楽天グループ(株)が運営するオンラインショッピングモール「楽天市場」で導入した「共通の送料込みライン」の施策をめぐり、公正取引委員会は6日、出店店舗に施策への参加を事実上強制したり、不利益を生じさせたりするなど、独占禁止法(優越的地位の乱用)違反の可能性があるとする審査結果を公表した。楽天から申し出があった改善措置の実行を見極めた上、同社への審査を終えるとしている。
送料無料ライン導入が事実上の「強制」かどうか公取委が調査
「共通の送料込みライン」は、楽天市場の対象店舗で、同一の注文であれば3980円(税込)以上の注文の際に、送料をとらない形で商品を販売する共通のルール。2020年3月18日から任意で開始し、21年11月現在、約92%の店舗が参加しているという。
楽天は19年1月、20年3月から一律に導入する方針を発表し、一部の出店者が反発していた。公取委は同年12月、楽天からの相談に「独禁法違反のおそれがある」と伝えていたが、楽天はその後も実施の方針を維持していた。公取委が問題にしていたのは、ルール導入が事実上の「強制」にあたる懸念だった。
公取委は20年2月28日、東京地裁に、楽天が「共通の送料込みライン」を一律に導入することの一時停止を求め、独禁法の規定による緊急停止命令の申立てを行った。こうした中、楽天は同年3月6日、店舗の選択で「共通の送料込みライン」の適用対象外にできる措置をとることなどを公表。その後、出店事業者が適用対象外申請を行うための手続きを設けた
出店事業者の選択の任意性確保の見極めで審査を継続
公取委は、出店事業者が「共通の送料込みライン」に参加するか否かを自らの判断で選択できるようになるのであれば、当面は、一時停止を求める緊急性が薄れると判断。同年3月10日、申立てを取り下げた。ただし、出店事業者の選択の任意性が確保されるか否かを見極める必要があると判断し、継続して審査を行ってきた。
審査によると、楽天の営業担当者が出店事業者に「不参加店舗の取扱商品は検索で上位に表示されなくなる」など、不参加店舗が不利になると伝えたり、示唆したりしていた事例が認められた。また、21年5月10日以降、楽天との契約形態を切り替える際には、施策への参加を必須とする仕組みを導入するなどしていた。
出店事業者は、施策に参加する際、一定額を商品価格に上乗せすることは可能だが、実際には十分な上乗せができずに利益が減った店舗や、上乗せして客離れが生じた店舗があった。さらに、施策に参加したことで、送料が無料になる金額の低下に伴い、ユーザーがまとめ買いをする金額が下がって客単価が低下した店舗や、3980円を少し超えるようなまとめ買いで、得られるはずの送料収入も減少した店舗もみられた。
こうした参加店舗についても、立場の弱い出店事業者に対して不当に不利益を受け入れさせている行為は、「優越的地位の乱用」にあたり得るとしていた。
楽天による改善措置と再発防止案で審査が終了
これを受け、楽天は公取委に改善措置と再発防止案を提示。店舗の意思を尊重し、不参加店舗への不利な扱いをしないことなどを明示し、反する行為があった場合には、他の部署から独立した苦情・相談窓口に連絡できることを各店舗に周知することなどを約束した。
公取委は、一律導入はしない、示唆だけでなく不利にする取り組みをしないとした対応は、独禁法上の問題解消につながる。出店者への周知は即時、社内対応も整い次第ということで、年を超えることはないと期待しているとし、審査の終了を宣言した。
楽天が第三者的な立場の「楽天市場苦情受付窓口」を設置
楽天は6日にホームページで、以下の改善措置のコミュニケーション方針を発表。
・法令遵守を前提とし、加えて、本施策の導入をお願いする際、もしくは導入後に適用対象外申請を検討される各店舗に継続をお願いする際には、各店舗の意思についてお話を傾聴します。
・本施策を導入していない店舗に対して、指摘を受けた事例で言及されたような、導入店舗であることのみを理由として優先して検索結果の上位に表示すること、その他導入店舗を著しく優遇すること等の、不利益な取り扱いを行わず、そのようなことを示唆しません。
・万が一、上記に反する行為があった場合には、以下の苦情・相談窓口に連絡するよう、各店舗に案内します。
楽天市場苦情受付窓口(当窓口は、他の部署等から独立した窓口であり、申し立ていただいた内容について客観的に第三者的な立場で公平に対応を行います。当窓口へ申し立ていただいた事項をもとに店舗が不利益を受けることはございません。)
また、楽天は「共通の送料込みライン」導入の成果として、送料のわかりやすさに関するユーザー満足度が約15ポイント改善したほか、導入店舗の売上成長率は未導入店舗との比較で約18ポイント向上している点を挙げている。現在は3980円(税込)以上の注文の95%以上が送料無料となり、出店店舗の継続的な成長を支える重要施策に位置付け、各店舗に丁寧な説明を続けていくという。
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