1万局を超え、4G人口カバー率は初めて70%(21年1月時点で74.9%)を超えた。21年夏には96%をめざし、順調に拡大しているという。
同社は、月間1GBまでの利用なら基本料金が0円となる「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表し、累計申込数は250万を超えた。今後見込まれる利用者増や基地局の高密度化による通信品質向上を見据え、基地局数を当初計画の2万7397局から4万4000局ほどに増やす。これに伴うコスト増は当初想定の6000億円から3~4割程度増すとみている。
三木谷氏「新プランは楽天グループの心意気」、10年後は携帯キャリアNo1に?
三木谷氏はこの新プランに対して、「原点に立ち返り、フェアに、できるだけ安く利用条件に合わせた料金を設定したかった。1GB以下しか使っていなくても5000円や6000円以上の料金を支払っている人が世の中にいる。1ギガバイトまでなら無料でいいですよ、それ以上使った場合は980円ください、というのが楽天グループの心意気。世の中を応援することで楽天のファンを作る。ということが今回の決断に至った経緯」と、新プラン導入に至ったいきさつについて語った。
また、モバイル事業で投資が増えているが、資金面については「「今回、アグレッシブなプランに見えるが、加入者数が今の申込ペースをみると、従前の数倍になっている。顧客獲得コストも下がることを考えるとスマートなムーブメントであった。投資計画はほぼ元々の予定通りなので、ファインナンスもしっかりできている」と話した。
加入者数について三木谷氏は「4位に甘んじるつもりはない。数字は増やしていく・楽天カードももうすぐ1200万人まで増えてきている。楽天カードの数は軽く上回りたいと思っている」とした。また、「今の申込者数のペースが続くとすれば、今の投資では足りなくなるが、10年後には一番大きな携帯会社になっているだろう」と話し、携帯キャリア3社のトップ3に食い込み、いずれはナンバーワンになることを見据えていた。
フィンテックも好調、カード取扱高伸長が貢献
フィンテックセグメントの売上収益は前期比18.5%増の5761億9500万円、セグメント利益は同17.3%増の812億9100万円となった。クレジットカード関連サービスは、会員基盤の拡大が続き、20年11月には2100万人に到達。同サービスでは宿泊・飲食サービスなどの消費に厳しさがみられるが、オンラインショッピングを中心に取扱高が伸長し、通期のカードショッピング取扱高は11兆円を超えるなど、取扱高の伸びが売上収益、利益増に貢献した。
銀行サービスでは、20年6月に口座数が900万口座を突破して以降も、新規口座獲得数が堅調に伸長し、売上収益の増加に貢献。証券サービスも12月に証券総合口座数が500万口座を突破。新規口座開設数の大幅な増加が続くと同時に、国内株式売買代金、FX売買高の伸長に伴う手数料収入などの増加が売上収益、利益の増加に貢献した。
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