OEMの意味とその形態は?
OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略で、日本語では「相手先ブランド名製造」などと訳されます。身近なところでは、アパレル業界や食品業界、自動車業界など、様々な分野で拡大している業務形態です。
スーパーやコンビニで販売されている、PB(プライベートブランド)もOEM製品のひとつです。近年では数多くのブランドでPB商品を販売していることから、広く認知されるようになりました。ラベル表示には販売者と別に製造者名が記載されています。この製造者名がOEM受託企業です。
OEMの形態は大きく2つに分けられます。ひとつは製造側が企画した完成品を相手先のブランド名で販売する方法です。委託側が販売したい商品と完成品が合致するとき、委託側は商品の企画・開発の手間を省くことができます。製造側がすでに商品として販売している場合は、一部の仕様を変更し相手先のブランドに納品していることもあります。
もうひとつは依頼側の要求仕様をOEMメーカーに製造を委託する方法です。委託側が「こういった製品を製造してほしい」とOEMメーカーに持ち掛けます。委託側が製品の仕様や、ときには調達先まで指定し、製品の管理権や所有権を委託側が持ちます。
自社生産を行わないことで、商品開発や生産設備にかかるコストを削減し、安定した供給をOEM側に一任する狙いがあります。
▼関連語:ファブレスメーカーとの違い
ファブレスとは、製品製造のための自社工場を持たない製造業の業態、またはそのメーカーのことです。和訳すると工場(Fab)がない(Less)という意味です。ファブレスメーカーは開発や設計、マーケティングを主な業務としています。自社工場を持たない、の意ですのでOEMに関連する場合では生産を委託する企業側を指すことがほとんどとなります。一方で、OEM受託メーカーを名乗る企業にもファブレスメーカーはありえます。委託主の依頼に応じて商品の企画は行うが、実際の生産はまた外部のOEMメーカーに委託するという形をとります。
▼関連語:PB(プライベートブランド)との違い
コンビニなどでよく見かけるPB製品は、販売しているブランドのオリジナル製品として扱われます。品質も他の製品と比べて遜色なく、安価に設定されているため、愛用している方も多いでしょう。
PBはPrivate Brandの略で、自社企画商品を意味します。小売などの販売側が商品の企画や販売価格を決定しており、製造をOEM受託企業に任せています。
PBは企画・開発を独自でおこなうため、他社と差別化しやすいメリットがあります。PB商品に人気が出ると、販売側のブランド力向上にも寄与します。また、製造元から直接仕入れるため、売値を安価に抑えることができます。自社ブランドの原価と比べてコスト面でメリットがあります。
また、PBは企業が展開しているブランドであるため、顧客を囲い込むことができます。PBではない一般的な製品(=NB:ナショナルブランド)は小売りであればどこでも取り扱いが可能です。PBは展開している企業でしか販売しないため、商品の性能・品質が良ければ顧客は自社製品を使い続けます。
PBのデメリットとしては、当社は知名度がなく、立ち上げが難しい点が挙げられます。ある程度成功した実績があれば、顧客も安心して新規商品を購入しますが、立ち上げの段階ではブランドを築くことから始めなければなりません。近年では大手コンビニ・スーパーが数多くのPB製品を販売しているため、差別化も難しくなっています。
▼関連語:ODMとの違い
ODMとは「Original Design Manufacturing」の略称で、商品の製造だけでなく企画・設計・開発も外部に委託することを指します。
OEMは「製造」のみを委託しますが、ODMは「製造を含む、そのほかの工程」までも委託するというちがいがあります。
▽関連記事:ODMとは?OEMとの違いやメリットをわかりやすく解説!
OEMのメリット・デメリットとは
◎委託側のメリット
- ・自社で生産能力を持つ必要がない
- ・在庫リスクを最小限にできる
◎自社で生産能力を持つ必要がない
まず挙げられるメリットとして、自社の工場や、生産のためのスキルを持つ必要がないことです。工場には生産するための設備・固定資産を保有しなければなりません。生産のためには人材確保や、効率的に生産するためのスキルが求められます。
このように、生産能力を保有する必要がなければ、企画・宣伝・販売に注力することができ、効率的に利益を上げることができます。
◎在庫リスクを最小限にできる
OEM受託企業のほとんどは小ロットからの生産を請け負っています。ECサイトなどは小ロットで多品種を販売することも多いため、在庫リスクを抱えないことは大きなメリットです。これにより、スタートアップ企業でも在庫に伴うリスクを気にすることなく事業を推進できます。
▲委託側のデメリット
製造を外部に委託するため、自社にノウハウが残らず、技術面の向上が見込みづらくなります。併せて、受託企業側にノウハウが蓄積していくため、いずれ受託企業が自社の競合相手となったり、似た商品を開発・販売する恐れもあります。
◎受託側のメリット
◎生産による利益を得られる
OEM受託により製造量が増加するため、利益向上に貢献します。豊富な生産能力を保有している企業にとっては、稼働率が上がり効率的に利益を得られます。
◎ノウハウが得られる
委託側が高度な技術を保有していたり、企画が優れていたりする場合、受託側はその指導を受けることで技術レベルを向上できます。委託側は他のOEMメーカーにも生産を委託し、ブランドの標準化を図りたいため、一定の規準を設けていることがほとんどです。
委託側のデメリットとして、生産を一任するためにスキルを保有できないことや、品質管理は委託先に依存することが挙げられます。しかし、前述したメリットによる効果は大きく、近年ではOEMが一般的な生産方法のひとつとして定着しています。
▲受託側のデメリット
生産を一任するためにスキルを保有できず、製造した成果物が委託先のブランドとして販売されるため、いつまでたっても社名が世に出ず自社ブランドを広めることがむずかしくなります。また、品質管理は委託先に依存することによって、技術やノウハウが流出してしまう可能性も潜んでいます。さらに委託側に生産量が任されているため、毎月の売上量にムラができてしまい、売上のめどが立ちづらいという点も持ち合わせています。
しかし、前述したメリットによる効果は大きく、近年ではOEMが一般的な生産方法のひとつとして定着しています。
OEM生産の具体例
具体的にはIT製品やアパレル、自動車など、あらゆる分野でOEM生産手法がとられています。EC・通販関連では、一般食品・健康食品や化粧品の生産においてもOEMを採用し、利益をあげている企業も多数あります。
◇IT製品の場合
ソフトウェアは特に受託側(開発側)と委託側が、それぞれの役割で長所を発揮することで、双方にメリットが生まれます。受託側は小規模の企業も多いため、自社の長所を生かした開発に専念することで、生産性を上げることができます。
◇アパレル製品の場合
アパレル業界においては、海外の工場に縫製工場としての役割を委託している企業が多いです。近年の洋服のほとんどはMade in 海外のタグが付いており、日本で縫製を行っている洋服を見つけることが難しいほどの状況です。
▽関連記事:【アパレルOEMとは】メリット・デメリットや注意点、探し方を解説
◇自動車の場合
こちらも多くの自動車メーカーが導入しており、相互に協力し合って互いの短所を補っています。世界に多く輸出している自動車メーカーにとって、日本特有である軽自動車の開発リソースを割きたい狙いが、OEMという形態につながっています。
◇化粧品の場合
化粧品の場合は、受託企業の業務が広範囲にわたるケースがあります。商品の企画からパッケージデザインまで、ほとんどの工程を受託側に一存することもできる企業があります。こうした状況から、比較的小規模の企業でも高級化粧品の販売が可能となっています。
▽関連記事:【化粧品OEMとは】化粧品ODMとの違いやメリットを徹底解説
◇食品・健康食品の場合
これは、販売側が商品の企画・販促に集中したい場合に利用されることが多いです。コンビニのスイーツなどもこうした形態で販売されており、今ではコンビニ定番の人気商品です。また、健康食品も同様に、開発・製造を経験豊富な企業に委託できることは大きなメリットです。
▽関連記事:OEMを委託する際に重視するポイントと失敗しないためのコツ
▽関連記事:食品OEMとは?費用相場やメーカー選びのポイントなどを解説
▼食品関連は製造先を調べられる!
食品の場合、ラベルに製造される工場名まで記載されませんが、食品表示法によって厳しく表示義務が定められているため、容易に調べることが可能です。製造固有記号とよばれるものが表示義務として定められており、これは加工食品や添加物の製造所を表す記号となっています。
商品を製造するメーカーもしくは販売する小売りが、各生産の工場ごとに記号を制定しています。これらは全て消費者庁に届けられ、登録されています。賞味期限と並列で記載されているものが多いです。
つまり、この記号を調べることで、競合企業がどの工場に製造を委託しているか分かります。参考に、調べることのできるサイトURLを掲載するので、気になる食品がある場合は調べてみましょう。
▽消費者庁「製造所固有記号検索」
なお、テイクアウト・デリバリーといった業態では食品表示は必要とされないため、調べることは不可能です。セントラルキッチンを持つ店舗が、各地にある小売店で弁当・惣菜を販売する場合は、食品表示法が適用されます。
OEM委託先はどうやって探す?選ぶ?
生産方法をOEMに決定すると、次は委託先を探して選定しなければなりません。まずはインターネットで「商材名+OEM」と検索すると、簡単に探すことができますが、インターネット上では、工場の情報をまとめているマッチングサイトやポータルサイトがあります。いくつかのサービスを紹介しますので、それらを活用するのもいいでしょう。
→食品開発の依頼者と受託企業をつなぐプラットフォームで、日本最大級を目指す食品開発OEMマッチングサイト
→食品受託製造企業の情報を完全無料で掲載
→化粧品・健康食品に関するあらゆるビジネスマッチングを実施
→そのほか、薬事業務やプロとの業務マッチングも行っている
→ファッショングッズOEMメーカーマッチングプラットフォーム
→多様なニーズに対応し、最高の職人が最短で見つかるマッチングサイト
▽業界紙や展示会も活用
また、業界紙でも同様にビジネスマッチングという題目で展開しているものが見受けられます。そのほか、展示会を利用して取引先を選定することも一般的です。展示会は国内をはじめ、世界各国から企業が集まるため、接点をつくる場として有益です。展示ブースを出している企業の中には、製造工場もあるため、製造できる商品や、ロットについての話もできます。
OEM委託先の選定方法
次に選定方法です。まずは委託先で「作りたいものが作れるか」を確認しましょう。特に自社特有のオリジナル商品を企画したいときは、早期に確認することで、委託先の絞り込みが容易になります。
製造可能であれば、「希望するロット数で生産可能か」を確認しましょう。製造側は他社のOEMを受託していることも多いため、希望のスケジュールで納品できるか早い段階で確認するべきです。
さらに、「予算(単価感)が自社の販売計画と合致するか」は損益を計算するうえで欠かせません。原価を下げるためにも、複数の企業から相見積もりを取ることをおすすめします。製造する工程や原材料の仕入れルートはOEM各社によって異なるため、価格・納品のスピード感に違いがでます。
OEMについては当サイトでお役立ち資料を掲載しています。ぜひダウンロードして参考にしてみてください!
OEMのまとめ
製造をOEMに委託することは、原価を抑え利益をあげることや、企画・マーケティングに注力するうえで有益な手法です。近年ではPBなどで身近な商品にも採用されていて、小ロットから請負できる企業も多々あります。受託側も利益をあげられるため、さまざまな形でマッチングが展開されており、委託先の選定が重要です。
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